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Lifestyle男の子の育て方【令和男子のミライ地図を描こう】

【男の子の育て方 対談連載vol.16】「マウンティングしたがる息子」と「競争心のない息子」

男の子は自分と性別が違うからわからない……と感じているSTORYママに向けて、「男の子の教育で気をつけるべきことは何か」について、ともに2人の男児を育てている専門家が語り合います。

【男の育て方 対談連載vol.15】すね毛の処理は男子でも当たり前になっていく?

回転ずしの皿数でマウンティング

ライター東 最近、小6の息子のマウンティングが気になっています。
先日、息子を含めた小学高学年男子4人と回転寿司に行ったのですが、子どもたちは食べたお皿の多さを競い合っていて……。
「こっちはこんなに食べた」から始まり、そのうち、お皿の数をかせぐために、お寿司1貫のみのものを頼みだし、しまいにはスイーツやデザートの皿へ。
こんな小さなことで競い合うのかと。私の会計も困りましたけど。 

太田さん(以下敬称略) 視覚的にわかりやすいからでしょうね(笑)。
男の子は、給食でおかわりを競うとか、早食い競争をするといったことが多いですよね。やはり、ゲーム感覚なんでしょう。
おそらく、それを女の子がした場合は、周りからたしなめられるのではないでしょうか。女の子は、「みっともない」とまでは言われないにしても、「お行儀よくしなさい」というようなことで介入される傾向があるのかもしれません。
やはり男の子か女の子かで、周囲の大人の態度が違うような気がします。 

田中さん(以下敬称略) それはあると思いますね。
逆に言えば、男の子がたくさん食べているぶんには、〈喜ばしいことだから〉と受け入れてしまうところがあるのかもしれない。

太田 それが“微笑ましい風景”というようなイメージがあるから、クスっと笑っちゃう大人も多いのでしょう。
マウント合戦的な男の子の話、回転寿司の皿数を競うくらいであれば、別に悪いわけではないと思うのですけれども……。

田中 うちの子どもはまだ小さいので、お皿の枚数がスゴイということではなく、「生魚が食べられるのはすごい!」ということになってくるのですが、東さんが懸念されているのは、お皿の数でマウントを取るような子どもたちが、そのうち学歴や年収といったわかりやすいところで、「オレのほうがすごい!」という意識になってくるのではないか、ということですか?

東 そうなんです。最近、いろいろなところでマウントを取り出しているのです。
ゲームで「オレのほうがアイテム多い!」やら「オレは期間限定の衣装を持っている」だのと言いだしていて……。ずっと友達と張り合いっぱなしです。
〈いったいこれはどこまでいくのだろうか?〉〈将来、大丈夫か?〉と不安になってきます。
男の子はそんなものなんでしょうか?

田中 競争がクセになってきて、比較の中でしか自分の価値を確かめられないのだとしたら、僕はあまり良くはないだろうと思いますね。

東 田中さんのお子さんは、何か競い合ったりされますか?

田中 兄弟で、自分のほうが背が高いといって競い合うことはありますが、まだまだ小さな子どもの喧嘩ですよね。

編集者 実はこの連載でいちばんPV数が多かったのがvol.10の「競争社会が生みだしたセックスの数を誇りたがる男子たち」でした。ある程度、大きくなった時に、変なことで競い合うのが心配だと思っているママたちも多いのでしょう。

競争より防御線を張る子だっている

東 太田さんのご兄弟は中学生と小学生ですが、競い合うことはありませんか?

太田 それが、いわゆる“負けん気が強い”とは対極にある子どもたちなんです。それはひとつの個性なので、いいことだとは思うのですが……。
例えば、「友達がいい成績を残した」と聞いて、「すごいね~」と言うのですが、そのあと「僕も頑張る! 僕も負けない!」というふうにはならない。いつそういう発奮を言い出すのかな?と待っていたら、すごいねで終わっちゃって、あれ~? みたいな(笑)。
確かに私も競い合うことを子どもたちに刷り込んだ記憶はないのですが、それにしても今、高校受験が迫ってきて、私自身もざわざわしてきているんですよね。〈こんなに競争心がなくて大丈夫なのか?〉〈もう少し発奮してくれないかな〉と。
「平均点が取れているから大丈夫」と言っていても、そこにプラス1点、2点、増やそうとは思ってくれないような……。
競争に負けたくない、というより防御的なんです。競争する以前に「僕はできないからね」と、あらかじめ期待値を下げてきます。

東 もともと、ご長男はのんびりした性格だと聞きました。

太田 そうです。それは彼の長所だと思っています。
男の子の友だちだけでなく、女子の友達も多い。共通の推しアイドルについてガールズトークみたいに女友達と盛り上がって話したりもするみたいです。

田中 それでもやはり、受験となると心配ですか?

太田 「どこの高校に行きたい!」という願望があれば、発奮して〈より良い点数が取りたい!〉となるのでしょうが、そういう発想があまりない子なんですよね(笑)。

東 現状維持でいいのですかね?

太田 現状維持できるということは、いいことなんでしょうけど。
でも、やっぱり親のエゴが出てきますよね……。不安になってきてしまいます。〈もう少し取り組んだら、もっとできたはず〉と思ってしまう。受験はいろいろと心配で……。

東 今は高校だって、選べるところがたくさんあります。

太田 選択肢はたくさんありますし、私も受かったところに行けばいいと思っていますが、本当にのんびりした子なんです。
友達を素直に褒めるのはいいところだと思っているのですが、「よし、僕も頑張ってみよう」とはならない(笑)。

東 相手を尊重できるのはいいところだと思います。

太田 そのまま社会で、楽しく居場所を見つけてくれればいいのですが……。
競争に勝ち切ったような男の人が私の業界にはたくさんいますが、その方たちが人間として好ましいかといえば、必ずしもそうでもない人もいますからね。
〈発奮してくれないかな〉と思う時もありますが、〈勝てばいいというものでもないな〉と、私自身も揺れ動いています(笑)。
以前、私の著書『これからの男の子たちへ』に出てもらった清田隆之さんのエピソードで“サウナに長く入っていられるか競争”というのがありました。本当はしんどくなったからやめるのに、「オレ、飽きたからやめるわ」と言ってやめる、とか。競争には負けたくない、競争に負けてないことにするために違う競争軸を持ち込むという男たちの心理。
実際、男性の読者さんたちから、この点に関して「ある、ある!」という感想が多かったんです。
“カッコつけの負け”や“別の軸での競争”を認められるゆとりがあるといいですよね。「この競争では負けたけど、他の世界もあるしさ!」と思ってほしい。
「そこで負けたから何だっていうの?」と大人が声かけをしていければいい。
逆に言えば、「その競争で勝ったからといって何の意味があるの?」ということです。

 そう! 「何の得があるの?」と。

太田 それで、ふと競争を思いとどまってくれる瞬間があればいい。

田中 勝ち負け以外で自分の評価を高められるものがあればいいですね。自分が納得できるポイントのようなものが。
太田さんのお子さんの話も、競争心がないというより〈僕はここだ! ここに行くんだ!〉という「軸」がまだ見つかっていないだけなんだと思います。

太田 そうかもしれません。まだ見つけられていないのだ思います。それを、いつ、どうやって見つけられるかなんて、親が押し付けられるようなものではないですからね……。

田中 自分の居場所が見つけられれば、とおっしゃっていましたが、居場所が見つけられるようにうまくフォローしていってあげることができたらいいですよね。

太田 そうですよね。本当にそうだと思います。

取材/東 理恵

太田啓子
弁護士。中2と小5男児の母。離婚問題や相続問題、セクハラ・パワハラ事件などに多く関わる。数々の経験を基にした、ジェンダーにまつわるSNS投稿が反響を呼ぶ。昨年出版した『これからの男の子たちへ』が話題に。

田中俊之

社会学者。大妻女子大学人間関係学部准教授。専門は男性学。『男子が10代のうちに考えておきたいこと』など著書多数。男性学の視点から男女とも生きやすい世の中を研究。私生活では6歳と2歳男児の父。
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