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「小学生の子どもに対してペットのような子育ては、やめなあかん!」 ――プロ野球選手T-岡田も学んだ、83歳現役おばちゃん野球コーチINTERVIEW

STORYライターの東 理恵です。
私の子どもたち(双子)は、中学生になったというのに、全く自主的に動く気配がありません。
〈大丈夫か、この子たちは…〉
そんな不安を抱える日々を過ごしているときに、あるウワサを聞きました。

「スゴイ83歳のおばちゃんがおるで! 未だに現役で動き回る少年野球コーチなんやって。さらに、その野球チームに入ると小学生やのに、自分で何でもできるようになって、自立するチカラもつくらしいで…」

〈え~っ!? 83歳って、おばあちゃんやん。おばあちゃんが走り回ってるん?ウソやろ?〉
半信半疑でしたが、この目で確かめたいと思い、「実地調査に行ってきます!」と志願し、大阪府吹田市の「山田西リトルウルフ」の棚原安子さんを取材。

そこでは、「しっかり取りや~」「あっちいくで~」と叫ぶ威勢の良い声が響き渡り、“ピン”と背筋を伸ばして自らバットを振り、ノックをする83歳のバリバリ大阪おばちゃんがいました。子どもたちやボランティア指導の大人たちもみんな「監督」ではなく「おばちゃん!」と気さくに呼び、おじさん監督では決して教えることができない“自立指導のおばちゃん哲学”が広がっておりました!

詳細は本誌8月号JuniorSTORY「83歳、おばちゃん野球コーチの『生きるチカラの育て方』」(P.180~)をご覧いただきたいのですが、そこでは書ききれなかった“おばちゃんならでは哲学”があまりにも素敵で、カッコ良かったので、私だけ知っておくのはもったいなく、みなさんにも披露させていただきます。

棚原安子さん(83歳)
1940年大阪府生まれ。ソフトボール選手として実業団で活躍。4男1女の母。母親たちへの料理教室も開催。独自の指導哲学とお金をかけない運営が評判で、注目されている。

少年野球チーム「山田西リトルウルフ」
棚原安子さんが大阪府吹田市で夫の長一さんと立ち上げ、結成52年目を迎える。現在、年長~小6までおよそ120人。2016年には全国大会出場も果たし、数々の優勝経験を持つ。OBにはオリックス・バファローズのT-岡田選手も。

【棚原安子さんの指導】 ★ 小学生の頃だからこそ“自分のことは自分で”を教え込む
★ 目上に対しての、電話のかけ方マナーも教える野球チーム
★ 小4になったら度胸づけのために「大阪駅までひとりで行ってこい!」
編集後記

小学生の頃だからこそ“自分のことは自分で”を教え込む

私は単なる近所のおばちゃんやねん。でも近所のおばちゃんは周りの子どもたちにきっちり社会生活を教えてあげなあかん。
「自分でユニフォームを洗濯しろ」
「家の用事を何もせずにメシを食うな」
「水筒の水を親に入れてもらうな」
「自分の荷物は自分で持て」
小学生の頃から教えたら、そのうちそれが当たり前のことになる。そういう小さなことから始めて、自分で生き抜くチカラを自然と身につけられるようになるねん。
最近の親たちのように子どもの世話を何でもしてあげて、ペットを育てるように子育てをしていたら、そうはならへん。子どもをお殿様のように“どっかり”と座らせて生活をさせてしまったら、子どもだって“やってもらって当たり前”になる。
今の世の中、お母さんたちは仕事をして働いているのに、「夫が何もせえへん」と愚痴を言う。でもそれは夫から見れば“してくれて当たり前”やったから。そういう環境に育ったからや。
〈子どもにはそうなってほしくない〉と思っているのに、ペットのような子育てをしていたら、そら、そうなってしまうて。
お母さんたちは「やらすと面倒くさい」「私がやったほうが早いから」と言うんやけど、それは子育てとは違うねん。私は言うねん。
「面倒くさがられた子どもは災難やで、何にもできへん子になるで」と。
20歳を超えて、自分でさせようと思ったら至難の業やで。
今、巷の会社では、なんも気がつけへん20代の社会人が多く、かと言って怒ったら出社拒否されたりして困ってるとか。そんな世の中になってしもてる…。
私ら昔は、小さい頃から洗濯もしたし、ご飯も炊いた。「自分のことは自分でやれ、家の用事も先回りして考えてやれ」と言われていた時代やった。家の用事をしている子は、ぱぱっと気がついて先回りして考えてるねん。家で何にもしていない子は、何にも手を出さへん。自分のことじゃないと思ってるから。
先回りして考えられる子は、プラスアルファの発想や仕事ができるようになるんや。野球でも、会社に入っても役立つことや。

目上に対しての、電話のかけ方マナーも教える野球チーム

うちのチームに入ると、小3までは、金曜日に学校から帰宅して寝るまでに、私に電話をかけて練習の場所とスケジュールを聞きなさい、というのが鉄則や。その全部の電話に対応してスケジュールを教え、一緒に電話のかけ方のマナーも教えるねん。
目上の人に電話をかけた時は、先に電話を切らないこと。相手が電話を切ったことを確認してから切る。そして最後には必ず「ありがとうございました」とお礼の言葉を入れること。そういった礼儀をしっかり指導する。
これは親でなく、他人であり、おばちゃんコーチの私にしかできへんこと。昔、OBの子が言うてたわ。アルバイトの応募の電話をしたときに、きっちりと電話で応対して面接に入ったら「さっきの電話の主はホンマに君か?」と驚かれたんやて。もちろん採用やって。

小4になったら度胸づけのために「大阪駅までひとりで行ってこい!」

コロナ禍で2年ほどできていないんやけど、小4になった部員には「大阪駅までひとりで行って帰ってこい!」というのをやらせるねん。子どもたちは自信をつけて帰ってくるで。
これを初めたきっかけは、キャプテンで、ショートを守っていた子がサードにランナーがいると、必ずエラーをしてたんや。そこで「お前みたいな度胸ない子は、度胸づけに大阪駅までひとりで行ってこい! 宿題や」と言ったことから。そのあと、お母さんからはめっちゃ苦情の電話が入ったよ。
「おばちゃん、小学生に『大阪駅までひとりで行け』ってどういうことですか!」。私も譲らへんで。
「あの子はあんまり度胸ないからね、お母さんひとりで行かしてくださいよ」。すると、ある日、その子が練習に来ないんでお母さんに電話したところ、
「おばちゃん、それどころじゃないですよ! うちの子、昼からひとりで大阪駅に行こうとしてて、朝から胸がドキドキしていて練習どころじゃないです」。
でも、しばらくしてからその子が私のところに笑顔でやってきた。
「大阪駅行ってきたよ! お土産買うてきた!」と太鼓焼き10個を買ってきてくれてん。
その後、お母さんからも「ひとりでどこでも行けるようになりました」と。
嬉しかったわ! それ以降、小4になったら『大阪駅までひとりで行って帰ってこい』が始まった。
その子は今、四国で社会人になっているんやけど「あの出来事は僕にしたら大冒険やったんです。でも、あれをやり終えて僕は強くなって、おばちゃんには感謝してるんです」て言うてくれて。
やって良かったな、思うてる。今年から復活させたい。ホントは小1からさせたいんやけどなぁ。

編集後記

取材後、パワーをもらいました。おばちゃんと子どもたちに! 出張疲れが一気に吹き飛びました。撮影してくれたカメラマンの久保さんも「楽しかったですわ~! 元気もらいましたわ~」と目をキラキラさせて、それが写真にも反映され、素敵なお写真が撮れました。子どもたちの無邪気で純粋に野球を楽しんでいる姿、上手くなりたいという気持ちが目にも体にもみなぎっており、おばちゃんもそれに対して「きっちり教えるで~! しっかり取りや~! まだまだいけんで~!」のダブルパワー。私たちのハートに、がっちりガソリン注入、ハイオク満タン注いでくれました!

撮影/久保嘉範 取材/東 理恵

ライター・東 理恵 中1男女の双子の母。大阪在住時は放送作家、東京では某百貨店でPOSレジ業務勤務を経て、STORYライター歴6年目に突入。息子が今年の「WBC」以来、急に野球にハマり驚いた。私も元ソフトボール部、週末は親子でバッティングセンター通いの日々。
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