――原作の設定やストーリーについては、どんな印象をお持ちですか?
基本的には、ちょっと変わった家族のありさまや出来事が描かれたホームコメディなんですが、同時に、今後どう物語が展開していくのかわからないスパイアクションでもあるので、深く考察したくなるんです。そこが面白いですね。世界が東西冷戦状態にある時代の、隣り合った東西の国が舞台になっているので、個人的には、たぶんまだ壁があった頃のベルリンがモデルといいますか、ベースになっているんだろうなと想像しています。そうだとすると、話をこれだけコメディに振っているのは、実は今後の展開への伏線なのかなと考えたりして……。
――なるほど。
ただ、ベルリンの壁が崩壊した後、現実世界では、身近な人間がスパイを売っていたという話もあったそうなので、もしもそういう展開になったらと思うと、なんだか悲しい気持ちになってしまって。話がそういう展開になりそうな気配を感じると、「ダメダメ! そっちの方向に行っちゃダメ!」なんて勝手に思ったりしています(笑)。多面性を持ったキャラクターが多いので、色々な展開が想像できて目が離せない。小さな糸口から、もしかしたらこうなっていくのかも……と考察すると楽しいですよ。
――鈴木さんが演じるのは、精神科医ロイド・フォージャーに扮し、かりそめの家族を作る西国<ウェスタリス>の凄腕スパイ<黄昏(たそがれ)>。ご自身と似ているところや、魅力を感じているところを教えてください。
まず、スパイという謎めいた存在に惹かれますし、そういう職業の人間を演じられることが自分にとっては魅力です。秘密を守り続けるためには、ものすごく頭を使うと思うので、かなり頭が切れる人だと思いますし、しかも、とても器用。僕は不器用な人間なので、そういう意味でも、自分と似ている部分はすごく少ないですね。でも、だからこそ、自分にできないことを疑似的にでも経験できるのは嬉しいし、器用に何でもやれてしまう充実感を楽しみたいなと思っています。