移住や二拠点生活に憧れや興味があっても、いざ生活を変えるとなると躊躇し、なかなか踏み出せないものです。今月は新しい土地に根付き、自分にとって大切なことを見つけた方々の移住LIFEを取材。心地よい居場所で、輝く笑顔とともに、自分らしく生きる姿が見られました。
富永美樹さん 53歳・山梨県在住
フリーアナウンサー
地元の人々との交流を経て
50歳で起業。今までとは全く
別の仕事に挑戦
50歳で起業。今までとは全く
別の仕事に挑戦
「森は標高によって生える木の種類、香り、空気までもが違います。富士山麓の、この地に降り立ち雄大な景色と森を見ながら深呼吸した瞬間『ここだ!』って思ったんです」と語るのは、アナウンサーの富永美樹さん。27歳でシャ乱Qのメンバー、まことさんと結婚。それ以来、夏の恒例行事はアウトドア好きの夫と行くキャンプだそう。
「30歳過ぎてテントで寝るなんて…最初は行きたくなかった。でも回を重ねるごとに自然の魅力にはまり、夫が好きなものを少しずつ受け入れていったんです。すると世界が広がり、気づけば楽しいと思えることが増えていきました」。
自然の多い地への〝移住〟を考えるまでになった富永さん。しかし、ネックになったのは仕事でした。「東京で仕事がある以上、その夢は現実的ではありませんでした。しかし、大自然の中に身を置くことでもたらされる喜びや自分らしくいられること。それがどれだけ自分にとって大切で必要なことかを考えた時、『10年後、20年後じゃない、行動すべきは今だ!』と思い、自然の中に家を持つことを決断したんです。ただ、完全移住というのはハードルが高く、東京の家は持ち続ける二拠点生活を選択しました」。
そして2014年、自分たちで探し、辿り着いた富士山麓の家と東京の二拠点生活がスタート。東京での仕事が終わったら富士山麓に戻るという生活に。
そんな暮らしが数年続いたある日、大きな転機が訪れます。コロナ禍が拡大し、東京での仕事が完全にストップしてしまったのです。「富士山麓の家で過ごす時間が長くなり、地元の方たちと交流する機会が増えたんです。庭いじりやBBQをしながら多くの時間を過ごす中で、アナウンサー時代には人の魅力を引き出すために用いたコミュニケーション能力を、ここでは自分を知ってもらうためにフル活用し関係を深めていきました」。
そして’22 年、友人たちとともに庭造りの会社を立ち上げます。「27年間続けてきた大好きなアナウンサーという仕事。でも、これしか知らないということがコンプレックスでもありました。別の世界を見たいという願望もあり、50歳で起業を決意。『今さら?』と思う人もいるかもしれません。でも私はトライしたい。可能な限り、思い残しのない人生にしたいから。失敗は大きな学びと成長をくれる、だからこそ生きている限りトライアンドエラーを繰り返します。予想もしていなかったことが起こるほうが面白いですよね。ここに住み始めてから心が大きくなり、余裕が生まれた気がします。でっか~い富士山を毎日眺めているからかもしれませんね」。
撮影/BOCO 取材/上原亜希子 ※情報は2024年5月号掲載時のものです。