STORYwebでは【40代からがんを考える】をテーマに、大腸がん・乳がんとお伝えしてきましたが、今回は女性特有の「子宮頸がん」「子宮体がん」「卵巣がん」について、東邦大学医療センター 大橋病院 産婦人科教授・田中京子先生にお話を伺いました。
「子宮頸がん」「子宮体がん」は知っていても、「卵巣がん」についてはほとんど知らないという方も多いのではないでしょうか?
しかし、この「卵巣がん」…実は40代から急激に増えてくる、知らないと怖い「がん」の1つ。知識があれば、いざというとき少しでも早い発見につながるはずです!
★ 原因は複数あるが、妊娠・出産経験が少ない人はリスク有
★ 初期症状はほとんどなし、進行しても特徴的な症状がない!
★ 検診はなく、「がん」かどうかも手術後に判明
★ 予防するために、私たちができること
★ 田中先生からSTORY世代に向けてのメッセージ
「卵巣がん」ってこんな「がん」
子宮の両脇にある卵巣で発生する「がん」。罹患者は40代から増加していき、50代がピークとなります。
原因は複数あるが、妊娠・出産経験が少ない人はリスク有
「卵巣がん」は複数の要因が関与して発生すると言われています。遺伝的要因によるものは約10%で、そのほか子宮内膜症や糖尿病などの疾患も要因になり得ます。
また、排卵の回数が多いほど「卵巣がん」になりやすいと言われているため、妊娠や出産の経験が少ない人や、初経や早く閉経が遅い人はリスクが高くなります。
――排卵の回数が多いと、リスクが高くなるのですね。
初期症状はほとんどなし、進行しても特徴的な症状がない!
下腹部に違和感や、腹部膨満感、不正出血、便秘、頻尿、食欲不振などの症状が見られることもありますが、初期症状はほとんどありません。進行すると、「がん」が転移して腹部や胸に水がたまり腹部の張りや息切れなどの症状が出始め、この段階で初めて異常を自覚する場合も多くあります。
――下腹部に違和感があったとしても“最近ちょっと太ったかな?”ですませてしまいそうです。
検診はなく、「がん」かどうかも手術後に判明
「子宮頸がん」のように定期的に受けられる検診は、「卵巣がん」にはありません。心配なことがあれば、超音波・CT・MRI・血液検査など様々な検査で「がん」の可能性を探りますが、卵巣はお腹のなかに埋もれている臓器のため、「がん」かどうかは手術で腫瘍を摘出して組織を検査する必要があります。
――検診もないうえに、「がん」かどうかは手術をしてみなければわからないなんて、とてもやっかいな「がん」なのですね。
「がん」かどうかを判断するには、手術をしなければいけないということに加えて、徐々に良性から悪性へと進行するものもあれば、急激に進行するものもあるため、とにかく診断が難しいです。
毎年人間ドッグをかかさず、CTを全身撮っていた方で、1年前は何ともなかったのに1年後は「がん」があちこち転移していたということがありました。残念ながら、卵巣がんは転移があるⅢ期で見つかる方が約半数です。
――早期で発見される方は、ほぼゼロということでしょうか?
予防するために、私たちができること
バランスのよい食事や、適度な運動、過度の喫煙や飲酒に気を付けるなど、生活習慣を整えることが大切です。低用量ピルを飲むことで卵巣への負担を軽減することも予防になりますが、別の「がん」のリスクを高める可能性も考えられますので、医師と相談するようにしてください。
また、遺伝性の「がん」についての不安や心配があれば、「遺伝カウンセリング外来」がある大学病院などで相談してみるのもよいでしょう。
田中先生からSTORY世代に向けてのメッセージ
「『お腹が張るから』と内科に相談に行って、内科の先生がとったCTで「卵巣がん」が見つかることがあります。そのため、何か気になることがあれば婦人科ではなく、まずは内科で相談しても構いません。少しでも体に違和感をおぼえたら、とにかく早く受診することが大事です」
〇 お聞きしたのは… 田中京子先生
東邦大学医療センター 大橋病院 産婦人科教授
1994年慶應義塾大学医学部卒業後、慶應義塾大学病院産婦人科、国立病院機構埼玉病院産婦人科医長を経て2020年より現職。日本産科婦人科学会専門医、産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編、子宮頸癌治療ガイドライン第4版作成委員。
取材/篠原亜由美