「夫婦にセックスは必要?」もちろんその答えはどちらでも、お互いが納得していれば正しいのだけれど、2人の気持ちが異なったときに、どう寄り添うか。今月はいったんレスに陥ってしまった夫婦の夜の生活復活という、とても貴重な体験談。
夫婦の夜を諦めない!
◯ 話してくれたのは...ベッツィーさん(仮名)
周囲の友人から、「セックスレスから復活したなんて、かなり珍しい」って声を揃えて言われるのですが、何もしないで復活したわけでなく、にじむような努力があったから。女性としての自信を失った時期もあったけれど、40歳過ぎた今は、あることが当たり前、それが私達のベストな形だと思えます。
短大卒業後、ヘアメークになるのが夢で専門学校卒業後NYに留学。1年後ビザが切れて帰国したのですが、就労ビザが出るのに時間がかかる時代で、その間、百貨店でアルバイトを始めました。元夫はそこの社員でした。物腰の柔らかい優しい人で向井理似のイケメン。彼も好意を持ってくれて、出会ってすぐに交際が始まり、4カ月後に妊娠発覚。私には大きな夢があったけど、それを諦めても産みたいと思いました。でも付き合ってすぐだから、彼が反対したら1人で産むつもりで妊娠を告げたら、意外にも「結婚しよう」と言ってくれ、妊娠5カ月のときに入籍。29歳でした。
慌ただしく出産して子育てが始まり、ただただ必死で生きている日々。長女が3歳になった頃、新婚旅行を最後に1度もセックスをしてないことに気付きました。私は言いたいことや思ったことは何でもすぐに口に出す性格。すぐに「してないからやろうよ」と言うと、「え、2人目欲しいの?」って言うんです。「子ども産むためにしか、しないつもり?」と返して、結局その日は何もなく終わりました。私は元夫が大好きでしたし、交際中はほぼ毎日のようにしていたんですよ。翌日も「どういうつもり?」と詰め寄ると、「嫌いじゃないけどできない。イメトレするから待って」と。幾度となくそのやり取りをした後、「じゃあカウンセリングを受けて」と言うと断固拒否。落ち込みましたよ。
その頃、私はセックスレス解消の本を読み漁り、友人に相談して、夫に可愛い態度を取ったり、オシャレなパジャマを着たり、いろいろ努力しましたが、ビクともしません。状況は変わることなく喧嘩が続き、ある日思わず「それなら離婚だわ」と叫ぶと、「仕方ないね」と簡単に引き下がったのです。
娘は可愛がってくれ、経済的に何の問題もなかったけれど、私は簡単に手を離せる存在なのかとショックで、女性としてもすっかり自信を失いました。自分には夢もあったし、やりたいこともある。1人でも子どもを育てていけると離婚を決意。33歳でした。しばらくは近くに住んで、夫婦ではないけれど2人で子育てし合い、私は派遣会社で働き始めました。もう2度と結婚はしたくない、傷つくのは嫌。娘と2人、一生懸命働いて生きていこうと思いました。
ところが離婚から2年後、同じ会社の食事会で今の夫と出会いました。くすっと笑えるようなことを言う面白い人で、見た目は私より小さいけどそこが好きでした。すぐに打ち解けて、また出会ってすぐに交際スタート。私は再び女性としての価値を自分に見いだしたい思いもあって、結婚より、男と女として付き合っていきたいと思っていました。
自然な流れでホテルに行き、普通にできる関係が本当にうれしかった。交際は順調で、彼はとても大切にしてくれて幸せでした。娘にも会ってくれ、今の関係が続くといいなあと思っていました。ところが夫が義母に、恋人がいて、しかも娘がいることを話したら、「いいじゃない。連れてきなさい」と言われ、初対面から娘を連れて遊びに行くことに。そのとき付き合って数カ月、ちょうど冬の終わりで、「早く籍を入れて、4月から小学校に入れたらいいじゃない」と結婚を勧めるのです。
義母は36歳の息子を早く結婚させたかったのか、想定外のウエルカムで迎えてくれ、急速に話が進んで恐怖を感じていたくらいでした。でも夫が、「流れが来ているときは逆らわずに乗ればいいよ」の一言で、私の心も決まりました。何よりも夫のことが好きでしたから。こうして流れに任せて結婚が決まり、子どもと一緒に3人で旅行に行ったときに、私には指輪、娘にはパワーストーンのブレスレットを用意してくれました。私は35歳、娘は6歳になっていました。
結婚の翌月に妊娠がわかり、36歳で長男を出産。2人の子育てで手いっぱい、ばたばたと日々を過ごしていたある日、「そういえば、全然してない」と、最後にしたときから1年が過ぎていることに気づきました。最初の結婚とデジャブしてるみたいな感覚。片付けられてない宿題がまたやってきた、と思いました。
しかし、夫には再婚するときに、離婚の原因がセックスレスであることを話し、自分にとってセックスは愛情だから絶対に必要だと言うことを伝えていました。それで、「あれ? してないね」と伝えると、「そうだね」と静かな反応。このときはスムーズに復活したのです。でもそれ以降はこちらから誘わないとすることはなかったし、夫は疲れていて惰性でしている感じでした。そして3人目を妊娠、出産。小学生、幼稚園児、赤ちゃんを抱え、目まぐるしい毎日で、気がつくと、夫は自分の書斎、私は子ども達3人と一緒に寝ていました。すっかりセックスからも遠のいていました。
なぜ私と付き合う人はみんなこうなるんだろうと悩み、自分を振り返りました。私は、夫婦関係以外でも、相手が間違っていると思うとつい責め立てて、説明を求めてしまうところがあります。思い起こせば最初の結婚のときはセックスレスになって以来、その連続でした。ついそのことばかりにフォーカスして、余計状況が悪化することが多々ありました。それで、何も言わず、責めずで、一旦置いておこうと思いました。
でもそうすると状況は変わらないし、夫から誘うことは全くない状況が続きます。それで、今までは「何でしないの?」「私のこと好きじゃないの?」と問い詰める言い方をしていたのを、「そろそろ寂しいのですけど」「大事にされてないような気がします」とおちゃらけたようにそれだけ言って寝るようにし、忘れた頃に数カ月空けてまた繰り返してみたんです。
するとある日、「子どもがいる前では気になるんだ」ってぽつりと言ったのです。遅いのですがそこで初めて、男性はずっと繊細なんだということを知りました。でもいい兆候だと思いました。それで、同じようにおちゃらけて気持ちを伝え、絶対に答えを求めないで寝ることを、意識的に取り入れました。
するとある日、子ども達全員がいない日に、「ホテルに行こうか」と誘ってくれ、そこで1年ぶりくらいに復活できたのです。本当にうれしかった。このとき夫は、「時々放たれるおちゃらけたひと言が身に染みて、責めずにいてくれたから、プレッシャーに感じずいられた」と話してくれました。
それ以来、定期的にホテルに行くことが習慣になり、頻繁ではありませんが、セックスレスは解消しました。同時に夫婦関係についても、学びました。夫婦は考え方の違いもあるし、喧嘩することももちろん多いけれど、何か問題を感じたとき、とことん話し合うことはせずに、一旦置いておくことも大事です。すると毎日一緒にいる夫婦だからこそ、いいところも知らず知らずのうちに見えて、自然に不満は解消されることに気づいたのです。責めることって男性を萎えさせるんですよ。色っぽい下着をつけることよりも、相手を責めないことの方がずっとセックスレスに効果があったのです。
私、もともときつい性格ですが、こんな風に思えるようになるなんて、まるくなったなあと思います。まるくなるとともに幸せもやってきたのですよね。ずっと何かに成功したいと思ってきたけれど、セックスレスを通して、本当の幸せに気づけました。
取材/安田真里 イラスト/あずみ虫 ※情報は2022年掲載時のものです。