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丸岡いずみさん(52)うつを経て「ネガティブなことも含めすべての経験が新たな始まりへと繫がる」

〝うつ〟を発症して引き起こされる不安や恐怖を伴う様々な症状。しかし、どんな症状よりも苦しいのは「理解されない」こと。正しく理解されていない実情に対し、苦しみの体験をもって、病いに関する知識や意識を高めたい。そう願う女性たちが、自身のSTORYを語ります。

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丸岡いずみさん 52歳・東京都在住
フリーキャスター

ネガティブなことも含めすべての経験が
新たな始まりへと繫がる

’11年、休養のため実家に帰省し、精神科を受診しました。そのとき、医師から告げられたのは、「適応障害」という病名でした…そう語るのはフリーキャスターの丸岡いずみさん。発病のきっかけ、それは取材に奔走する間に抱えた尋常ではないストレスでした。

’10年、夕方のニュース番組『news every.』のキャスターに就任した翌年。大きな出来事が立て続けに起こりました。2月のニュージーランド大地震、そして3月には東日本大震災が発生。震災翌日、車で16時間かけて岩手に入った丸岡さんは2週間の滞在期間中、休む暇なく取材と中継。状況に変化があれば、別の地域へ移動し再び取材と中継。

そんな毎日を繰り返す中、ふと気づくと頭皮に大量の湿疹が。「あまり入浴できないことと、粉塵が原因だろうと自己判断し、そのまま仕事を続けていました。誰もがみな同じ状況なのだからと、体の異変に耳を貸さず、色々な理由をつけて自分自身を納得させていたんです」。

東日本大震災の報道も落ち着かない中、4月末にはウイリアム王子の結婚式を取材するためロンドンへ。「被災地の惨状を目の当たりにした後、英国王室の御成婚を日本に伝えるという仕事のギャップに戸惑いつつも、やるしかないと気持ちを奮い立たせ現地へ入りました」。

気力はあるのに、下痢などの体から発せられる悲鳴。しかし、帰国後も再び東京と被災地を往復する日々。そんな中、とうとう丸岡さんの体が限界に達します。

「8月末、真夏の暑い日にも関わらず寒くて、カイロを体中に何枚も貼り付けながら中継に臨みました。同時に脳にも疲れを感じ言葉がスラスラ出ない感覚に。ようやく『おかしい』と認識したんです」。

日本テレビ入社後、報道記者時代に大学院で心理学を学んでいた丸岡さんは、単なる疲れではなく精神的な病気ではないかと考え上司に相談。翌日から2週間の夏休みを取ることに。「すぐに実家に戻り、親類が勤務する病院へ入院。そこで別病院の精神科を紹介され、下された診断が『適応障害』でした。ただ、今まで薬とは無縁の生活を送っていたので、処方された薬を飲むことに正直抵抗が…そこで服用せず、大学院で学んだ認知行動療法で治そうと考えたんです。でも、私の病状は薬を服用しないことで、逆に悪化してしまったんです」。

そんな状態に追い討ちをかけるように、世間では様々な憶測が広がっていきます。周辺は記者たちで騒がしくなり、丸岡さんの病状はさらに悪化。うつ病を発症してしまいます。「もう長期休養するしかないと思い、上司と相談。番組の降板が発表されました」。

その後、通っていた精神科に入院し、服薬を開始。すると2週間で食欲が戻り眠れるように。状態が良くなっていることを丸岡さん自身も実感されたそう。

’12年に退社し、フリーキャスターとしての活動を開始。最初に取り組んだこと、それは「うつ」への正しい理解を広めていく活動でした。「実際に自分が患ってわかったこと。それは病気に対する誤解や偏見。『元気な丸岡が、そんな病気に?』…正しい理解がされておらず、心の弱い人がなる病いという誤解から、悪気なく発せられる言葉に苦しんだりもしました。自分が経験してわかったことは、条件が揃ってしまったら誰でもなるものだということでした」。

’14年にはメンタルケアカウンセラーの資格を取得。その後は講演活動や本の出版などで積極的に自身の体験を発信する中、丸岡さんに松実高等学園顧問就任の依頼が。「先生方が私の本を読んでくださっていたんです。大学院で学んだ教育心理や、何より自分が経験したうつ病からの克服体験などを生徒や保護者に伝えてほしいということでした。ネガティブなことも含めたすべての経験が、新たな始まりに繋がる。意味のない経験なんてないんですよね」。

「父がくれた『休むことは生きること』という言葉。走っている、休んでいる自分、トータルで人生ということを教えてくれました。暗くて長いトンネルを超えた〝うつヌケ〟の先に見えてきたものは、それは病いを克服した自分だからできる新たな分野への扉でした」

<編集後記>誰もがなりうる病いだからこそ、大切なのは「正しい理解」 快活で元気! お会いして感じた印象で、正直、そんな方がうつ病に?と私も感じました。丸岡さんが語る病いに対する誤解を私も持っていたことに気づかされました。当時、病いのことを語るのは勇気のいることだったのでは。しかし、その行動で、多くの人がこの病気を理解し、当事者の方たちも治療に向かいやすくなるのではと感じました。(ライター 上原亜希子)

撮影/BOCO 取材/上原亜希子 ※情報は2024年7月号掲載時のものです。

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