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ある‘無価値な’女の肖像 ── GUCCIが支援した映画『WANDA/ワンダ』

日々流れてくる、胸が張り裂けるようなニュース。つらく虚しいと同時に、なぜ?と理解に苦しむケースも多い。
これだけ熱中症が取り上げられているのに、結果自分が罪に問われることになるのに、どうして幼い子どもを放置して出かけてしまうのか。いつでも逃げ出せる状況にありながら、なぜ暴力をふるわれ続ける場所から逃げ出さず、むしろ自らそこに留まろうとするのか。
正しく理解することはできなくても、想像することはできる。そして思う、もしその人と同じ環境のもとに生まれ育っていたならば、自分も彼女/彼だったかもしれないと。

育児放棄、家事放棄のすえ夫に離婚訴訟をおこされたワンダは、審問に遅刻して出廷(頭にはカーラーを巻いたまま)、あっさり離婚と親権放棄を受け入れる。「だって私は何の役にも立たないから」。
無知無学、完全に欠落した自尊心。どこまでも受動的で無目的、空虚な人生を漂流する女性、ワンダ。
観客は、彼女の自堕落ですべての責任を放棄する生き方に、苛立ちを覚えるかもしれない。その愚かさに、どんだけ頭弱いの?と蔑みの目を向けるかもしれない。

酒をおごってもらうためなら誰にでもついていく。殴られても虐げられても別段抗わない。
彼女が一度だけ感情的になって自分の意思をみせるシーンは、悲しいほど滑稽だ。行きずりの男との逃避行で持ちかけられた銀行強盗の計画。道徳意識とか倫理感とかではなく、ただその仰せつかった任務に「そんな大役、自分には無理!」と狼狽える。その後の彼女の立ち回り、役割(=居場所)を与えられたものとして任務を遂行しようとする必死さも、もはや泣けてくるほど。

共感も同情もない、なんの感慨もない、ある‘無価値な’女の数日間。
そんな彼女を私は忘れることができない。この映画を「ただのバカな女の話」と無関心に片づけてしまうこと、それもひとつの思考停止で想像力の欠如なのだと思う。

これじゃダメなことはわかってる。でももう何からどう手をつければいいのかさっぱりわからない。そういう状況や心境だったら、きっと誰でも経験があるはず。それが果てしなく続くとしたら。
「社会」とは自分には関係のないところにあるもので、世界は結局どこまで行っても変わらない。無視され続け、片隅に追いやられてきた人々の、静かで深い絶望。
ワンダのように声を出せない人、そもそも声を出すという発想にすらたどりつかない人が、この同じ社会にいることを考える──。

1970年のヴェネツィア国際映画祭で最優秀外国映画賞を受賞、1971年のカンヌ国際映画祭で上映された唯一のアメリカ映画でありながら、本国ではほぼ黙殺されてきた『WANDA』。
フランスの大作家マルグリット・デュラスの「本作を公開するためなら何を差し出してもいい」という意思を引き継ぐようにして、2003年、大女優イザベル・ユペールが配給権を買い取りフランスで映画を甦らせます。
2007年に廃棄寸前だったオリジナルのネガ・フィルムが発見されると、マーティン・スコセッシ監督が設立した映画保存運営組織とGUCCIの支援によってプリントが修復。修復版はニューヨーク近代美術館で上映され大盛況。ついには2017年、「文化的、歴史的、または審美的に重要」と後世に残す価値がある映画として認められ、アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録されました。

監督・脚本・主演を務めたバーバラ・ローデンは乳がんにより48歳で病死、監督デビュー作にして長編遺作となってしまった『WANDA』。世界中から称賛される「忘れられた小さな傑作」を、スクリーンで目に焼きつけてほしい。この貴重な機会にぜひ!

 

『WANDA』
(1970年/アメリカ/103分)
7/9(土)~ シアター・イメージフォーラム(渋谷)ほか全国順次公開!

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