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とよた真帆さん(57)夫のがん告知から1年。早すぎる別れ…。その後、彼女が受け継いだ使命とは?

どんなに仲のいい夫婦でも、一緒に死ぬことはできません。いずれ、どちらかが先立ち、どちらかが残されるのです。そのとき、悲しみや寂しさの中からどう立ち上がるのか……今回は、ご経験された方々にお話をうかがいました。すると、伴侶からのバトンを受け取って、前に進み続ける妻たちの姿が見えてきたのです。

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とよた真帆さん 俳優
57歳・東京都在住

着用のトップス、パンツはとよたさんのデザイン。「モノを作り出すことも好き。Tシャツには私が描いた絵柄を使いました」ともにロエルベ(QVC Japan)

立ち止まらずに前に進み続ける
夫の未来を遺したかったから

映画監督だった夫・青山真治さんとの出会いは映画『月の砂漠』の衣装合わせ。優しい第一印象で、真摯に作品に取り組む姿や魅力溢れる人間性への思いが、尊敬を超えて愛情に変わるまで時間はかからなかったそう。性格は違えど心の奥底で惹かれ合う二人。「夫は自分を削っていくタイプの芸術家。命がけの人でしたね。結婚してからはもう少し軽く考えればいいのに……と思ったほど」。

’21年春、青山さんに食道がんが見つかります。「やっぱり……そう思いました。実はその3年前に夫は心臓を悪くして緊急入院、予断を許さない状況で1カ月以上ICUに入っていたのです。いまにも息絶えそうに苦しそうで、死を覚悟したほど。奇跡的に寛解し、健康的な生活を送ったのも束の間、お酒もタバコも元の生活以上に。二言めには『死んじゃうよ』と言っていたかな。歯がゆいけれど、人を変えることはできない、ゆっくり達観していくような時間を過ごす中でのがん告知でした」。

化学療法が効き、声帯を温存した手術が成功してすぐ、がんが暴れ出す。数箇所に転移し、そこからは瞬く間に……。「辛くても夫は弱音を吐かなかったですね。自宅でともに過ごす時間、〝普通〟でいること、ポーカーフェイスを保つことが苦しかったです。不安な気持ちは仕事で埋めました」。

告知から1年、早すぎる別れだった。「気心の知れたメンバーで夫の書斎を片付けるなか、65歳くらいまでの映画の作品化計画が出てきて……だったらお酒を控えればよかったのに……。でも、やりたいことが時代の流れでできないってことがあった。ならば残った私たちで、青山が遺したモノを作っていかなければと思ったのです」。

音楽活動をしていた仲間から青山さんの録音した音声などを得てCDの自主制作、青山さんの蔵書約2000冊の展示販売や、〝青山真治クロニクルズ〟出版、映画製作……。この3年間、多くの作品を世に出し、イベントを企画してきました。

「忙しい日々でした。進んでいく力で時間を埋めていくと、夫の死を悲しんでいる暇がなくて。自然に時間が経って3年、失った悲しみはあるけれど、当初の深い悲しみとは少し形が変わっているんです。これが私の癒し方だったんだな」。新たな青山さんのプロジェクトを控え、その表情は未来への希望に溢れていました。

<編集後記>希望に満ち溢れるとよたさん。そのパワーはどこから? 「体力おばけって言われるの」、朗らかに笑うとよたさん。多くの仕事を抱えながら、青山さんのプロジェクトも進めていく姿に圧倒されました。その原動力は……使命感なのでしょうか。次世代、その次の世代にも引き継げたらいいな……その言葉が印象的でした。そんなとよたさんだから、たくさんの仲間たちが集まってくるのでしょう!(ライター 竹永久美子)

撮影/吉澤健太 ヘア・メーク/奥川哲也 スタイリスト/青山真穂取材/竹永久美子 ※情報は2025年8月号掲載時のものです。

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