進みつつあるジェンダーレス社会について、私たち親は、娘や息子たちにうまく説明できるだろうか? ジェンダー研究の第一人者に聞きます。
父親は子どもに捨てられる!?
Q.ちょっと話は変わるのですが……職業ではありませんが、子どもの学校のPTA活動を担っているのは、ほとんど母親たちです。平日に活動するからということで、当たり前に母親の仕事だと思われています。どう思われますか?
私はよく知らないので教えてください。PTAの会合って、平日のデイタイムにやるの?
Q.平日の午前中~昼間が多いです。例えば、子どもの授業に合わせてPTAが取材をして〈こんな出来事がありました〉とレポートを発行したり、ベルマークが付いたものを手作業で分類したり、今後の活動内容について話し合ったり……。都合のつく人が集まって取り組んでいます。
それは今どきの話とは思えませんが……。
その人たちの中で「ミーティングはアフターファイブにしましょう」ってことにはならないのですか? アフターファイブに活動するという発想がどうして出てこないんでしょう?
Q.本当ですよね……。でも夕方からというのは、やはり聞いたことはないです。
そうなると、PTAの活動ができるのは、仕事をしていない専業主婦か、東さんのような自由業に限定されますよね。そういう人たちが親たちの中で多数派なのですか?
女の人たちがもっとたくさん働いているような地域だったら、ありえないのではないでしょうか。
もしかしたら地域によるのかしら。
PTAの会長は男ですか? 女ですか?
Q.女性が多いような気がします。
昔のPTAは女が中心になって動くのに、会長は圧倒的に男が多かったようです。商店街の事業主とか士業の自営業者、大学教員など……。
女性が多数の集団に少数の男が入っていくと、職場における男女の垂直分業と同じようなことが起きていました。
それがも現在では変わってきて、実際に動く女性がPTAのリーダーシップを取るようになってきました。
Q.でも最近は、PTA活動に参加しようという男性も少しずつ増えてきました。
ある時期から男性の子育てへの参入が増えてきましたからね。男を立てる文化や、女同士のあいだに序列を持ち込みたくない集団の中では、少数派の男がトップになる垂直分業が起きてくる可能性はありますね。
PTA会長に女性が増えてきたのは最近の傾向だと思います。
予想ですが、おそらくPTA会長の女性比率のほうが、小学校の校長の女性比率より高いのではないでしょうか。最も変化しにくいのは、地元密着の自治会長などですね。
そもそも子どもの学校での生活やあり方に、男親が関わらなすぎです。
私はよく、10代までの子どもを持っている父親に聞きます。
「子どもの友達の名前を3人以上言えますか?」と。
お母さんはすらすらと言えるんだけど、父親は言えません。
やっとの思いで3人言えるぐらい。そんな状況です。
子どもの友達の名前を知っているというのは、子どもの生活にどのぐらい関わっているかという証です。もっと露骨にいえば、子どもに関心があるかどうか。
学齢期の子どもに男親が関与せず、PTAは母親任せにして、学校でどんなことをやってるかもわからないっていうのは大問題。
10代に入ると、進学や、いじめ、不登校など、子どもは決定的な選択に直面します。
それまでに信頼関係を築いておかないと、子どもはその年齢にはもう既に父親を相談相手だと思わなくなります。
Q.なるほど!
東さん。即座に「なるほど」って言うけどね、本当に悲惨な問題なのよ。
結果的に、将来、父親は子どもに捨てられる。親が要介護になったとき、母親の介護には愛情動機が含まれますが、父親の介護に愛情動機が含まれることはめったにありません。さっさと施設送りをされるでしょう。
子どもに関わってこなかった、子どもに関心を払ってこなかったツケは、必ず回ってきます。これ、必ず書いておいて!
取材/東 理恵