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Lifestyle15分でできる親子性教育【医師ワークユニットアクロストンさん】

【性教育ワーク連載‐最終回‐】大人と子どもが楽しく性の話にふれるには?親子でマンガを読んで、一緒に語り合おう

親子の15分性教育ワーク。最終回は、今までのなかで一番、気楽にできるワークです。

この連載は「子どもと性の話をしたいけど、どうしたらいいのか分からない」「一緒に話すきっかけがない」、そんな声をもとに、親子で性に関する色々なテーマを一緒に話せるようワークの形式でまとめていました。

生理、射精、SNSのトラブル、ルッキズム、性暴力など、たくさんのテーマを扱いましたが、なかには、子どもに話をすることを難しく感じる内容もあったと思います。

各回のテーマは違いましたが、実は根っこの部分は共通するものがありました。それは「対等な関係づくりをすること」「バウンダリー(境界)を意識すること」「その人らしさ(アイディンティティ)を尊重すること」で、これら3つは、家庭の中で性教育をするうえで私たちが柱になるものだと考えているものです。簡単に説明します。

対等な関係づくりをすること

これは3つの中で一番大切だと考えて、学校の授業では「自分がイヤな時には『イヤ!』と安心して言える関係」と子ども達に説明しています。

対等な関係性だと、心地よいコミュニケーションが作られますが、対等ではない支配的な関係性の中では人を傷つけること、暴力が生まれやすいので、自分が強い立場で誰かに接した際に何かを強制していないか、逆に支配的な立場に自分がいないか、気を付けることが大切です。連載vol.11に詳しくまとめたのでご覧ください。

バウンダリーを意識すること

バウンダリーは、ひとりひとりの「からだ」や「こころ」の周りにある境界です。誰であっても自分の周りには、目に見えないバウンダリーがあって、その中のことは自分で決定ができます。他人がそこを越える時には同意が必要で、同意が取れた時にだけバウンダリーを越えることができます。連載vo.10では相手の体型のことをほめたり、けなしたりする話(これもバウンダリーを勝手に越えた行為)することなど、他人とのやり取りが発生するテーマでは盛り込んでいました。

その人らしさ(アイディンティティ)を尊重すること

言葉の通りですが、性の話に限れば特に「SOGIE(性自認、性的指向、性表現)」やジェンダーについてです。「自分は自分のままでいいんだ」と自分自身を承認して、他人の「らしさ」も大切にすること。こちらは連載vol.19で「こころの性」について、連載vol.20で「女の子らしさ、男の子らしさ」について詳しく扱っていました。

「対等な関係づくりをすること」、「バウンダリー(境界)を意識すること」「その人らしさ(アイディンティティ)を尊重すること」、この3つは、単純に知識を得れば身に付くものではなく、自分の頭で考えたり、実体験を通して悩んだり、他人との関わりの中で気づいたりしていくものです。また、悩みを抱えやすい点でもあるので、「誰かに相談していいんだ」と知っておくのも大切です。

親子でこれらテーマについて話しておくことは「親に相談できるかも」「他人は自分と違う考えを持っている」と気づいたり、口にすることで自分のモヤモヤがはっきりさせたりすることができます。

さて、それではここからが最後のワークの紹介となります。

今回のワークは「マンガを読んで、一緒に語り合おう」です!最近は「対等な関係づくりをすること」、「バウンダリー(境界)を意識すること」「その人らしさ(アイディンティティ)を尊重すること」が盛り込まれた、良質な作品がたくさんあります。マンガにかぎらず、小説や映画、ドラマなどエンタメ作品を一緒に読んだり観たりして、お互いに感想を語り合うのはとても楽しく、本当に良いワークになるので、是非やってみてください。

私たちおススメの作品を紹介します。2人ともマンガが好きなので紹介するのはほとんどマンガ(+小説1作品)です。大人も子どもも一緒に楽しめるものばかりです。

それではワークをはじめましょう!

今回の15分ワークのお題 ①性の話に関連した作品を楽しむ
②思ったことを語り合う
③オススメ作品

①性の話に関連した作品を楽しむ

読み方のルールなんてものはありませんが、子どもにいきなり「読んでみて!」と渡さず、大人が一回読んでみるのがいいです。その後に、家の中の目立つところにおいてみたりしてください。

②思ったことを語り合う

「ここがよかった」「あのシーンやばい」など、お互いに感じたことを語り合ってみてください。ワークだと身構える必要はありません。「あのマンガの〇〇のシーンだけど・・・」みたいに、日常会話の中に混ぜ込むのがおすすめです。子どもから鋭い指摘が出ることもありますよ!

③オススメ作品

・『今夜すきやきだよ』(著 谷口菜津子、新潮社)
ともこと、あいこ、ルームシェアをしている2人のストーリーです。仕事、料理、恋愛、結婚などへ正反対の考えを持っている2人が、お互いの価値観を肯定しながら暮らしています。これから読む人のために詳しく書きませんが、私たち2人ともラストの展開、伏線回収の仕方に「こう来たか!」とうなりました。1巻完結でのマンガで、ドラマ化もされています。このマンガの作者、谷口奈津子さんの『今夜すきやきじゃないけど』(新潮社)、『うちらきっとズッ友』(双葉社)もオススメ。

・『ニッターズハイ!』(著 猫田ゆかり、KADOKAWA)
男子高校生たちの手芸部の話です。元陸上選手の主人公、手芸ガチ勢の同級生、コスプレ好きな先輩など、かわいい猫(だるま)など、引きつけられるキャラが満載のマンガです。もちろん手芸の話中心ですが、友人や親子関係での悩み、ジェンダー的な話などが随所に出てきます。男子同士の部活の話だと、団結、努力、勝負、恋愛(ただし異性愛に限る)みたいなテーマが中心になりがちですが、ニッターズハイのような、ゆるく、温かい関係性の作品は貴重だなあと個人的には思っています。

・『ねこにんげん』(著 ぱらり、リブレ)
人間と、人間みたく暮らしている「ねこ」共存する世界での話です。「ねこ」は人間と同じように会話をし、服を着て暮らしています。そして、「ねこ」は人間たちに大人気で、かわいがられています。設定だけ聞くとほんわかファンタジー的ですが、一方的にかわいい存在として扱われていることは、人間たちから対等に扱われていないことでもあり、その力の差から来るモヤモヤとする言葉、ハラスメント、暴力が存在しています。優しい絵柄で、分かりやすいストーリーなのですが、マンガを読みながら「ねこ」が一体何を表しているのか考えさせられる作品です。1巻で完結しているのですが、何回も読み返しています。

・『バクちゃん』(増村十七、KADOKAWA)
宇宙から地球へきた移民のバクちゃんが主人公です。バクちゃんは「夢」を食べるのですが、自分の惑星では、資源である「夢」が枯渇してしまい、親類をたよりにひとりで地球(東京)にやってきます。バクちゃん以外にも、長年日本で働いている方、移民二世として複雑な思いを抱いている方、地球の暮らしに適応している方、適応していない方、たくさんの宇宙からの移民が出てきます。キャラはみんなほんわかしていて(この作家さんの持ち味)、単純にSFマンガとしても面白いのでマンガを読んでいるとその世界に引き込まれるのですが、移民のこと、差別のこと、本当の意味での多様性についてもふれられる作品です。2巻で完結しています。ちなみに、同じ作者さんの「花四段といっしょ」(朝日新聞出版)という、ほんわか将棋マンガもおすすめです。

・『ヒヤマケンタロウの妊娠』 (著 坂井恵理、講談社)
男も妊娠・出産するようになった世界で、主人公である桧山健太郎が妊娠するところからストーリーが始まります。周りの人や社会、自分自身を少しずつ変えていく様子が描かれています。妊娠、出産、育児に関する偏見や差別を少し違った視点で見つめることができます。続編の「ヒヤマケンタロウの妊娠 育児編」と合わせて一気に読むのをオススメします。

・『作りたい女と食べたい女』 (著 ゆざきさかおみ、KADOKAWA)
料理が大好きな野本さんと、食べるのが大好きな春日さん。同じマンションに住んでいるふたりの話です。ジャンル的には料理マンガかつ恋愛マンガなのですが、とにかく相手に配慮した心地よいコミュニケーションをこの2人(話が進むと友人も登場)が取っており、ほっこりします。そして、とにかくこのマンガがすごいのはジェンダーのこと、LGBTQ+のこと、家族関係のことなど、生活に密着しているけれど悩みやすいテーマ、一人で抱え込みやすいテーマが丁寧、ふんだんに描かれています。現在(2023年8月)、4巻まで出ており、ドラマ化もされました。いろいろなことに配慮しつつ、でもとても親しいコミュニケーションの取り方がすごいな、と思って読んでいます。

・『ソーリ』(著 濱野京子、画 おさないちあき)
紹介する中でこの作品のみ小説(児童文学)です。主人公は小学5年生の照葉(てるは)。小さい頃に七夕の短冊に「総理大臣になりたい」と書いたところ、とある男子に「女のくせに総理大臣になりたいなんて、ぜってえ、おかしい」とジェンダーバイアス丸出しの言葉を言われてしまう。物語はここからは始まっています。この作品は公立小学校を舞台にジェンダーギャップ、子どもの権利、民主主義、人種差別などのテーマが物語中に散りばめられています。小学生向けに書かれており、内容は全然難しくはないのですが、読み応えのある作品です。性別に関係なく、大人もぜひ読んでほしいです!

※私たちのnoteに、この作品の書評(推しをほめたたえる文章)を書いています。若干のネタバレを含みますが、より詳しく紹介しているのでご参考にどうぞ!(このnoteを書いたのは2020年で、当時の日本の政治状況を絡めていますが、3年後の今も状況はほとんど変わっていません)。

アクロストンnote
https://note.com/acrosstone/n/n93dbae5cc51a

お疲れさまでした! 最後に……

これで親子の15分性教育ワークの連載はおしまいとなります。この連載を通して、性の話を少しでも身近に感じていただいたり、お子さんと話すヒントとなったりしていたら、とても嬉しいです。お読みくださりどうもありがとうございました。

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アクロストン 妻(みさと)・夫(たかお)であり、12歳、10歳の子を育てる親でもある、医師2人による性教育コンテンツ制作ユニット。
公立小の保健の授業や楽しく性について学べるワークショップを日本各地で開催。
家庭ではじめられる性教育のヒントや性に関する社会問題についてなどを発信している。

著書:「10歳からのカラダ・性・ココロのいろいろブック 変わるカラダのいろいろ編」 (ほるぷ出版)、「3~9歳ではじめるアクロストン式 『赤ちゃんってどうやってできるの?』」、「いま、子どもに伝えたい性のQ&A 、思春期の性と恋愛 子どもたちの頭の中がこんなことになってるなんて!」(ともに主婦の友社)
監修:シールでぺたぺた「おうちせいきょういくえほん」(主婦の友社)

インスタグラム
https://www.instagram.com/acrosstone/

ホームページ
https://acrosstone.jimdofree.com
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