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ここは世界を学ぶ教室!「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」展

六本木ヒルズ森タワー53階の森美術館を教室に、「世界」と出会う楽しい授業に出席してきました♪
多角的な視点と多様な価値観だけでなく、背景にある文化や社会まで学ぶことができる現代アート。その入門編にもぴったりの展覧会です。

 

  • 米田知子「見えるものと見えないもののあいだ」シリーズ 展示風景
  • ミヤギフトシ 《オーシャン・ビュー・リゾート》2013年 展示風景
  • ワン・チンソン(王慶松)《フォロー・ミー》2003年 展示風景
  • イー・イラン《ダンシング・クイーン》2019年 展示風景

「国語」では言葉を扱ったさまざまな表現が。
米田知子《フロイトの眼鏡―ユングのテキストを見るⅡ》は、ユングによるリビドー論批判のテキストを、フロイトが実際に使っていた眼鏡を通して見た作品。かつての弟子が書いた自分への訣別ともいえる論文を、フロイトはどんな気持ちで読んだのでしょう。

映像作品も必見。
美しい旋律と映像で語られるミヤギフトシの作品は、作家の個人的な記憶がわたしの中にあるぼんやりした記憶と共鳴し、なんだか懐かしいような切ないような気持ちに。
消滅した言語をその音声記録とともに物語るスーザン・ヒラー《Lost and Found》もどこかノスタルジックで、奪われたり失われたりしてきた小さな言語や文化について考えさせられます。

  • 森村泰昌《肖像(双子)》1989年(左)、《モデルヌ・オランピア2018》2017-2018年(右) 展示風景
  • ディン・Q・レ《光と信念:ベトナム戦争の日々のスケッチ》2012年 展示風景
  • 青山悟「Glitter Pieces」シリーズ展示風景
  • 藤井光《帝国の教育制度》2016年 展示風景

歴史、地理、政治など、現代アートのテーマにつながる科目だらけの「社会」は作品も盛りだくさん。
自らを異物として西洋絵画に挿入し、固定観念に揺さぶりをかける森村泰昌。30年の時を経て同じ題材に取り組んだふたつの作品がこうして並ぶのは貴重な機会だそう。

ベトナム戦争の従軍画家へのインタビュー映像と当時のスケッチによるディン・Q・レのインスタレーション。戦いの合間の何気ない日常が描かれたスケッチは、わたしの知る戦争画とはずいぶん違う、のどかさを感じるもので。だからこそ沁み入るものがありました。

  • イー・イラン《TIKAR/MEJA(マット/テーブル)》 2022年 展示風景
  • ヴァンディー・ラッタナ「爆弾の池」シリーズ 展示風景
  • ジャカルタ・ウェイステッド・アーティスト《グラフィック・エクスチェンジ》2015年 展示風景
  • パーク・マッカーサー《無題》2014年(手前)、《約束の標識》2023年(奥) 展示風景

可愛い♡と声をあげたくなるカラフルなマレーシアのマットが並ぶ、イー・イランのコーナー。織り込まれたモチーフは“テーブル”、欧州各国の植民地となる前のマレーシアには存在しなかったもの。支配と搾取。生活様式の征服と受容・融合。その土地の歴史を知ることで見る角度が変化する作品です。

牧歌的な田園風景がひろがるヴァンディー・ラッタナの写真も、これがベトナム戦争の爆弾によってできた池だと知った後では、やはり風景の見え方が大きく変わってきます。

  • 奈良美智《Miss Moonlight》2020年 展示風景
  • 宮島達男《Innumerable Life/Buddha CCIↃↃ-01》2018年
  • 李禹煥(リ・ウファン)《関係項》1968/2019年(手前)、《対話》2017年(奥) 展示風景
  • アラヤー・ラートチャムルンスック《授業》2005年 展示風景

「哲学」(←日本の義務教育にも入れてほしい)は、すべてアジアの作家で構成。人の生死や世界の真理を探究し、答えのない問いに取り組み続ける哲学は、古くから芸術表現と深い関係にあります。
薄闇の中で発光するように輝く、目を閉じた少女。無垢なる祈りを感じさせる奈良美智《Miss Moonlight》は、正面のベンチに座って静かに見つめたい作品です。

アラヤー・ラートチャムルンスックの《授業》は、病院の遺体安置所で引き取り手のない遺体を「生徒」に、「死」についての講義を行う映像作品。これは再訪時にじっくり見直したい!

  • 杉本博司《数理模型022 回転楕円面を覆う一般化されたヘリコイド 曲面》2023年(手前)、「観念の形」シリーズ(壁面) 展示風景
  • 片山真妃《F3P4#3》2021年 展示風景
  • 片山真妃《F6P10》2023年 展示風景
  • 笹本晃《ドー・ナッツ・ダイアグラム》2018年 展示風景

人が最も美しいと感じる比率=黄金比をはじめ、「算数」も美や芸術との関係が濃い分野です。
難解な数式を立体として可視化した数理模型を、建築物のように撮影した杉本博司の写真作品。数式という、人の思考が関与しないものが生む造形美。(そして数学の美しさを語れることへの個人的な憧れ・・。)

ベン図の重なり部分に浮くドーナッツ、笹本晃の映像作品も気になるので次回!

  • 宮永愛子《Root of Steps》2023年 展示風景
  • ソピアップ・ピッチ《ラージ・シード》2015年(手前)、サム・フォールズ《無題》2021年(奥) 展示風景
  • 梅津庸一《黄昏の街》2019-20021年(手前)、ロデル・タパヤ《早起きは三文の徳》2012年(奥) 展示風景
  • MAMスクリーン

物理、化学、生物、地学と、宇宙から原子までのあらゆる自然科学が網羅されている「理科」。
ナフタリンの作品で知られる宮永愛子の新作は、六本木にゆかりのある人々が履いていた靴の彫刻。常温で気化するナフタリンはいずれ形をなくしてしまうけれど、消滅したわけではなくちゃんと存在はしていて、再結晶を起こすこともある物質。人の記憶も似たようなものかもしれません。

自然そのままの味わいが感じられるサム・フォールズの作品。その美しく繊細な質感を、ぜひ間近で。

「音楽」「体育」のクラスはMAMスクリーンでの映像上映。作品の一部は、来場者に限り会期中オンラインで鑑賞することができます。

  • ヤン・ヘギュ《熱帯低気圧の幻想的な縦糸・横糸──活発化する知識》2020/2023年《ソニック・ローテーティング》2023年(壁面)、《ソニック・ハイブリッド──デュアル・エナジー》2023年(立体) 展示風景
  • ヤコブ・キルケゴール《永遠の雲》2023年 展示風景
  • 高山明 展示風景
  • 展覧会 会場入り口

最後は「総合」。より幅広い領域を横断する、世界を総合的にとらえたセクションです。
ヤン・ヘギュの大型インスタレーションは、地球規模のエネルギー循環を意識させるダイナミックな作品。一室まるごと使っての展示は、まるで壮大な宇宙空間のよう。

膨大な情報を蓄える「クラウド」と自然の「雲」を重ね合わせたヤコブ・キルケゴールのサウンド&ビデオインスタレーションもどっぷり浸りたい空間。

展示の最後を飾るのは、マイノリティ側からこの街に重なる「世界」のレイヤーを見る演出家・高山明のプロジェクト。「世界の教室」を美術館から外の世界へとつなげます。

 

こうしてみると結局のところ、どの作品もひとつの教科では収まりきれないものばかり。学校の授業だって、すべての教科が関連をもちながら実生活とつながっているんですよね。(だからもっとちゃんと勉強しておけばよかったと、気づくのは大人になってから・・。)
ここで紹介したのはほんの一部、とにかくものすごいボリュームなので、時間はたっぷり余裕をもって行くのがオススメ!私も再訪して映像作品を中心にじっくり見直すつもりです。

【 展覧会情報 】
森美術館開館20周年記念展「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」
会期:開催中~2023.9.24
会場:森美術館
開館時間:10:00~22:00(火曜のみ 17:00 まで。ただし5/2、8/15は 22:00 まで。)※入館は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
問い合わせ先:050-5541-8600(ハローダイヤル)
※本展は事前予約制(日時指定券)を導入しています。詳細は公式サイトをご覧ください。

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