更年期は主に45歳から55歳と言いますが、その期間も症状も千差万別。今回語ってくれたモデルの松本孝美さんは40代前半から55歳くらいまで、長く緩く更年期を感じたと言います。
◯ 松本孝美さん(57歳・モデル)
ばね指、むくみに悩んだ更年期
漢方と大豆イソフラボンサプリが支えに
漢方と大豆イソフラボンサプリが支えに
今思い返すと更年期の入口は40代前半でした。
まず1年ほど四十肩に悩まされ、片方の腕が上がりにくくなりました。次にあらわれたのは頻尿(*1)問題。お芝居や映画の途中でトイレに立つのが嫌で、好きだった舞台観劇や映画鑑賞に足が向かなくなりました。それが落ち着くと今度は足裏と脚がむくむようになり、かかとまで痛くなりました(*2)。
いっこうに回復の兆しがなく、何カ月も経ったころ、近所に、症状に合った漢方薬を煎じて1包ずつパウチにしてくださるところを発見。そこで調合していただいた漢方薬で劇的に改善したのが40代後半。
そして50代になったころに閉経を迎え、1年ほどはPMSの症状だけが残っていました。それが知らないうちに治まったころに、指に力が入らなくなりペットボトルのフタが開けられない状態に。手指のこわばり、いわゆる「ばね指」(*3)の症状も出ましたが、大豆イソフラボンサプリメントを飲み始めてからは指に力が入らないという症状は感じなくなりました。それが5年ほど前のことでした。
◇ 更年期キッカケで天気痛にも。40代からは変化と向き合うための「体調記録」をつけておくのがお勧めです
松本孝美さんは1980年代後半から1990年代前半は「CM女王」として各社のCMに引っ張りだこに。JJから始まり、STORYやHERSなどの光文社の雑誌でページを飾り、今も多くの女性誌や広告で現役モデルとして活躍していらっしゃいます。そんな松本さんが感じ始めた更年期症状は40代前半から。その不調は10年以上にわたって大きな波となり小さな波ともなり、揺らぎながら襲ってきたと言います。
更年期の症状を感じてから振り返ると、もともと30代のころから、春になると顔のむくみが激しく、写真を撮ると左右の顔が全然違ったこともありました。生来、体の中の水の巡りが滞るタイプだったことが更年期になってよりハッキリとした症状としてあらわれた気がします。
また春になると目がチカチカする違和感や天気痛、天気不調も強く感じるように。もしかしたら、免疫力も低下し、自分の体のウイークポイントが更年期を経てちょっと刺激されたのかもしれません。
今57歳。長く続いた揺らぎの時期、更年期は開けそうな感じなんですが、不調を抱えて感じるのは、定期的に婦人科検診に行っておけばよかったということ。生理自体は順調だったので、婦人科検診に全く行っていなかったんです。
生まれて初めて検診に行ったのが3年前、54歳のとき。野宮真貴さん、渡辺満里奈さんと一緒にやらせていただいている「『大人の女史会』にようこそ」という企画で血液検査を受けました。そこで発覚したのはエストロゲンがほぼゼロ、「砂漠のような状態」ということ。かなりショックでしたが、そのときに飲んでいる漢方の成分を先生にお伝えしたら、「これを飲んでいれば大丈夫なんじゃないでしょうか」とお墨付きをいただいてひと安心。
でもそこで感じたのはかかりつけの婦人科の必要性です。不調になってからではなく、普段からきちんと見ていただいていれば、不調に気づきやすくていいなと思いますし、心構えも整えられます。
今健康のために行っているのは月3回のピラティス、ウォーキングなどの適度な運動。もちろん筋肉量を増やすのも大切ですが、私にとっては気分転換や緑の中でリラックスという意味合いのほうが強いかな。
鬱蒼とした緑の中、しんと清らかな静寂を愉しむのも好きですが、都会の百貨店巡りも気分転換には欠かせません。最近のお気に入りは5年前から通っている、東上野にある「江戸からかみ東京松屋」さん(https://www.tokyomatsuya.co.jp)。1階は「江戸からかみステーショナリー」などのショップ、2階には「江戸からかみ」「手漉き和紙」のふすま紙展示パネル600種類をはじめ、江戸時代の伝統の襖、お茶室の太鼓襖、明かり障子などが展示・販売されていて、4階には庭園ホールがあり、全館で「江戸からかみ」の良さを堪能できるスペース。色も柄も溢れているのにとても落ち着く空間なのは、江戸からかみがすべて自然由来のものでできていて五感が喜び、呼吸がしやすいからかも。自然、天然という意味では森林浴が好きというところにつながるのかもしれません。
また、webやショップで器を見たり買ったりするのも趣味。自由が丘のIN MY BASKETさんやお酒の福光屋さんが扱う古い器が素敵なのでたまにお店をのぞいています。
そして推し活、といえるほどでもありませんが、大笑いしたいときは、綾小路きみまろさん、コロッケさん、清水ミチコさんなどのライブに同世代の友人と連れ立って行き、パワーチャージさせてもらっています。
◇ 加齢に抗わず、 自然体に。美容や健康管理、運動も趣味もゆるく楽しむのが50代以降を前向きに過ごすコツ
長く続いた更年期に揺らぎながらも、決定的なダメージが少なかったのは、しっかり自分の好きなものを楽しむことを忘れずにいられたからかもしれません。
自分の経験から思うのは、40代になったら体の変化を細かく記録しておくと良かったかなということ。子育てしていらっしゃると、忙しさに紛れて自分の不調を見過ごすこともあるかもしれませんが、体調の変化の記録をつけておくと自身の不調のサインにも気づきやすいし、婦人科の先生にも伝えやすい。先日も「大人の女史会」で「生理の終わり方もそれぞれ違うのに、なかなか女同士で話す機会もないよね」と話しました。
私は徐々に経血が少なくなって気づくと閉経だったタイプですが、大量に出血したり、急にパタンと終わる人もいる。本当に千差万別です。私は閉経に対しては特別な思いはなく、自分の体に「お疲れさん」と言いたい気持ちでしたね。卵巣、よくがんばりましたね、毎月毎月大変だったでしょう? みたいな(笑)。女性としての機能がひとつ終わることに寂しさを感じる方もいらっしゃるとは思いますが、考え方の角度を少し変えるだけで気持ちも体も楽になるんじゃないかなと感じます。
私は更年期も老化の予行練習みたいな感じと捉えています。指に力が入らなくなったり、物を落としたり、老眼になったりしてほこりが見えづらくなって、掃除が行き届かなくなったり。洋服も、今まで着られていたものが着られなくなってしまうんだなと思うと悲しいけれど、逆に軽くて動きやすいものにチャレンジしようという気持ちが湧いてきたり、新たな意欲新発見というイメージです。
私の愛読書、邱世賓さんの『天の力 地の力』の「春は食べるに追いつくダイエットなし」という章に、体型に似合った体重は「数字では表せない」、「人には各々の骨格、環境に似合った肉質、肉付きがあるんだよ。(中略)肉は骨に着せる服です」というくだりがあります。顔や体型の変化も骨に着せている肉が自分らしく変化してきたと思えばいい。
無理にアンチエイジングをがんばって年齢に抗わなくてもいい。私は今持っているものに工夫を施して、スタッズをつけたりしてリメイクしたりするのが好きなんですが、自分が持っている体も自分らしくリメイクして工夫していけば、60代以降も楽しく過ごせる気がします。
撮影/田頭拓人 ヘア・メーク/川村友子 取材/柏崎恵理 撮影協力/江戸からかみ東京松屋 ※情報は2023年5月号掲載時のものです。