テニス選手として数々の偉業を成し遂げ、1996年に引退後、奇跡の復活をしたレジェンド伊達公子さん。2度目の引退後も鍛え抜かれたボディと朗らかでキュートな笑顔で更年期を上手に打ち返しているようです。
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◯ 伊達公子さん(52歳・テニスプレーヤー)
ポジティブを維持できる
「好き」の種を蒔いて育てることで
更年期をインさせません
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おかげさまで更年期特有の症状は今のところ感じていません。冷え(*1)はもともと中学生の頃から感じていて、ここ数年、冬は蓄熱効果のあるインソールを靴の中に入れているほどなので不調と言えるものではないかもしれません。
1996年に引退するまでは体が動いていましたし、38歳からセカンドキャリアを始めて2017年9月、47歳になる手前まで現役を続けた中で、関節や左膝半月板、筋疲労の問題などはありましたが、全然元気だったので、女性特有の悩みとは無縁です。
ホルモン検査もしたことはありますし、エストロゲンの低下も年齢的には避けられませんが、とくに何もしないで50代になりました。年齢的にはいろいろ出てもおかしくないとは思うんですが2歳上の姉にも症状はないですし、もしかしたら遺伝的にも気質的にも更年期はスルーできちゃうのかなと思います。
◇ 100歳まで動ける体づくりを目指して週2回の筋トレ&皇居ラン。ムリせず続けられるものを習慣化させて
—— 伊達公子さんと言えばSTORYにも何度も登場していただいた日本テニス界のレジェンド。一度現役を引退したあと、数年のブランクを経ての再チャレンジには、私たちも勇気をもらいました。
更年期症状はないものの、選手を辞めてからはやはり以前と比較すると若干体力筋力の衰えは感じます。5年前に左膝の骨軟骨移植の手術をしましたが、結局膝を守っていくには自分の筋力が必要です。関節内は手術をしたもののボロボロでそれを守れるのは周りの筋肉。守る筋力を維持することを課題として今も週に2回トレーニングをしています。
現役から引退して生活スタイルも変わり、年齢が進んできてる中で、「これぐらいはできていたから今もやれるはず」という思いと「ムリしないレベル」とのバランスを探し続けています。以前は自分を追い込むことが当たり前で膝の手術をした後でも皇居周りを2周・10キロ走ってたんですけど、今は1周しか走りません。たまにもう1周走ってみようかなと思うときもあるんですが今さら10キロ走る理由ももうありません。50代を迎えて、やっとそういう現実というか落としどころをちゃんと見つけて受け止められるようになりました。負けず嫌いというか、いつももっと良くなりたいという願望があるので、自分を抑えるのはなかなか難しいですが、トレーニングは体調のバロメーターとして意識するにとどめてムリしないようには心がけています。
◇ サウナ、登山、パンやコーヒー。「好き」への思いがハッピーパワーを生んでくれます
トレーニング以外での健康法で好きなのがサウナ。ここ数年盛り上がっているサウナブームですが、私としてはブームに乗っかったわけではなく思春期のころからよく入っていた、とちょっぴり強く主張したいです(笑)。汗がドッと出て浄化される感覚がとても好きなんです。入り方は12分3セットが基本で、時間があったり、調子がいいと4セット行くときもあります。その日の体調とか、その場所の温度とか微妙な違いがありますね。そしてもちろん水風呂は必須です。ナショナルトレーニングセンターにもサウナがあるんですけど、いつも行っていました。
今サウナに入るときに欠かせないのはサウナハット。サウナ内の温度は一般的に80℃から90℃ほどで、熱めのサウナだと100℃になることもあるそうで、高温で乾燥しやすい環境です。熱い空気は上へ上へと移動するので脚や腰回りよりも頭のほうが熱くなりやすく、熱気をまともに浴びると頭がのぼせてクラクラしてしまうこともありますから、のぼせ予防にハットは必須です。とくに私はサウナ室では「上段」派。空いていれば必ず上のほうに行くので頭皮や髪へのダメージを回避するためにも頭を覆うハットは手放せません。サウナの本場フィンランドではフェルト生地のものが多いようですが、私は洗いやすさもあってタオル地とパイル地のものを愛用中。最近は若い方も結構かぶっている人を見かけるくらい、ポピュラーなものになっていると思います。また手ぬぐいのような薄手のタオルも首に巻いたり肩にかけたりして、そのときの体調やサウナの個性とバランスをとっています。
またここ数年は登山がマイブーム。昔から友人内では「フルマラソンと富士登山は人生で一度はやっておいたほうがいいよね」と話していて、マラソンはもう達成したのであとは富士山を攻略したいなと思っていたんです。一昨年、たまたま北海道のニセコに行こうと思っていたところに緊急事態宣言が出て断念。制限がとけたころに車で行けるところはどこかないかなと探していたときに、「そういえば昔から上高地に行ってみたかったな」と思い出して車で上高地に行きました。そのとき泊まったホテルに軽登山のプランがあってガイドさんについてもらって、スニーカーで1時間登っておりるみたいなプチ登山を経験して、あまりの美しさと爽快感に感動。そのときに亡くなった父に連れられて子供のころ、よくハイキングに行っていた記憶が鮮明によみがえり、もっといろんな山に登ってみたいという意欲が湧いてきました。
実際、富士山計画も盛り上がったので、練習のためにいろいろ経験しておこうということであちこちの山に行き、2021年の8月には富士山にも無事に登れました。マラソンからも登山からもさまざまなことを学んでいます。マラソンも人と競わず、自分のペースで走らないとダメですし、登山はとくに一歩間違えば危険も伴いますから、自分の体力やできる範囲をよく知ってペースを守らなくてはなりません。私は体力に多少自信もありますし、ついついハイペースになりがちなんですが、はやる気持ちを抑制しながら、過信しないように登ることを心がけるのは肉体面・精神面、両方にとっていい鍛錬になっていると感じます。
—— サウナに登山、ヘルシーな趣味とともに伊達さんを支える要素として欠かせないのが「食」。ご飯もパンも大好きだそうで、パンに関しては好きが高じて「FRAU KRUMM」(フラウクルム)というパンとコーヒーのショップをプロデュースするほどです。
パンはすごく好きでブレッツェルやドイツパンなどをメインにしたパン屋さんをプロデュースしています。お米にも目がなくて土鍋で炊いた白米に自家製のぬか漬けがあれば満足なくらい。
コーヒーを淹れるのも趣味で、comandantegrinderというコーヒーミルで豆を挽いて淹れるドリップコーヒーを味わうのは至福のひととき。気持ちがすっと研ぎ澄まされます。
食べるのが好きなので体型管理に関してはとくに意識はしていません。ダイエットについても懐疑的です。例えば、糖質制限ダイエットなども流行っているとは思うんですが、糖質が多い食品を一生食べないんだったらいいけど、どこかで糖質制限を解除するのなら絶対にリバウンドするはず。それならやらない方がいいと考えています。
ダイエットするなら一生続けられる習慣にできるやり方が大事ではないでしょうか。私自身は100歳以上生きる気満々なので(笑)、ムリのない範囲でトレーニングや登山を楽しみつつ、食もお酒も楽しんで笑顔の多い、ポジティブな生活をゆるやかに続けていければいいなと思っています。
〈TOP写真〉衣装協力・プーマ〈末尾写真〉カーディガン¥31,900パンツ¥36,300カットソー¥19,800〈すべてセミクチュール〉ネックレス¥212,300ピアス¥462,000〈ともにジュエル・ジェイジー〉(すべてFUKI PRESS ROOM)
撮影/田頭拓人 ヘア・メーク/小菅 孝 スタイリスト/M.LUKE 取材/柏崎恵理 撮影協力/R-BODY大手町 ※情報は2022年11月号掲載時のものです。