若くして病を経験したからこそ、生きる知見があります。30歳の若さで子宮頸がんと診断された原千晶さんはそれまで以上に自身の体調に敏感に。幅広い更年期症状も、経験値でゆったりと構えているそうです。
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30歳で子宮頸がんが発覚し、36歳になる年に子宮を全摘しました。でも卵巣は両側とも残っているので、今は女性ホルモンが緩やかに減っている最中だと思います。
3年前に婦人科で血液検査をしてもらった時にも、長年お世話になっている先生に「子宮が残っていたら、まさに今は閉経しようかという状況。女性ホルモンも低下しつつありますね」と言われました。実際、更年期の症状はフルコース。ホットフラッシュ、動悸(*1)、めまい、高血圧(*2)、冷え、むくみ、疲れやすさなど代表的なものはほぼ網羅しています。
◇ 冷やさないケアの大切さを痛感
–原千晶さんは2005年、30歳の若さで子宮頸がんと診断され、がんの患者会を立ち上げるなど啓蒙活動にも精力的です。今年の7月にはリンパ浮腫を発症、現在は保存療法を受けていますが経過は順調だとか。
生理痛も含めて若いころから婦人科系のトラブルが多かったので、更年期に関してはとても心配でした。軽く済むか、かなり重いか、どちらかだろうと思っていました。年齢的にも真っ只中の49歳なので、50歳を境にどうなるのか今は戦々恐々としています。
いちばん分かりやすい症状のホットフラッシュは、例えば飛行機や新幹線に乗る際など、時間に間に合うかどうか急いでいる時に無事に間に合ってホッとした瞬間、眉間から上の部分が火照り、ドッと汗が出たりします。お水やお茶を飲むと落ち着くのですが、動悸なども相まって、かなり不安になります。
また血圧も160ぐらいに達するなど高くなってきたので、病院で降圧剤を処方していただいて毎朝飲んでいます。私は10代のころから甲状腺も良くなくて、以前は亢進症でバセドウ病と診断されていました。が、がんの手術が終わった30代後半に「なんか疲れやすくなったな」と思って病院に行ったら低下症の橋本病だということが分かり、毎日薬を飲んでいます。
こんなふうに言うと病気のデパートのように思われるかもしれませんが、これは自分自身の不調に敏感になることを心掛けている結果だと私は思っています。
30歳で子宮頸がんが分かったあと、35歳で子宮頸がんと子宮体がんを併発した時がそうだったのですが、体じゅうの首という首、手首足首やお腹がまるで氷のように冷たかったんです。レッグウォーマーを何枚はいても冷えて冷えてどうしようもなくて、しまいには痛くなってくるほど。血流が悪いのか冷えすぎて、くるぶしが硬くなっていて、押すと痛いんです。東洋医学に精通している先生に聞いたら「婦人科系が良くない人は名称に〝首〟とつく部分が冷えているんですよ。だから子宮と卵巣の不調が冷えという症状に顕著に表れていたんでしょう」とのこと。
一度がんを患っている私でさえ、そこまで冷えが悪化しないとなかなか体内部の不具合に気づけないのですから、ふだん健康な方なら我慢したり見過ごしたりして、さらに良くない状況に陥るかもしれません。
女性は自分のことを後回しにしがち。不調をいつものこと、当たり前だと思わないで自身の体調には敏感になってほしい。なんとなくだるいなどの不定愁訴や疲れやすさ、肩こりや頭痛も、ただの睡眠不足やちょっとした過労などと片付けないでほしい。もしかしたら重大な病気が潜んでいるかもしれないし、更年期症状かもしれません。ネットで「更年期」と検索するだけでもいいんです。体の声に真剣に耳を傾け、1歩でも自分の体を守るために行動するという然るべき対処をしてほしいと思います。
私は西洋医学の投薬も避けてはいませんが、それでもアロマテラピーを学んだ立場としては自己治癒力も育ててほしいとも考えています。自己治癒力を上げるのに大切なのは、まずは自分の体を知ること。 〝こうなったらこうなる〟という「自分のトリセツ」を熟知すること。リズムを把握し、傾向と対策を知っておくことで不調の予兆に気づきやすくなります。これは40代以降、とても大事な健康管理のひとつだと思います。
ちなみに、私は経験上、冷えが万病のもとだと学び「一生冷えたくない!」と決めたので、思い切って遠赤外線ドームを購入し、毎晩寝る前に入って体を温めています。全身ぽかぽかになり、血の巡りが良くなるのか、寝つきも完璧! 更年期にありがちな中途覚醒もなく朝までぐっすり眠れています。睡眠は日中の活動パフォーマンス向上のためにも重要なので、上質な眠りを得られていることは本当に大事だと思います。
そして私が自分によくかける言葉が「大丈夫」。この言葉を自分自身が聞くだけですうっと癒される気がします。
◇ 日々の楽しみをともにする仲間に助けられています
–病を経験したことで、その後の不調の芽を早期発見できているという原さん。かといって、ただ健康オタクになるのではなく、多彩な趣味を持ってメンタルも元気にしています。
2020年に千葉の外房に移住したことで生活が変わりました。まず劇的な変化としては釣りにハマったこと。
2021年のお正月に友人家族が遊びにきてくれたのですが、中学生のお子さんが釣りをしてみたいということで、私も初めての釣りに挑戦したんです。3キロほど離れた漁港に行ったら、ベテランの方がサヨリをバンバン釣っていらしたので私もレンタルの竿でチャレンジしたのですが、見事に1匹も釣れない(笑)。それがすっごく悔しくて。釣れない私を可哀想に思ったのか、その釣り人が「持って帰ったら母ちゃんに怒られるから持っていきな」と言ってバケツ1杯のサヨリをくださったんです。
家に帰って見よう見まねで捌いて塩胡椒して片栗粉をつけて揚げたらビックリするくらい美味しいことに大感動。早速次の日から色々調べて道具を揃えていざ釣りへ。最初はあまり釣れなかったものの、周りの先輩方に教えていただくうちにだんだん釣れるようになりました。
私は20歳からお仕事していることもあって、なかなか人に、特に男性に頼ることが苦手な性質でした。負けちゃいけないみたいな概念が強かった気がします。でも釣りを始めて「あ、男の人ってこんなに優しいんだ」と気づいて自分が救われるような思いがありました。それに50歳ぐらいになると色んな場面で堂々と初心者であることが難しくなりますが、教えを素直に請えるような、リスペクトできる人がいる学びの場があるというのは素晴らしいことではないでしょうか。1回行くと必ず〝1ドラマ〟がある釣りはしばらく夢中でいられそうです。
また、私はとにかくお酒を楽しむ時間が好き。友人とワイワイも好きですし、自宅で一人のんびり飲むことも。外房に越してからは地元で採れる野菜や果物をお酒にして漬けることにもハマっているので、自家製の梅酒やいちご酒を飲むひとときも贅沢な時間です。
地方に行くことも多いので、一人で気になったお店にフラッと入ってその場の雰囲気を楽しみながら飲むのも大好き。自分の調子と相談しながらの適度な飲酒はいいお薬だと思います。
来年には50歳ですが、自分を治すのはまずは自分、自分自身からのSOSを早めに受け止め、タイミングを逃さずに対応してあげたい。私の魔法の言葉「大丈夫」を体にも心にもかけてあげながら、できるだけ長く穏やかに自分と付き合っていきたいですね。
撮影/田頭拓人 へア・メーク/庄司愛理 取材/柏崎恵理 撮影協力/えさ政 ※情報は2023年12号掲載時のものです。