40代……。
さまざまな揺らぎを感じる世代です。
第一線で仕事をし続けていても、周りの目が変わってきたり、自分のスタンスも変化してゆくもの。
でも、そんな不安や戸惑いの中でこそ、“本当の自分”が見えてくるのかもしれません。
STORY2月号では、フリーアナウンサーの馬場典子さんと中村仁美さんに“仕事について”のお話をうかがいしました。
本誌P.156-157の対談記事の続きをこちらに紹介させていただきます。
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“結婚する・しない”でもけっこう揺れる
馬場 仁美ちゃんは、年下だけど、結婚して、子どももいて、そいういう意味では私よりずっと大人だよね。
中村 いいじゃないですか、ずっと若いままの気持ちでいられて。
馬場 ゲッターズさんに占ってもらったら、私、精神年齢18歳らしい(笑)。で、いろいろ決められなくて優柔不断なのも、逆から見ると「幅を持って考えられるということだから、柔軟性があるんですよ」とアドバイスしてもらって、ちょっと楽になったわ。
中村 そうですよ。何事もポジティブに変換しないと。
馬場 最近、ちょっとおひとり様にも飽きてきたので、誰かと世界を広げたいな、という気持ちが出てきた。子どもはもう無理だし、〈結婚しなくてもパートナーがいれば十分じゃない?〉と思って……。意外と「揺れて」いるわけなのよ。
中村 本誌対談のほうでも話しましたが、婚姻届の威力は意外にすごいですよ。届を出す前は〈別に家も別々でいいじゃない〉くらいの感覚だったし、いろいろと気を揉むことも多かったんですよ。でも、結婚してしまえば、もう簡単に別れることもないだろうし、連絡が取れなくても〈どうせ帰って来るんだから〉と気にならないし。安心して自由でいられるようになって、ストレスがなくなりましたよ。
馬場 そうそう、結婚したら後はもう〈この人と幸せになることだけを考えればいい〉と思うようになったという話、素敵だなあって。ぐっと来た。
ところが、年齢を重ねるとなかなか出会いもないのよ。友達が出会いの場として、食事会をセッティングしてくれたりするんだけれど、大人の男性はぐいぐい押してきたりしないのよ。そうすると私、鈍感だから、気づかなかったりして。
中村 いや、馬場さんは、いっぱいチャンスがありそうじゃないですか。
馬場 そんなことないのよ~。それに、私はどうも大切な人となると、自分の思っていることをちゃんと言えなくなっちゃうのよね。
中村 ああ、でも結婚してから「グレーな部分を残しておく」というのは大事だと思うようになった。全部清廉潔白は要求しない。外でのことには片目をつぶって、その代わり〈ここにいるときだけは、ちゃんと夫・父親をやってね〉という感じになりましたね。
馬場 なるほど。深い!
中村 馬場さんは、好かれて結婚するほうが上手くいきそうな気がするんですけれど、どうですかね。庄司さんとミキティみたいに。夫が妻のファンっていう関係。
馬場 ファンを裏切らない“素”って、相当すばらしい“素”だよね。それ、自信ない。
中村 まあそうですけれど。でも、すごく馬場さんを好きな男性で、全部受け入れてくれる人なら、その人の前であんまり頑張らなくて良くなるのかもしれないなって。
馬場 “素”を受け入れてくれる人ね……。いる気がしない。
中村 そんなことないですよ。
揺らぐ時期こそ変われるチャンス
馬場 若い頃は、「女子アナ」という言葉にも敏感に反応して、白黒つけたがる性格だったのよね。でも、年齢を重ねるうちに、こだわりがなくなってきた。
中村 人前に出る仕事でもあるし、飛んでくる槍や剣をまともに受けると辛くなっちゃいますよね。投げ返すでもなく、さらっと受け流せるようになるほうがラク。
馬場 そうなんだよね。なんだろう、程よく無責任なくらいが、周りから好かれたりするじゃない? こだわって主張すると、ただの押し付けになっちゃうこともある。話は変わるけど、日テレを辞めるときに記事を見た大学時代の男友だちが「わかるよ」ってメールをくれたの。ああ、性別も業界もプライベートも違うのにわかってくれるんだなあと思った。40歳前後って転換期なのかもね。
中村 そうかもしれないですよね。
馬場 でも、男性からは妻が仕事をしていないとか、子どもがいるとかで辞められないとも聞いて。そう思うと、ちょっとよれっとしたスーツを着て新橋のあたりを歩いている中年男性のカッコ良さみたいなのがわかってくる。ああ、頑張ってるんだ、立派だなあ、って。
中村 そうそう、頑張ってる。えらい! まだまだ男性はいろんなもの背負っている。
私が結婚する時、芸人さんとアナウンサーのカップルは、妻が仕事を辞めて夫のサポートをするのが普通、みたいな雰囲気があった。でも、私はなんだか、それにはモヤっとして〈私は違うな〉と思ったんで、仕事を続けました。結局、会社は辞めたけれど、それは、自分が幸せになるための選択で、支える側に回るためということではなかった。
アナウンサーって、他の仕事で武器になるような技術がないし、辞めればゼロベース。でも、〈私には何もない〉と思うと開き直れました。そうして今、こうしていろいろな形でお仕事させてもらえてるは、ありがたいと思いますね。
馬場 40代になって、仁美ちゃんも私も、ようやく自分にとっていいバランスで仕事に向き合えるようになったってことだよね。逆に言うと、仕事とか、体調とか、揺らぎがある時期だこそ、自分を振り返って、軌道修正ができる。揺らぐのは大変だけど、悪いことばかりじゃないよね。
撮影/平井敬冶 ヘア・メーク/谷口あゆみ(馬場さん)、千葉万理子(中村さん) スタイリスト/山崎由佳(馬場さん)、河野素子(中村さん) 取材/秋元恵美