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Lifestyleママとパパに贈る「ジェンダーレス学」

【上野千鶴子のジェンダーレス連載vol.2】「もはや結婚は『家族形成』をするためのもの。性的関係とは別です」

「結婚と家族」について②

Q.1回目では、「制度としての結婚とその変化」についてお聞きしましたが、では、これからの子どもたちが将来、「結婚すべきかどうか」を考えるときに、何を基準にすればいいのでしょうか。

基本は「家族形成」をしたいかどうか、です。
今となっては、結婚は「家族形成」以外、する動機がないから。
結婚相手はたったひとりですが、異性と性的関係を持つのは自由。セックスの相手は何人いたっていいのでは? と思います。だから、問題は「家族形成」をする気があるかということと、リアリズムとして「家族形成のコスト負担に耐えられるかどうか」です。
男性の結婚率は、はっきり所得とキレイに比例していて、単身で所得1000万円以上の男性でようやく少し婚姻率があがります。「家族形成コスト」を負担できる男しか、結婚ができなくなっています。

Qお金がある男の人しか結婚できないっていうことですか?

そのとおりです。
だからそれでも子どもに結婚をさせたいと思っているママやパパたちは、自分たちと同じように「家族形成」を子どもにしてほしいと思うかどうかです。結婚したら“こんなに得をして有利”ではなく、「私はこの家族を持つことで楽しかったよ」って、伝えられるかどうか。

Q家族を持つ幸せを子どもに伝えられるかどうか、ですね!

そうです。「私はこんなにいい家族を作ったのだから、あなたもコレを味わって」と思えるかどうか。
一方で、「私はもう散々懲りたから、あなたも結婚はやめたら」という思いを持つ人もいるかも知れませんね(笑)。
でも実は、離別家庭の子どもたちこそ家族幻想が強いというデータもあります。
“家族は良きもの”という考えが、蔓延していますよね。「家族」というのはポジティブな言葉で、ネガティブな意味では使ったりしない。だから、破綻した家族の中で生まれ育った子どもたちは、どこかに自分が知らない本物の家族の姿があるに違いない、という妄想から逃げられなかったりします。

Q.「理想的な家族」を考えてしまうってことですか?

理想とか妄想ですね。みんなのなかに「家族とはそういうものだ」という刷り込みがあります。破綻した家で過ごしてきた子どもが、家族の理想を探して、むしろ早く結婚する場合もあります。「お母さんは失敗したけど私は決して失敗しない!」って。家族幻想は、そこらへんに溢れていますからね。
私たちジェンダー研究者が何をやってきたのかというと、「家族」という蓋をこじ開けてみたんです。そしたら、ボロがいっぱい出てきました(笑)。それでDV防止法とかを作ってきましたが、その結果、私たちが何と言われたかというと、「家族破壊者」……(笑)。
壊したのは私たちじゃないのに。とっくに壊れてたのを世に公表しただけなんですよ(笑)。
本来、結婚だって、家族だって、親が“自分がやってきて良かった。幸せだった。だからあなたにも味わってほしい”というのが基本ですよね。
でも昔の親は、自分が不幸でも子どもに結婚させようとした。それは何故なのかわかりますか?

その時代は、それしか生きる道がなかったからです。

Q.それは親が子どもに自分の面倒を見てほしいから?

もちろんそういったエゴイズムはあります。ですので、特に娘の場合は、結婚はさせても自分のそばから手放しません。もちろん県外にも出しません。女の選択肢が物凄く少ない時代に「お母さん、こんなに不幸なのに私にも結婚を勧めるの?」って言いたくなりますが、それ以外の選択肢がなかったんです。

Q今、結婚自体も選択肢が広がったので、子どもたちはいろんな形を取れるようになったと思いますか?

前回、結婚制度は「生活保障財」と言いました。ですが「生活保障財」と「贅沢品」は違います。「生活保障財」を「生活必需品」として置き換えるなら、「生活必需品」と「贅沢品」です。
「生活必需品」のトイレットペーパーがなければ新聞紙でも使うしかなく、粗悪品でも選ばないわけにはいかない。昔の女性たちは「生活必需品」を求めて、結婚しない選択肢はなかったのですが、今の女性たちは「贅沢品も」という他の選択肢がある。自分たちの今の現状に、プラスアルファの付加価値がないと結婚しません。
社会学者の山田昌弘さんが『結婚の社会学』で語っていたのは、“親が与えてくれた生活”以上でないと、結婚しないということです。

Q自分の生活レベル以上でないと結婚しないということですか?

日本は諸外国とは違って、低経済階層の男女が2人で助けあえば暮らしやすい、という理由で結婚する割合が上がらないんです。
非正規雇用で貧しい男女が助けあって支えあって結婚……、とはならないんです。
あと、上記『結婚の社会学』で出てきた非婚者データで、もうひとつ面白いのは「結婚観」。
保守的な結婚観を持つ男女ほど、結婚確率が低いというデータがあるんです。

Q.意外です。保守的なほうが低いんですか

そうです。“男は妻子を養わなければならない”という結婚観。女は“家事育児を全部自分が行わなければならない”という結婚観。こういう結婚観を持ってる男女ほど、より結婚確率が低いというデータがあります。

Q.古い! でも、そう言われてみると、わかりやすいですよね(笑)

わかりやすいですよね(笑)。

取材/東 理恵

上野千鶴子 1948年富山県生まれ。社会学者。京都大学大学院修了、東京大学名誉教授。東大退職後、現在、NPOウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長として活動中。2019年東大入学式での祝辞が大きな話題に。『おひとりさまの老後』や『在宅ひとり死のススメ』など著書多数。

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