「私たちのCHALLENGE STORY」を担当しているライターの孫 理奈です。今月号のテーマは「病いと共に歩いていく」。まさに三男ケインが歩んだ人生、そして競泳の池江璃花子選手も白血病を公表したばかり……。誰もが「まさか自分が病気になるなんて」と思うでしょう。このまさかを受け入れ、病いと共に人生を歩いている方々に取材をさせていただきました。どんな状況も今まで通りにいかないのに、それを乗り越えて生きている方の姿には、「一生懸命生きる!」というメッセージが溢れていました。今日は私が青森で取材させていただいた「筋痛性脳脊髄炎/慢性症候群(ME/CFS)」と共に歩いている石川真紀さんについて書きたいと思います。
取材をした12月の青森は雪が降っていました。現在、CFS支援ネットワークの会長をしている石川さんが病を患ったのは10年前。この病気は全身を原因不明の激しい倦怠感、痛みに襲われ、微熱、頭痛などが長期にわたって続くため、日常生活が困難になる病気です。石川さんは現在、電動車いすでの生活を余儀なくされているので、雪の中、待ち合わせ場所までいらっしゃるのがどれだけ大変かが心配になりました。
石川さんは発症当時、東京で仕事をされていましたが、あるときを境に突然インフルエンザのような状態が続いたそう。診断される基準はその症状が半年継続することでした。半年経たないうちに駅までも歩くのさえ困難になり、職場も退職されました。「携帯電話の充電で例えると、以前100%だったエネルギーが今は5~10%に感じられるんです。だからそのエネルギーでできることを優先してやらないといけない」。テレビや音楽の音、生活音さえも辛く感じて、暗い無音の中で寝ているのが大半なのだそう。
この病気に罹患されている方は全国で約30万人もいると言われていますが、この病気を診断できる病院や医師が少ないのが現状です。病気の認知度が低いため正しく理解してもらえないケースも少なくなく、患者が社会的に孤立しているのが問題になっています。「全国に診断、診察できる病院が10カ所しかないので、各都道府県にひとつは診察拠点ができて欲しいです」と石川さんは言います。現在、石川さんも青森から大阪まで飛行機で通院しています。雪の中を電動車いすで移動するだけでも大変なのに、大阪まで何日もかけて通院するのは疲労面からも金銭面からも早急に解決してほしい問題です。
「啓発活動のイベントの度にもう静養に徹しようと思うのですが、今、辞めたらいけないという気持ちで続けています」と石川さん。私の息子の難病もまずはみんなに病気のことを知っていただくことからだと思っていました。「誰にでも起こり得る可能性がある病気」は決して他人事ではありません。皆さんにもこの病気を正しく理解してほしいと思います。行政とも相互理解が広まるよう、石川さんの活動をこれからも応援していきたいと思います!
撮影/BOCO