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東日本大震災を経験したイラストレーターがたどり着いた「1日1防災」とは

東日本大震災から12年。今も、被災地の復興・新しい地域づくりが進められています。街並みが変わっただけでなく、震災は、多くの人の人生を変える転換点にもなりました。今回は、20代、30代での被災経験をきっかけに、一歩を踏み出した方々のお話をうかがいました。

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アベナオミさん 37歳・宮城県在住 イラストレーター、防災士

「1日1防災」日々の小さな積み重ねが
大きな防災力となり、災害発生時には
本当に大変な人を助けることができる

「意外と大丈夫かも」地震慣れによる過信があったと話すアベナオミさん。東日本大震災発生時、日持ちのする食料や水、乾電池などの備えはゼロ、出しっぱなし収納のキッチンは散らかり放題。それでも、寝室は無事だったため、ハウスダストのアレルギーを持つ息子さんのことを考え、自宅避難を選択しました。

電気は3日で復旧したものの、水は完全に復旧するまで1カ月かかり、その間生活用水を調達するために、砂場用の小さなバケツを持って、息子さんと一緒に近くの川まで水汲みに行く日々でした。

そんなある日、ふと空を見上げると、遺体安置所と海の方を、絶え間なく行き来するおびただしい数のヘリコプターが、アベさんの目に留まります。「これだけ多くの方が亡くなったのだということを思い知らされました。当時子どもも生まれ、〝このままお母さんとして生きていくのかな〟と、仕事に対しては少し後ろ向きでいたのですが、命があることに感謝し、自分ができることを精一杯やろうと、心に誓った瞬間でした」。

自分の経験をイラストにして伝えたいと思いながら5年が過ぎ、気付けば震災があったとはわからないほど街は綺麗になっていました。「復興は嬉しいけれど、こうやってどんどん記憶が薄れていってしまうんだろうなって……。この子が大きくなって、いつか来るかもしれない大地震に備えられるよう、やはり記録に残そう思ったんです」。

震災時にあってよかったと感じた物や震災後に始めたことを、イラストと文字で伝える「1日1防災」をツイッターで投稿したところ、予想以上の反響があり、書籍化が決定。防災に関する仕事が増えるなか、経験だけではなく、より正確な情報を伝えたいと、防災士の資格も取得しました。

とにかく怖いという理由から震災直後は、置き場所に困るような大きなバーベキューコンロや何十キロもの玄米、そのほかさまざまな防災グッズを買い込む防災中毒だったというアベさん。しかし物が増えて落下などの危険は増し、ご主人には「家計が回らなくなる」と指摘され、徹底した断捨離と日常生活に溶け込ませた防災を実践した12年だったと振り返ります。

「防災用のバケツは、好きな色や形を選べば、普段はスリッパ入れにも使える一石二鳥のお気に入りアイテムになります。それくらいじゃないと続かないんですよね。でも、皆が日常生活の中でコツコツ備えて、〝3日くらいは生きていけます〟という人が増えれば、災害時に警察・消防・自衛隊の方たちが本当に困った方のところに行くことができる。家族や大切な人を守りながら、間接的な人助けにもなる防災力を、この先個々人がもっと高めていければいいなと思います」。

アベナオミさんの著書『被災ママに学ぶ ちいさな防災のアイディア40』(学研)の冒頭2ページに描かれた数コマ。マンガやイラストが多いので読みやすく、防災初心者にもぴったりの1冊。

  • 宮城県多賀城市で被災。東日本大震災発生直後、大量の物を出しっぱなしだったキッチンは、揺れで散乱し、危険だらけ。
  • 防災に関するイラストとコミックがライフワークの一つになっているというアベさん。
  • ’16年に取得した「防災士」の資格。すべての災害について学べたのも良かったと話す。

<編集後記>防災力を上げる最初のステップは〝断捨離〟でした 防災といえば買い揃えるイメージでしたが、落下防止、防災グッズを置くスペース確保のためにも、まずは断捨離することが大事だと知り、目から鱗でした。捨てがたいものは写真に撮ってから処分するといいのだとか。しまいっぱなしより画像の方がちょくちょく見られて、実はいいのかも……なんて思い、断捨離を誓った取材となりました。(ライター 篠原亜由美)

 撮影/BOCO 取材/篠原亜由美 ※情報は2023年4月号掲載時のものです。

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