◇ “シングル道を貫く山口さんが演じたのは、無職で不倫中というクズ夫の妻
「自分の中に、“結婚する”というイメージが全くないんです」。
現在、44歳。一人で生きる自由を選びとり、“シングル道”を貫く山口紗弥加さん。 そんな山口さんが、テレ東秋ドラマ『私の死体を探してください』で演じるのが、無職で不倫中というクズ夫の妻役。しかも、不倫の相手は作家である自身の担当編集者という最悪の状況。
「役柄の中で、頭の中にすらない”未知”を体験できるのが楽しくて。 もう、毎日がエンターテイメント! そんな撮影現場でした。夫婦といえど他人ですから、互いに全てを理解することは難しいでしょうし、関係が深まるほど傷つくこともありますよね。 私が演じた麻美の恐ろしさは、傷つけられてもなお、不倫夫の存在をモチベーションにしながら小説を書き続けていたこと。 夫婦となると、きっと色々あるのだと想像しますが、日々の暮らしの中でちょっとした意地悪を夫にしかけて、ゲーム感覚でストレスを解消することは可能かもしれない、と麻美から学びました(笑)。伊藤淳史さんが演じられるクズ夫には、どうしたって素のイイ人感が滲み出ていて、それだけにジワジワと追い詰めるのがつい楽しくなっちゃって……。日頃、思うところがある奥様たちには、きっとこのドラマを観てスカッとしていただけ る部分があると思います(笑)」
◇ 30年女優を続けていても、初めての本読みは恐怖を感じるほど孤独です
麻美、夫の正隆の不倫相手の編集者・沙織、それに義母……、 このドラマの登場人物は皆、その行動の端々にどこか孤独感が漂う。 シングルであろうと、結婚して妻や夫がいようとも、人にはそれぞれ請け負うべき孤独がある。
「私が、孤独を感じるのは、台本を読んでいるとき。 人前で恥をかくことなんて、年齢を重ねるにつれ、もう当たり前のことと考えられる ようになったけれど、スタッフ、キャストが一堂に会する初めての本読みなんて、 緊張というより恐怖です。 気が遠くなって、ひらがなすら読めなくなります(笑)。どう演じたら面白くなるんだろう……役と向き合っているときは、孤独ですね。経験を重ねたところで正解はなくて、毎回、オーディションみたいで……。 すべてが一期一会だから、一作品ごとに真価が問われる。 だから、すごくドキドキして……」
38歳で初めて連続ドラマで主演を射止め、名バイプレイヤーとしてオファーが絶えないのは、その孤独と戦った末に見せる一作ごとのみずみずしさからかもしれない。
◇ ソロTIMEは、水陸両用の服で思う存分汗をかいて知らない道を走り続けます
「一方で、私生活では不思議と孤独だな、と感じることはないんです。 私という人間は“好奇心”で構成されていて、むしろ他の要素が思い当たらないほどに単純、単細胞。信頼するスタイリストさんに、『山口さんは、きっとバイタリティばばぁ になるよ』と言われるけれど、その言葉、私にとっては最高の誉め言葉なんですね。だって、将来は生命力に溢れるおばあちゃんになって、人生を最後まで楽しみたいから。
最近は自転車にハマっていて、時間を見つけては好奇心にまかせ、知らない道を走っています。 それが、もう楽しくて。 水陸両用の服を着ているから、どれだけ汗をかいても大丈夫(笑)。 汗でずぶ濡れになったって不快感はありません。 もしかしたら、その様子を見て不快に思われる方がいらっしゃるかもしれないけれど……。 一人スプラッシュマウンテン状態で爽快です(笑)。 人体って上手くできていて、心のモヤモヤは全部汗で浄化されるみたい。 自転車で走った後は、心配事はどこへやら、ヘトヘトになってぐっすり眠れます。朝には心身ともに回復して、新しい考えが生まれることも。 10代、20代、30代、たくさん悩んでもがき続けてきたはずなのに、今はもうそれも思い出せません。多分、今悩んでいることすら、きっとまた忘れちゃう。 だから、心にあるものをいったん横に置いて、そのとき興味のあることをやってみる。 そうしたら、いつのまにか「何を悩んでたんだっけ……?」なんて忘れちゃうから。
私の場合、夢中になりすぎて、1日中スマホを開かないこともしばしば。 それで、友人に「何で連絡くれないの!?」なんて怒られちゃうことも……。 でも、自分の時間を邪魔されたくない(笑)。好きなことに存分に時間を割き、没入して楽しむ自由、それを手にできる“シングル”という生き方が、今の私には合っているのかもしれません」
ドラマ「私の死体を探してください。」
テレビ東京 毎週火曜 深夜24時30分~放送中
note主催、『創作大賞2023』テレビ東京映像化賞・光文社文芸編集部賞W受賞作品。原作 星月 渉の同名小説を実写ドラマ化。
ベストセラー作家・森林麻美(山口紗弥加)は、自身のブログに自殺をほのめかす投稿をして消息不明となる。 しかし、ブログの更新は止まらず次々と麻美を取り巻く関係者たちの秘密が暴露されていく…。
撮影/沼尾翔平 取材・文/河合由樹