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上野眞奈美さん「スキー競技初の”ママアスリート”としての苦しい経験をいま、後輩たちのサポートに生かして」

鍛え上げた体力や練習を重ねて培われた技術を駆使して、競技に臨む女性アスリートたち。ちょっと前までは根性論がまかり通り、女性の体についても非科学的な認識しかなかった――そんな場所で活動している選手たちをサポートする方々を取材してきました。

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上野眞奈美さん(38歳・長野県在住)
フリースタイルスキー・ハーフパイプ競技オリンピアン、一般社団法人「MAN」理事

スキー競技初の“ママアスリート”
としての苦しい経験から、
後輩たちのサポートへロールモデルと
なり続けることも自分の役割

「できれば子どもはたくさん欲しい」。

ライフプランを考え、’10年バンクーバー五輪を最後に引退しようと決めていた上野眞奈美さん。しかし、スキーハーフパイプがバンクーバー五輪では正式種目として採用されず、’09年世界選手権出場後に引退。翌年のバンクーバー五輪は、生後2カ月の長女と実母を連れて現地観戦しました。

「やっぱりオリンピックはすごい、復帰するならオリンピックしかないと思いました。もちろん“するわけない”が前提でしたが(笑)」。ところが翌’11年、次のソチ五輪で正式種目になる可能性が高まり、悩みが現実のものとなります。子どもは1歳、復帰するのかしないのか。出した答えは復帰、そして五輪への挑戦でした。

「チャレンジしたい気持ちは1%だったかもしれない。でも1%あるのにやらなければ、いつか娘が夢を持ったときに、全力で頑張りなさいって言えない気がしたんです」。

子どもの存在が、驚くほど頑張る原動力になった一方で、上野さんはスキー競技初のママアスリート。前例もなければ、不安や悩みを相談できる場所もありませんでした。「育児自体の不安に加えて、出産後の体のこと、競技との両立、遠征の時、子どもはどうしているかなど、とにかくわからないことだらけ。コーチだった夫には言いづらいことも多いし、相談する人がいないことが本当に苦しかった」。

当時上野さんは、国立スポーツ科学センターが文部科学省(現在のスポーツ庁)から受託し行っていた「女性特有の課題に対応した支援プログラム」のサポートを受けていたことから、五輪後、自分と同じような境遇の女性アスリートのための情報交換できる場、“ママアスリートネットワーク”をプロジェクトとしてスタート。受託事業としての契約終了を機に、クレー射撃の中山由起枝さん、カーリングの本橋麻里さんと共に、一般社団法人MAN(マン)を設立し、同事業を継続しています。

「ロールモデルが増えてきたことで、女性アスリートは、出産後も継続するという選択肢を少しずつ持てるようになり、悩みができたときは、ようやく前例からアドバイスをもらえるようになってきたかなと感じます」

相談できる組織を確立するだけではなく、自身もいちロールモデルであり続けることが使命だと思っていると上野さんは話します。「アスリートができることは、大会に出て感動を伝えるだけではありません。むしろ、そこから先が世の中に還元できる時間です。誰のためでもなく、全部自分らしく生きるためにやっていることですが、私が走り続けることで、後輩の活力になれたら嬉しい! 支えになれるなら、最高にハッピーです」。

  • 長野県野沢温泉村を拠点として、スポーツ用品販売等を行いながらアスリート支援についても尽力する上野さん。
  • 一般社団法人MANでは、寄せられた相談に応えるほか、講演も行う。
  • 上野さんは日本代表選手として、コーチだったご主人と娘さんと一緒にソチ五輪へ。
  • 遠征先で寂しくなった時は、保育士の友人が作ってくれたアルバムや、娘さんからの手紙を見ていたそう。
  • ’14年ソチ五輪、フリースタイルスキー・ハーフパイプ競技での上野さんの滑り。

「昔はインスタグラムのようなSNSもなかったため、お手本となる誰かと簡単に繋がることができず、私は〝経験するしかないんだ〟と悟りました(笑)」

<編集後記>背中で語る上野さんはめちゃくちゃカッコいい! 「将来娘に〝なんでママやらなかったの?〟って言われたら最悪(笑)。その時自分に言い訳したくなかった」と五輪を目指すため復帰した心境を語ってくれた上野さん。そんな上野さんの挑戦を見続けた娘さんは、現在中1になり、スキーを頑張っているのだそう。子どもに背中で語る姿はカッコよく、同じ母として考えさせられました(ライター・篠原亜由美)

撮影/西 あかり 取材/篠原亜由美 ※情報は2023年3月号掲載時のものです。

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