Netflix恋愛リアリティシリーズ『あいの里』に出演し、一躍話題となったトッちゃん。シングルマザーとして参加し、田舎の古民家で35歳以上の男女と共同生活を送りながらパートナー探しに挑んだトッちゃんに、出演のきっかけや、大人の恋愛についてインタビュー。STORY世代ど真ん中だからこその悩みや、価値観の変化などを伺いました。
STORY編集部(以下同)――『あいの里』に出演しようと思ったきっかけは?
20年来の友だちから薦められたのがきっかけです。「こんな企画あるよっ、シングルだしいいんじゃない?」って。興味は沸いたけれど迷いはありました。オーディションで最終まで残ったときも、最後は断ってもいいっていう気持ちがあって。ギリギリまで悩みました。
――そこまで悩んだ理由は?
やっぱり子どもを置いて家を空けるっていうところですよね。仕事だったら別ですけど、恋愛をしに行くってどうなのって。もちろん周りの反感を買うのでは、ということも頭をよぎりました……。最後まで迷ったけれど決め手は、シングルマザーだからこそ、意味があるんじゃないかなって思ったんですよね。シンママの恋愛に対してまだ偏見とかあるじゃないですか。そういう意味でも、私が出ることで、勇気とか希望とか、私の恋愛する姿を見て何か感じてもらえたらなって覚悟を決めました。
--出演が決まり、お子さんとはどう向き合いましたか?
子どもにはさすがに、恋愛をしに行ってきます! とは堂々と言えなかったです。伝え方って難しいなって悩みました。女の子だったら、恋愛の話もちょっとポップな感じで話せるのかな、でも異性の子どもになるとちょっとセンシティブになるかなと思ってしまって。結局、家は1か月以上空けることになったのですが、子どもは親戚の家に預けることにしました。寂しがるかな、とか心配していたのとは裏腹に、実際は離れていた期間、電話で様子を伺ってみたら「あ、いいよ、大丈夫だよ!」って言ってくれて。預け先には同世代の男の子が4人いたので、その間は5人で合宿みたいな生活になって楽しくしていてくれたのには助かりました。キャンプしたり、ゲームしたり、いつもだと目について注意することも、注意されず野放しで(笑)。私的には複雑でしたけど。
--お子さんは受験期だったようですが、そのタイミングでの不安については?
電話で声を聞いて元気そうにしているのが分かって安心するのも束の間、塾をさぼっていたことが判明して! 母親がいなければストッパーがなくなり、やりたい放題になりますよね。受験は本人がやるというなら応援したいと思っていたけれど、世に言う受験ママみたいな、一緒に頑張ろう! というスタンスというよりは公立でもいいんじゃないの? という派だったので、本人の意向を優先しようと思っていました。結局は受験も向いていないと判断してやめたし、それでよかったと思っています。
--参加に対する後ろめたさのようなものはありましたか?
そういう罪悪感はなかったですね。子どもが思春期、ということに対して思うことはありましたが……。これはあくまで私の考えなんですけど、子どもが大人になったときに、「ママは自分だけのために、仕事だけをがむしゃらに頑張ってたんだ」って思ってしまうと負担に感じるかなと思って。仕事も恋愛も楽しんで、自分の趣味もあって、っていう方が、自分もいてよかったって思えるのかなって。自分のためだけに人生を捧げたっていうのは、ちょっと違うのかなと……。子どもより恋愛を選ぶということではなくて、絶対に子どもだけを優先して自分自身の人生は後回し、という感じじゃなくてもいいのでは? というバランスの話です。
--そう考えるようになったきっかけはありますか?
自分の母親が専業主婦で、父に尽くして、親の介護もして、という世代で。お母さんが先に亡くなってしまったら父はかわいそうだなって思うんです。いまだに母は父の世話をやいていて、全てを捧げている。このまま母が人生を終えたら、もったいないなって思っちゃう。当時、離婚したいと思ったこともあったと思うけれど、私が4人兄弟で、女一人でどう生きていくのか考えた時に、別れに踏み切れなかったんだと思うんです。だから私は、これからでも母に、自分がやりたいことをやってもらいたいと思っています。私が息子を置いて『あいの里』に参加することに対しては、母の反対はありませんでした。帰ってきてから、「本当にリアルな恋愛なの?」とは聞かれましたけど(笑)。母を不幸だとは思わないですが、私は母とは違う人生を作っていこうと思っているんです。
【後編へ続く】
撮影/沼尾翔平 取材/高橋奈央