「一生、添い遂げる」と一度は誓った夫婦。しかし、さまざまな理由で離婚という答えを出すこともあります。憎しみのない円満離婚は難しいことなのでしょうか。いろいろあったけど、今は支え合う間柄――結婚というカタチにはこだわらない元夫婦の様子を取材してきました。
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離婚して距離を置き、今また家族でお風呂にも入るように
猿田摩耶さん 43歳・神奈川県在住
一般社団法人「りむすび」共同養育サポート
子どもの共同養育を通じて、今では
「ありがとう」を言い合える関係に
「ありがとう」を言い合える関係に
現在は元ご主人と共同養育を通じて良好な関係を築いている猿田摩耶さん。「離婚をしたいと申し出た時に、『離婚後も子どもたちは2人で育てたい』と私から伝えました」。
もともと仮面夫婦にはなりたくないと思っていた猿田さんでしたが、子ども2人を授かってから不仲になっていったそう。「離婚という選択肢よりも、まずは夫婦関係の再構築から始めようとカウンセリングを受けたことも。けれども残念ながら彼には響きませんでした」。
その後、距離を置くために別居し、心理学を学びながら自分を見つめ直すことに集中したそう。「結局、夫婦の問題は相手が悪いと思ってしまう。けれども責め合ったところで状況が変わることは難しいと感じました」。
別居中は子どもたちの元に通い、子どもに接する元ご主人の姿を見て、「彼にとっても、子どもがとても大事な存在なんだ」とわかった猿田さん。
「私が離婚を視野に入れた時に、いちばんの気がかりは子どもたちから父親の存在を失くしてしまうことでした。そんな時に1冊の本に出合い、別れても2人で子育てをする共同養育の概念を知りました。『私が求めているものはこれだ!』と確信。それと心理学を学んでいた時に『仮面夫婦の両親に育てられた子どもより、離婚しても父親、母親、祖父母など、周りから多くの愛情を感じて成長した子どものほうが精神安定度の高い人になる』という記述を見つけ、安心したことも大きかったです」。
離婚を申し出た猿田さんと元ご主人は、条件面で揉めることなく話し合いを進めることができたといいます。「彼は、離婚してからのほうが子煩悩で、むしろ積極的に関わってくれる人でした。子どもとのつながりを避けるような人ではなくて良かったと思っています」。
現在、元ご主人は子どもたちと週に1回くらい過ごし、泊まりのキャンプに連れていくことも。小学校の行事は一緒に参加し、子どもの誕生日は4人で会食して祝っています。「離婚をしたことでしがらみがなくなり、お互いに楽になったところはあるかもしれません。今は一線を引き、無理強いはしないと決めています。あとは離婚前にはなかった『ありがとう』という言葉を互いに頻繁に使っているかも(笑)。彼に対して、好きという愛情の気持ちはもうないですが、子どもを通して家族ではあるので、健康でいてほしいと願っています。本来は離婚しないことがいちばんいいのでしょうが、2人の大事な存在である子どもたちが辛い想いをしないような関係を築けていけたらいいですね」。
現在は共同養育を推奨している「りむすび」の一員として活動している猿田さん。「自分の経験を活かした人生にしていきたいですね。今は『離婚して良かった』の一言に尽きます(笑)」。
撮影/BOCO 取材/孫 理奈 ※情報は2023年10号掲載時のものです。