少しのことで怒りっぽい、急に声を荒らげる、仕事や将来の不安でクヨクヨ、何もかも億劫……。以前の夫にはなかった変化に不安や不満を覚えたら、妻として何ができる? 将来の健康にも関わる問題を乗り切るために、今踏み出すべき一歩とは。
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\点数でわかる/男の更年期・チェックリスト
以前と違う夫の「異変」の 相談・受診はどこにするもの?
<右>【同級生夫婦で寄り添い解決型】夫・46歳(更年期症状自覚あり)香織さん(46歳)
同級生で何でも言い合える仲の夫は、コロナ禍以降、在宅勤務で同僚との雑談や運動不足が顕著。わずかな不調を察知・指摘。
<左>【解決策不明でやり過ごし型】夫・45歳(過去に更年期症状あり)友紀さん(47歳)
トップ営業で仕事人間だった夫が数年前に過労で倒れ、イライラや不調が子どもにも向き、家庭内にひびが入った経験あり。
香織さん(以下、敬称略)
最近、急に大声で私にキレたり、子どもにカッと怒鳴ったりが目立つようになって。普段は穏やかな夫の豹変ぶりに驚いてますが、夫自身も家族に声を荒らげたことを毎回後悔し、落ち込んでます。細マッチョの体も肩や胸の筋肉が落ちて、見た目の衰えに夫もガッカリ。
友紀さん(以下、敬称略)
うちの夫は数年前が一番イライラが強く、手のつけようがなくて。バリバリ営業で働いていましたが、病に倒れて体調も不安定で、子どもたちにも当たっていたんです。しんどいけど、なんとかやり過ごしてきました。もし当時、男性にも更年期障害があると知ってたら、夫と一緒に対処法や受診先を探したかも。
香織
私の更年期不調を引き合いに「あなたも更年期かも」なんて夫に話を振ったら、否定するかと思いきや素直に認めて……。
友紀
弟(45歳)がしていた男性更年期の話が、思い当たる節ばかりで納得してしまいました。自分ではどうにもならない衝動的な怒りやイライラに悩んでいて、趣味の仲間との集まりから抜け出して帰ってくると。でも、何科を受診するのかしら?
香織
女性更年期は閉経と関係があるし、生理の悩み・妊娠・出産で婦人科受診は多いけれど、男性は病院嫌いも多いし、自尊心も強いから切り出すのが難しいですね。
友紀
健康診断で、男性更年期のチェックや啓蒙も取り入れてくれたら、その不調の原因を知り、男性更年期解決の一歩につながれば、妻にとっても嬉しいですね。
今まで見たことのない夫の弱気や活力減退に一喜一憂
<上>【年上夫の変化にとまどい型】夫・57歳(50代から更年期症状あり)真理子さん(48歳)
ゴルフや付き合いで夕飯時や休日も不在だった夫が、外出が減り弱気に。何か指摘したら倍返しでキレられそうで何も言えず。
<左>【会話レスで夫婦危機型】夫・51歳(約3年更年期症状あり)貴美さん(46歳)
子どもの成長で暇を持て余し、休日はゴロゴロ。職場の待遇が下がって常時イライラ、腫れ物に触るように接し会話は最小限。
真理子さん(以下、敬称略)
50代初め頃、夫が「死」というワードを口にするように。若い頃から様々なことに器用で、社交的で人望もあったのに、私も子どもたちもビックリするほど弱気に。明らかに、体力も性欲も枯渇しちゃったみたい。家族で夫の臭いに悩むものの、指摘すると怒鳴られるので地雷を踏まないように生活しています。
貴美さん(以下、敬称略)
うちも、機嫌を伺いながら会話レスの膠着状態です。華やかな業界の第一線で働いていた夫は、コロナを機に生活が激変。会社での立場や子どもの成長で取り巻く環境も変わり、以前はなかった家族へのイライラ、特に私への当たりがひどくなって。情報番組で知った男性更年期の話題を持ちかけようものなら、夫の逆鱗に触れて余計にいらだたせるだけなので、どう切り出したらいいのか……。
真理子
もしかして更年期かもよ?なんてアプローチは無理そう。「心配してる」って、どうやってうまく伝えられるかしら。
貴美
性的なこともあるし、プライドが傷ついて、絶対ネガティブな反応をされそう。
真理子
友人男性は、中折れが辛いって。今日は大丈夫、と思っても、途中でダメになるから、プライドがズタズタになるんですって。むしろ妻には言い出せない、とかで私には話してくれたのだけど。
貴美
妻側も男性更年期を知らないと一方的に責めてしまうかも。私自身も更年期で余裕がない日もあるし。男性の更年期症状や情報に触れて歩み寄れれば、お互いの不満を上手に解消できるかもしれませんね。
STORY読者51名の夫の更年期 アンケート
あると答えた人は、イライラ、倦怠感、筋肉痛のほか、外出などの行動力や仕事への意欲や活力の低下、精力の減退などから、薄々感づいたとの声、多数。
「別に違うでしょ」と一蹴されたり、明らかに怪訝な顔をされたり、うまく受診につなげられないなど、夫婦間の男性更年期の認識の差が浮き彫りに。
男性の更年期障害は、運動でも回復するって知ってますか?
男性更年期診療のエキスパート 井手久満先生
男性更年期障害は正しくは「LOH症候群」といい、加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の減少に、環境やストレス、運動不足などの要因も重なって起こります。代表的な症状は、上のチェックリストの通り。うつと似た症状も多く、チェックリストを用いて鑑別できます。
女性更年期は閉経前後10年間に対し、男性更年期は必ずしも年齢だけでは線引きできず、表の合計点数を目安にメンズヘルス外来の受診をおすすめします。バランスのいい食事や睡眠、適度な運動など生活習慣の見直しで改善することもありますが、ホルモン補充療法が必要な深刻な症状もあるので、夫の重い腰を上げるべく、チェックリストの回答や専門科受診を妻から後押しするのも◎。
撮影/古水 良 取材/羽生田由香、日野珠希 イラスト/井上明香 デザイン/秋穂佳野 ※情報は2023年2月号掲載時のものです。