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うつを克服した女子バレー元日本代表・大山加奈さん「トップアスリートだって弱さを持っています」

〝うつ〟を発症して引き起こされる不安や恐怖を伴う様々な症状。しかし、どんな症状よりも苦しいのは「理解されない」こと。正しく理解されていない実情に対し、苦しみの体験をもって、病いに関する知識や意識を高めたい。そう願う女性たちが、自身のSTORYを語ります。

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大山加奈さん 39歳・東京都在住
元女子バレーボール日本代表

トップアスリートも弱さを持っている。
夢や努力と同じくらい
心の健康も重要です

バレーボール界で日本を代表するプレーヤーとして長年活躍した大山加奈さん。引退後に自身がうつ病を患っていたことを公表しました。「練習で疲れているはずなのに眠れない。動悸や目眩がすることもあり、特に人前に出たときや日常生活で異変を感じました」。

しかし、家族やチーム、友人などに相談することはできなかったそう。心配をかけたくないという理由以外にも、アスリート特有の事情がありました。「口に出すことで自分は弱いと認めてしまう気がして。現役時代はどんどんアピールをして代表に選んでもらう立場。自分のウイークポイントを曝け出すことはできませんでした」。

日本一も経験し、世間から注目されていた大山さん。選手として恵まれているのに、こんな弱音を口にするなんて贅沢だという思いもあったと言います。

そんな中、多くのトップアスリートを診ているナショナルトレーニングセンターのドクターに症状を話したところ、「同じ症状で悩んでいるアスリートはたくさんいるよ」という言葉で救われたそう。それから薬を処方され、徐々に症状は良くなっていきました。

その頃大山さんは腰の手術を決意。体の痛みから解放され、第2のバレーボール人生を邁進しようと前向きに過ごしていました。しかし、また腰を痛めたり、術前のプレーの感覚が戻らないことで心が折れてしまいます。「手術をして明るい未来しか見えていなかった分、がくっと落ち込んでしまいました」。

その頃から競技生活のピリオドを考え始め、惜しまれつつ26歳で引退しました。

引退後は、妊娠を考えるようになったことで少しずつ薬を減らそうと決意。もう一つ克服のきっかけになったのは愛犬の存在でした。「犬がいることで癒されて、くよくよすることがなくなり、夜も眠れるようになりました。何よりも、100%自分を信頼してくれる、自分のことを無条件に必要としてくれる存在ができたことが大きかったですね」。

自身のうつ病発症のきっかけの一つに、「自分は必要とされていない存在なのでは」という思い込みがあったのではと振り返ります。「代表入りするようになると自分のダメなところを指摘されることが増えて。日々ポジション争いや後輩に追い抜かされることで、自分は必要とされていないんだと思うことがありました」。

これからの子どもたちの健全なスポーツ環境のためにも、大山さんは自身の経験を発信していきます。「夢を持つこと、努力をすること、上を目指すことも大切です。でも何より、健康でいること。そして結果がどうであれ、そのままのあなたでも必要としてくれる人はいるということを分かってほしいですね」。

「パワフルカナ」の愛称で親しまれ、日本を代表するプレーヤーとして活躍。現在は解説や講演など多方面で活動中。

<編集後記>アスリートは強くて当たり前という先入観はキケン! 世界のトップアスリートが、メンタルヘルスについて公表することが増えています。アスリートにもそれぞれ個性があり、心も体もギリギリのところでパフォーマンスをしているんだと痛感。取材中の大山さんは、とても力強いスパイクを打っていたとは思えないほど優しい方で、カメラマンとうっとりしてしまいました(笑)。(ライター 星 花絵)

撮影/星 花絵 取材/秋元恵美 ※情報は2024年7月号掲載時のものです。

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