
ミス・ユニバース世界大会で2位に輝いた知花くららさんが、建築を勉強するために再び大学へ通い始めたのが37歳のとき、ちょうど第一子を妊娠中でした。今回は建築を勉強するきっかけや育児と勉強の両立、3年目になる海辺での暮らしなどを伺いました。
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★ 家族のサポートのおかけで育児と勉強の両立ができた
★ 勉強は毎日のTODOを決めるところから
★ 家族との密なコミュニケーションが、新しいことに挑戦する原動力
★ 海辺への移住で得たもの
★ 我が子に伝えたいのは「目の前に見えてることが全てじゃない」
★ これから挑戦してみたいこと
「沖縄でヴィラを設計したい!」がはじまり
建築の勉強を始めたのは、祖父が戦前まで住んでいた、沖縄の慶留間島(げるまじま)の家と土地を譲り受けたのがきっかけです。祖父からは、コンクリートの上等な家を作ってほしいと言われたんですが、「どうせ建て直すなら、自分が設計した家を建てたい!」と思ったんです。慶留間島は手付かずの海が広がる本当に綺麗な島なのですが、人口が40人で過疎化が進んでいます。自分が設計した一棟貸しのヴィラを建てて、いろんなお客さまに来てもらえたら、島の活性化にもつながるんじゃないかなって。でも、家を設計するには建築士の資格が必要で、建築士の資格を取るには、まず大学で建築系の指定科目を修了しなければいけないんです。
祖父から土地を譲り受けたのは随分前だったのですが、2018年の夏頃、急に建築を勉強する気持ちが沸々と湧いてきて、知り合いの建築士の方にも相談してみたら「やってみたら?」と言われて一気にその気になっちゃったんです(笑)。
夏に決意した数か月後、2018年12月に1人目の妊娠がわかりました。大学入学は翌年の4月から。妊娠中にまさか自分が大学生になるとは思ってもいませんでした。でも、頑張れるところまでやろうという気持ちだけで突き進んだ感じです。インテリアは好きだけど、建築に関しては全くの素人で、イチからの勉強でした。元々勉強は好きな方ですが、建築の勉強ははっきり言って次元が違いました。
家族のサポートのおかけで育児と勉強の両立ができた
妊娠中に大学に入学し、出産を経て乳児を抱きながらの勉強だったので、勉強時間を確保するのが大変でした。長女を出産して、産褥期に受けなければいけない講義があり、痛みに耐えながら7時間の授業を受けたのは、今ではいい思い出です。でも、その時は朦朧としていてよく覚えていないんですけどね(笑)。
通信で勉強できる大学だったので、0歳から保育園に子どもを預け、保育園のすぐそばのコーヒーショップでお迎えの時間までずっと勉強していました。勉強する時間を作るためには家族のサポートがどうしても必要で、義母や義姉の力も借りていました。それが申し訳なく思えて、「まずは最短で卒業するしかない!」と思い、とにかく気力と執念で頑張れた感じです。授乳しながらレポートを書いたり、泣いている我が子に子守唄を歌いながら文献を読んだりしていました。
追われると頑張れるタイプで、自分を追い込むタイプでもあると思います。建築の勉強をしていても、ドMとドSをどっちも持ってるなと自分で感じます(笑)。

勉強は毎日のTODOを決めるところから
資格試験の勉強は、保育園に行ってる間だけでは足りないので、子どもを寝かしつけて自分も仮眠した後、熱いシャワーを浴びて、夜明けまで勉強をする生活を2ヶ月くらい続けました。朝は子どものお弁当を作らなくちゃいけないので、それまでとにかく必死で勉強していましたが、自分がすさんでいくのが分かりました(笑)。
仕事もランダムで入っていたので、その日は勉強できないから、別の日にその分の勉強をやったり、割と計画を立てて勉強をするタイプです。勉強は逆算型で、これは大学受験の時に覚えたやり方なんです。その時は、初めに参考書を全部買ってきて、章ごとに全部付箋を貼って、受験日まで日割りでToDoを決めていました。やり終わったら付箋を剥がすことで、毎回達成感があり頑張れました。
2021年の3月、学校を卒業。2人目を妊娠していたのでつわり真っ最中に卒業制作をして、出産2週間前の7月に建築士の学科試験を受けました。なんとか学科試験は受かり、2次試験は次の年に受かって、無事2級建築士の資格を取得した時は達成感がハンパなかったです。
家族との密なコミュニケーションが、新しいことに挑戦する原動力

とにかくやりたい目標があったので、ゴールに向かって頑張るのみでした。でも、これをもう一度やれと言われたらできないかもしれません(笑)。私みたいなライフステージで、子育て、育児、仕事をしながら勉強するには、やっぱり家族のサポートは不可欠で、そこを得られるかどうかが大きいと思います。
大学で勉強しはじめたころ、「負担が大きくなってしまってごめんね」と夫に伝えたら、カラッと笑って「何を今さら(笑)」と言われました。夫は若い頃から芸能界にいて、本人曰く勉強が苦手なタイプ。そんな夫から「今でも大学に入り直そうという気持ちがあるくららちゃんがすごいと思うから、応援したいだけだよ」「生まれてくる子供に、そうやってママは頑張ったんだよって言えたらいいんじゃないかなって思ってる」と言われ、じゃあ、なおさら頑張らなくちゃと思えたんです。
プレッシャーもあったけど、こういう状況じゃなかったら、夫ともこんなデリケートな話し合いや、お互いの気持ちをさらけ出してコミュニケーションを取る機会もなかったかもしれないし、サポートを得るには、密なコミュニケーションが必要だと感じました。サポートがない状況でも不可能ではないけれど、やはり時間はかかると思います。私は本当にラッキーだと思っています。周りのサポートがあって頑張れたし、とても感謝しています。
海辺への移住で得たもの

2021年に、いろんなきっかけがつながって移住しました。夫も私も船舶免許を取得していて海が好きなのと、たまたま義母も海辺に引っ越したタイミングだったので、のびのび子育てもできると思って決めました。引っ越して3年目ですが、毎日とても楽しいです。海が目の前で、波の音が聞こえる距離なので癒されています。
最近のリフレッシュ方法は、10年ぶりに再開したフラメンコ。週1回近くの教室に通っているのですが、音楽も好きだし、頭を使わず没頭できるので、1回行くと4時間くらい踊っています。稽古のための自主練もしているので、今もまだ筋肉痛が残っていますが、フラメンコを踊ることで自分の気持ちをリセットすることができるので、とても楽しいです。
我が子に伝えたいのは「目の前に見えてることが全てじゃない」
今まで国連の活動で発展途上国へ行き、子供達をたくさん見てきました。マサイの学校の校長先生だった女性は、子供の頃から学校がすごく好きだったのに、ある時親が決めた相手と結婚しなくちゃいけなくなり(マサイは若年結婚が問題)、結婚したら学校を辞めなきゃいけないのが耐えられず、結婚前夜に家を飛び出して隣村のおばさんの家に逃げ込み助けてもらい、今があるとおっしゃってました。
世界にはいろんな人生があって、いろんな選択肢がある。日本は選択する自由があるけど、目の前に見えてることが全てじゃないと子供たちには知ってほしいです。こうしなきゃいけないということはないし、いろんな人がいて当たり前。世界スタンダードで物事を見分けられる子供になってほしいと思っています。
そんな希望はありますが、実際に日常は子育てでいっぱいいっぱいですけどね(笑)。習い事などはまだ何もやらせていないので、これから子供たちや夫と話しながら決めていきたいと思っています。
これから挑戦してみたいこと

建築士の資格が取れたので、まずは慶留間プロジェクトを形にして、そこからまた見えてくるものがあると思います。国内だけじゃなく、海外にも発信していけたらいいなとも思っているし、建築を通して、これからも進んでいきたいです。
ちなみに、今建築士の1事例目としてやっているのが我が家のリノベーションのデザイン。自分でデザインをいろいろ考えたり、打ち合わせをしたりと大変なこともありますが、出来上がりが本当に楽しみです。
「40代の自分への投資」だと思って始めた建築の勉強。できることが広がった今はすごく充実しているし、これからどんなふうに自分が成長していけるか想像するとワクワクします。

トップス ¥108,900 (COTE/IZA)ピアス ¥58,300<片方>(Little emblem/e.m.青山店)右手リング ¥111,000 左手3連リング ¥123,200 (共にe.m./e.m.青山店)
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撮影/古水良(cheekbone) スタイリスト/山本隆司(style³) ヘアメイク/髙取篤史 取材/沢 亜希子