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弁護士で妻と、作家で主夫の”逆転夫婦”に話を聞いた

弁護士・三輪記子さん × 作家・樋口毅宏さんご夫婦の対談をお届けします。

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目次 ★ 逆転夫婦だからこそ、当たり前じゃなく「ありがとう」を言葉にできます


逆転夫婦だからこそ、当たり前じゃなく「ありがとう」を言葉にできます

三輪記子さん
’76年、京都出身。東京大学法学部を卒業後、立命館大学法科大学院に入学。,09年に司法試験に合格すると,12年に三輪記子法律事務所を開設。各種ハラスメントや男女トラブルのエキスパートとして、メディアでも活躍中。1歳と8歳の2児の母。

樋口毅宏さん
’71年、東京都生まれ。出版社勤務の後、,09年『さらば雑司ヶ谷』で小説家デビュー。著書に山本周五郎賞、山田風太郎賞候補『民宿雪国』、『タモリ論』など。13年ぶりの新作『無法の世界 Dear Mom, Fuck You』(KADOKAWA)が話題に。


二人の出会いは、ツイッター(X)に著書『タモリ論』についてコメントしていた三輪さんに夫・樋口さんが興味を持ち、自身の小説を送ったのがきっかけ。初めてお酒を飲んだその日に男女の仲となり、しばらくはセフレ以上恋人未満な日々が続いていたとか。そして半年経った頃、「樋口さんの子どもが欲しい。お金もいらないし、結婚もしなくていい」との三輪さんからの申し出に、樋口さんは「わかりました」と返答。その後、三輪さんの所属事務所からの要請で結局結婚することに……。現在、三輪さんは一家の大黒柱として働き、樋口さんは妻を支える主夫として毎日育児や家事に奮闘しています。

樋口さん(以下、敬称略)
僕たちは結婚8年めだけど、「お~い、お茶」なんて、妻にお茶を入れてもらった記憶がない(笑)。というか、僕が妻に「どうぞ」と、お茶を用意してる。「お茶、置いておくね」とアピールすると怒られるので、ペットボトルの蓋をそっと開けて置いておきます。

三輪さん(以下、敬称略)
確かに家事や育児を毎日やってくれてありがたいんだけど、なんか「やってやってる!」って感じを前面に出されるとムカつくの。

樋口 
あっ、僕、早速地雷踏んだ!?

三輪
本気出したら、私だってスペシャルにやれちゃうんだから!(笑) それに、世の中の妻はもっとハイレベルにタスクをこなしているでしょ。うちの夫はそんな……。

樋口 
僕、母と妹と歴代彼女から怒られた回数を足して1万倍にしても、記子1人から怒られた方が多い(笑)。

三輪 
でも、私は世の中の夫たちのように、ゴハンや家事に文句を言ったりしないよね。心の底から、すごく感謝しているから。それで、いつも「ありがとう」という言葉が自然に出てくる。

樋口 
うちの場合は逆転夫婦だけど、誰かがやらないといけない家のことは、ほぼ奥さんがやっている家庭が多いもんね。それは当たり前なことじゃない。子どもを1人で育てられるなら、そもそも結婚なんてしなくていいんだし。

三輪
この前運動会で久々に保育園に行ったら「1年半ぶりですね」って保育園の先生に言われて。「えっ! 私、そんなに行ってなかったんだ」って気づいた(笑)。

樋口
記子は自分がやってないことにちゃんと気づくのが偉い!

三輪 
そう! 周囲に仕事も家事も完璧にこなす女友達がいて、それを見ているから、我が家は本当にありがたいなって。でも、男性はそれに気づかない。自分がやったことには注目してほしいくせに、妻がすることは当たり前のようにやり過ごして感謝がない。夫婦問題の相談案件では、妻を見下す言葉を投げる夫も多くて、それを見て育つ子は、母をリスペクトできなくなる事例も多いと感じます。

樋口 
うちは逆だよね。「そろそろ算数が難しくなってきたから、ママに聞こうか」とか、息子がやんちゃをする時、「ママに言いつけるぞ」と言うと、「それだけは止めて」って(笑)。僕も、世の中に求められて忙しく頑張っている記子をリスペクトしてる。

三輪 
いや、私も何があっても怒らない夫は、すごいと思うよ。どんな渋滞だって怒らないから。うちの母も、まめに子どもの写真を共有ファイルにアップしてくれる樋口に、すごく感謝していて。それを見るのが楽しみだって。私も、出張で家を空けても、子どもの様子がわかって安心で、「ありがとう」という気持ち。だから、結婚してから浮気したことなんて一度もない!

樋口 
僕もしてないから!(笑) 夫婦って、どちらかだけが頑張っても長続きしない。お互い様だよね。

三輪
そう、今、改めて夫の何に対して私が毎日怒るのか考えてみたけど、思い出せなくて。きっと、些細なことなんだよね。感謝しているから、これも許してね!(笑)

2023年、生後1歳半の長女と近所の公園で。撮影は8歳になった長男。
2015年、生まれたばかりの長男と当時の京都の自宅で撮影。

撮影/馬場わかな 取材/石澤扶美恵、小出真梨子 ※情報は2024年2号掲載時のものです。

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