女性としてこれからのキャリアについて悩むSTORY世代。’22年に女性活躍推進法が改定されてからはますます女性の活躍が期待され始め、徐々に女性管理職比率も高くなってきています。個人として評価され活躍される女性リーダーの方々には、キャリアの狭間で自身の生き方を見つめ、可能性を信じてチャレンジする姿がありました。今回ご登場いただくのは、ジュエリーブランド「HASUNA(ハスナ)」の代表であり、また大学教授として起業家育成にも力を注ぐ白木夏子さんです。(全3回の2回目)
白木 夏子さん(42歳)
ジュエリーブランドHASUNA Founder & CEO/武蔵野大学アントレプレナーシップ学部教授
英ロンドン大学卒業後、国際機関、投資ファンド会社勤務を経て2
人を育てることも社会を良くすること。だから2足の草鞋で頑張りたい
STORY編集部(以下同)――なぜジュエリーブランドを立ち上げようと思われたんですか?
南インドの鉱山で働いていた方たちの姿が忘れられませんでした。当時、ジュエリー業界では鉱山で働く方たちの劣悪な労働環境に対して積極的なアクションを起こしている方がいなかったことから、「ならば私がやろう」との思いが湧きました。
――起業を決意してから、最初に作られたジュエリーのことは覚えていますか?
初めて仕入れたのはカナダのダイヤモンドです。カナダでは、採掘時にできた穴は現状復帰しなければならないなど、厳格な法律が存在し、環境に配慮したサステナブルなダイヤモンドとして知られていますが、そのようなダイヤモンドを輸入して作ったジュエリーが、初めて手がけたものです。
――お一人で起業されたのですか?
はい。そのため、「中米のベリーズに面白い貝殻があるから、来ませんか?」と連絡を受けた際も、私が現地へ向かいました。
そこで見たのは、白黒のコントラストが特徴的な「ウィルクス貝」と呼ばれる貝殻。その洗練された柄に魅了されつつも、この貝殻を材料として活用すれば、ベリーズの経済発展に寄与できる可能性を感じました。この思いから生まれた「l’unique」コレクションは、人々や地球環境、社会に対する配慮を大切にするジュエリーブランド「HASUNA」のアイコニックな一部となっています。
――開発途上国への支援という意味合いも考えると、やはりジュエリーの材料は海外のものが多いのでしょうか?
愛媛県西予市でとれるあこやパールや珊瑚など日本のジュエリーも大切にしたいと考えています。最近では金の価格の上昇や材料費の高騰、さらには円安も重なり、日本の企業や職人たちも困難な状況に直面しているので、ジュエリーの最終工程において、日本の職人さんたちにお願いするなど、国内の産業も支えられるように努力しています。
――今はHASUNAの経営だけではなく、起業家を育成することにも力を入れていると伺いました。
創業して10年ほど経ったとき、女性の起業家の輩出を目指す名古屋市の支援事業にディレクターとして参加し、初めて起業家をサポートするためのプログラム作成や講師として学生の前に立つという経験をしました。
その後、武蔵野大学から「
――エシカルなジュエリーブランドとは、また全然違うお仕事ですね。
昔から、声をあげづらい弱い立場の人や、何かを頑張りたいと思っている人たちがいたときに、何か自分がすることで、少しでも状況が好転したら嬉しいというか……役に立てたと感じることは、私にとっても大きな喜びなんです。
――教授として多くの学生さんと触れ合ってみていかがですか?
10代の若者たちと関わっていると、大人が発する一言が何か大きな行動につながったりすることがあり、責任は重いなと感じます。実際、私自身も短大のときに出会った、写真家の桃井和馬さんのお話が今に続いていますので。
――経営者と教授、これからも2足の草鞋でという考えはありますか?
私の考えとしては、良い社会を築く事業を行っている起業家が1人いれば、その人の周りにいるスタッフやお客様、何十人、何百人といった多くの人々に影響が及びます。そのため、より優れた起業家を育てることは、社会をより良い方向に導くことにつながります。
なので、人を育てる仕事はこれからも続けていきたいと思いますし、私にとって初めての子どものような「HASUNA」は、これからもしっかりと育てていきたいと考えています。
撮影/BOCO 取材/篠原亜由美
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ジュエリーブランドHASUNA Founder & CEO・白木夏子さん~仕事と子育ての両立のコツは「上手な息抜き」