第3回目は、思春期の子の「友達付き合い」に関する悩みを取り上げます。純粋に楽しいだけの友達関係から、心の成長とともに、友達関係が次第に複雑になり、悩みが増え始めるのが中学生。その世代の子を持つお母様からのお悩みです。
友達に依存し、優先しすぎる問題
尾木ママ’sAnswer
おそらくこのお子さんはスマホを持っていて、一日中、友達とつながっているんじゃないかしら。その疲れとストレスを態度に出してしまっているよう。グループからに外されないために「未読」や「既読スルー」にならないようにし、お風呂やトイレにも、スマホを手離さない。常に秒速返答して、SNSにもすかさずリアクションする――。緊張感やストレスから、いわゆる「LINE疲れ」や「SNS疲れ」に陥っている子は少なくありません。特に、女子校という環境がよりそうなりやすい要素が強いようです。私立だと地元の友達とのリアルな関わりが少ない分、学校内でのグループ作りが何よりも大切になってきますから、自分が置き去りになってしまわないように、とにかく友達関係を維持することに必死になるのです。24時間つながっていることで生活も乱れます。当然、朝寝坊もあるでしょう。そうするとお悩みにあるように、電車に乗り遅れて、いつものメンバーと一緒に行けなくなり、不安から半泣きになってしまうんですね。
思春期、自立のために必要なのは、ある意味で、親以上に友達です。思春期は、第二次性徴という体の変化に始まり、「自立したい」気持ちと「依存して安心したい」気持ちに揺れ動く時期で、心はとっても不安定。友達はそんな「宇宙」を一緒に遊泳する仲間なの。だから、思春期の友達は、特別な存在です。自立したい気持ちが強まる反面、友達への依存は高まっていくんですね。とは言え、このように、スマホを肌身離さず持っていて友達関係が全てとなってしまうのには注意が必要です。友達への依存よりむしろ、友達とつながっていないと不安になる「きずな依存」をスマホ、SNSが加速させている状況かも。こうなると、精神的にも不安定になるし、自分を客観的な立場に置くことができず、自立心も芽生えにくく、どうしても自立が遅れます。
実は、思春期の時期にこそ、一人になる時間が必要なのです。夜、寝る前の時間はスマホをリビングに置いて、見ない時間を作り、好きな本を読んだり、音楽を聴いたりする時間に充てる。本や音楽を通して、感傷的になって涙を流したり、元気付けられたり、一人でじっくり考えたり、自分を客観視したり。そういう時間を3日間でも味わうと、きっと良さを実感できるし、発見もありますよ。
「そんなことわかっているけどできない」なんて声も聞こえてきそうですが、このお子さんは現在中学2年生。これから先、受験や進路を決めるとても大切な時期に差し掛かるから、長い目で見ると、今から自分と向き合う時間を作ることはとても意義のあること。友達やスマホへの過度の依存は集中力や成績の低下にも直結しますからね。
「家での態度がひどい」のは、友達関係ですごく神経をすり減らしているから、その疲れを家で爆発させているのよね。ぶつけられる相手が家族しかいないのだから、そこは受けとめてあげてほしいですね。こういう時に上から押さえ込んで責め立てたり、スマホを禁止したりすると、子どもは家から飛び出すなどして親から完全に離れてしまうか、心を閉ざしてしまいかねません。だからと言って、親の価値観や判断を子どもに遠慮して伝えない、物分かり良すぎる親になるのはダメよ。広末涼子さんとの対談でも話したように、この時期は「親が壁」になることも大切。壁がないと反抗期は長引くのです。親の価値観や考えははっきりお子さんに表明し、さっと引く。いつまでも「ちゃんとわかったの?」なんて深追いはしない。家族にひどい態度をとったり、毒づいたとしても、一人になって考える時間があれば、「ちょっと言いすぎちゃったかな」とか「親の言うことも確かに間違いじゃないな」って冷静になれたりするものなの。でも友達と密接すぎると、愚痴を言い合って、そこで共感し合って補強し合ったりして、結局、自分を客観視できないままになってします。親が自分のために言ってくれているということにも気づけないのよね。ぜひ、お子さんの自立のためにもスマホを手離して、一人の時間を持つことをお子さんに提案してみてほしいですね。
親よりも友達関係を大事にするのは思春期の成長としては自然な流れ。そこは親も理解して、「常に友達より家族を優先しなさい」と強制するのではなく、「家族にとって、この特別な日は最優先にしよう」などと親子で話し合っておけばいい。その日に友達との約束が重なってしまっても、お子さんもそこはきちんと友達に「この日だけはごめん」って言いやすいわよね。
色々なご家庭がありますから、考え方は違います。友達との付き合い方、スマホに対する考え方、遊びに行く時のお小遣いの金額も。子どもはたとえそれが数人でも「みんなそうだから」と親を説得しようとします。そう言われると親も、自分の子どもだけが肩身の狭い思いをしたらかわいそうと思って譲ってしまう。子どもは親の弱いところを鋭く見抜くし、親の落とし方をわかっているのよ(笑)。家の方針として譲れない部分は決して譲らないこと。結果的にそれはわが子の人間形成にも関わってきますからね。友達関係を見守りつつも、お子さんに「自立」を促しながら、親はしっかりとした軸を持って壁になりたいですね。
取材/小仲志帆