お笑い芸能事務所・タイタンの社長として爆笑問題や、昨年M-1グランプリを制したウエストランドの活躍を後押しする太田光代さん。小学生のころは医者を目指しつつ、家族のために料理を作り「夢はお嫁さんだった」彼女。お酒にまつわる武勇伝や、社会問題に鋭く切り込み時勢に迎合しない爆笑問題をマネージメントする手腕から、豪快な破天荒闘士なのかと思いきや、素顔はいたって可愛いらしい女性。夫と他愛ない会話を楽しむ日常を夢見るキュートな一面も。この連載では、芸人としては超一流だけれど夫としてのスキルには大々的に?(はてな)マークがつく太田光さんとの結婚生活に密着。「人生やり直すなら早い方がいいから、別れるならさっさと次に行きたい」と言い続けている光代社長に、光さんは見放されずに済むのでしょうか?
夫の衝撃発言にカチン! 「ちょっとそれって、どういうこと!?」
先日のこと。
めちゃくちゃ頭に来たというか、「はあ!?」とキレかかったことがありました。太田が「俺はいつ死んでも構わない」と言ったんです。キッカケは老後の話。
私が「うちは二人しかいないから、老後のためにちょっといろいろ考えとかなきゃね」という話をしたところ、「俺は老後なんかなくてもいいと思ってる」と言うからビックリ。私にしてみたら、何言ってるの? って感じです。私は今年で60歳、太田は1歳下で5月で59歳。もう立派に老後を考える時期に来てますよね。夫婦二人しかいなくて頼る人がいないから、これからどうしていくか、本気で考える時期に来ていると思うんです。
うちの母は私に「あなたに面倒を見てもらう気はない」と強気な発言をしましたが、私はまともに受け取ってませんでした。母の子どもとしてこの世に生まれちゃってますから、母の老後を見るのは当然の流れ。親子の間にいろいろあってもね。それにうちの母のことだから、そうは言っても絶対そんなわけないと思ったら、やっぱりそんなわけないわけですよ(笑)。
だけど、私たちには子どもがいないので、早めに身の振り方、つまりどうすれば周りの人に迷惑かけないで終活するかを考えないといけない。例えば、私が先に死んじゃった場合に彼がその後も1人でいられるようなタイプの施設に行かないといけないんです。そのためには元気なうちに早めに動かないと、と思ってカタログを取り寄せたり、私は準備をし始めているんです。
そんな話になったとたん、先ほどの発言が出たんです。
私は怒りを通り越して悲しくなりました。
「あなたは死ぬ気なの? じゃあ、私はどうなるの? あなたが死ぬということは、私1人を置いてくってこと?」
怒りを通し越して悲しくて傷ついて。それが分からない夫に失望×1000万倍
そこで、私は別れたくなっちゃうわけです。
だって私がその言葉を聞いて傷つくとこともわからないわけですから。いつ死んでもいいなら、私と夫婦でいる意味は何? と思っちゃう。それなら別れて、いろいろなところへ一緒に出かけられるパートナーを探したい! と思っちゃうんです。還暦を迎える前ならまだ間に合うんじゃないか、とね。
彼だって50代のうちに、若い方と結婚した方が幸せじゃないですか。さっさと1人で死のうとしてる人とこれからも一緒にいるなんて耐えられません!
それで喧嘩になりました。
「それならもう別れたほうがいいんじゃない? 今なら、お互い他に出会いがあるかもしれないし」と言ったら彼はこう言いました。
「老後なんてなくていい」。これ重要です! どういうことでしょうか(怒)!
私は言い返しました。
「は? 老後はあるよ? 普通にこれから来るよ。いや、すでにもう老後かもしれないよ」
彼は今はまだ58歳だけど、昔ならもう50過ぎたら老後と言ってもいい年齢で(笑)。でも、現実から逃げているというか、老後のことを具体的に考えたくないんですよね。
そこで私は思いました。亡くなったお義父さんに似てきたなあ、と。お義父さんもある時から、死にたいと言ってはお義母さんを困らせていました。男の人が全員、老後について現実的に考えるのが苦手というわけではないでしょうが、お義父さんと太田を見ていると、本当に親子だなあとちょっと呆れてしまいます。
いちばん記憶に残っているのは、ことあるごとに「死にたい」と言っていた義父に義母が放った強烈なひと言! もうあれは・・・今でも忘れられません。
次回は・・・親の老後の景色が自分たちと重なる時、お義父さんに言い放ったお義母さんの「それな!」発言とは?
そして“母の老いを認められない息子の不思議”についてです。
撮影/河内 彩 ヘア・メーク/清水寛之 取材/柏崎恵理