親が居心地のいい環境を作ったつもりでも、思春期の子どもには、そう思われないことだってあります。自立と非行のハザマにある家出について語っていただきました。―― 家出経験者のバービーさんと、家出~失踪の社会学研究者に聞きました。
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私たち親はどうすべきですか? やっぱり家出は防いだ方がいいですか?
<右>バービーさん
1984年北海道生まれ。2007年、お笑いコンビ「フォーリンラブ」を結成。コメンテーターや下着のプロデュースなど芸人の枠を超えて幅広く活動。YouTube「バービーちゃんねる」も好評配信中。
<左>中森弘樹先生
1985年生まれ。立教大学文学部21世紀社会デザイン研究科准教授。著書『失踪の社会学』では様々な視点から失踪を紐解く。近著に『「死にたい」とつぶやく座間9人殺害事件と親密圏の社会学』。
中森先生(以下敬称略)
バービーさん、数多くの家出をご経験済みだとか?
バービーさん(以下敬称略)
中学時代ですね。家出チャレンジと題し、夜中に家を抜け出したり、下校をわざと遅くしたり。〈帰宅が遅い〉と車で探している母親を、雪山の陰からしたり顔で見ていたりして…。
中森
家族仲が悪かったとか、ご家庭で何かあった感じだったのでしょうか?
バービー
今思うと思春期鬱でしたね。末っ子で家族から愛されるキャラクターであることがプレッシャーだったのかな? 親が共働き、祖母の介護も重なり、愛情を得られていないと感じていたのかも…。今思えば十分愛されていたのですが、当時は…。社会そのものへの反抗心も強かったような?
中森
僕は〝失踪の社会学〟を専門にしていますが、確かに家出すると、今の自分から生まれ変わるという感覚を持てることも。字を反対にすると〝出家〟ですよね?
バービー
確かに! あと私、自己顕示欲が強いんですが…。先生、そういう人って反発心から家出する傾向にあります?
中森
子どもの性質は関係しますね。親が歩み寄っても飛び出しちゃうとか。あとは過干渉な親から逃れるという事例も。僕はどちらかというと後者です(笑)。いまだに実家に居心地の悪さを感じますしね。
バービー
実は先生も? うちは3人兄姉がいたことで放任してもらえていたかな。
中森
親が干渉せず、1人でいられる時間と場所を作ってあげることは大事。SNSも場合によっては共通の意識を持つ者同士の命をつなぐ逃げ場にもなります。
バービー
SNSは子どもが悪いのではなく悪い大人がいけないのに!
中森
ほんとそうですよ。ただ危険から身を守るためにネットリテラシーは大切ですよね。
バービー
私は高校でテニスに出合い、打ち込めたことで生きる希望を見いだせました。
中森
いつそのチャンスが訪れるか? 親は見守り、必要な時にサポートできたらいいですね。
❷ 過干渉は、ある意味ネグレクトと同じです
❸ 子どもの可能性を信じて待つこと
撮影/河内 彩 取材/石澤扶美恵、竹永久美子 ※情報は2023年6月号掲載時のものです。