せっかく今まで取り組んできたスポーツを子どもが急に「やめる」と言い出した。これを乗り越えれば成長するかもしれないのに……。そんな時は、どうやって対処すればいいのか。若きアスリートの母たちに聞きました。
今回はジュニアゴルフの世界4大メジャー大会を制覇した須藤弥勒選手の母・みゆきさんです。
乳がんを経験して、限られた時間の大切さを娘にも伝えていければと思うように
須藤みゆきさん(51歳)ピアニスト、元フィギュアスケート選手
フィギュアスケート選手権で全国11位の実績を持つ。今はキャディーとして娘をサポート。
ジュニアゴルフの世界4大 メジャー大会を制覇 須藤弥勒選手 (12歳)
2011年群馬県生まれ。 史上初のジュニアゴルフ世界4大メジャー制覇を達成した天才少女。
――弥勒さんがゴルフを始められたきっかけから教えてください。
「弥勒は3人兄妹弟の真ん中ですが、弥勒にゴルフをさせるつもりは全くなく、最初は長男と弥勒をペアのフィギュアスケート選手にさせたかった。夫が私の父にそれを相談したところ、『湯水のようにお金がなくなる。やめたほうがいい!』と大反対されて。私の時に痛い目を見たのでしょう(笑)。
そこでまずは長男に『大人になって社会に出てから役立つから』という理由でゴルフをさせることにしたのですが、夫も私もお互いゴルフは素人。そこで夫は国内外の本を読みあさり、指導法や練習方法を研究し、グリーンやバンカーを備えた練習場や自宅内にパター部屋を完備。いつでも練習できる環境を整えました。
当時、1歳半だった弥勒は、兄の練習を横で見ていたのですが、ある日、遊びでクラブを振らせてみたところ、空振りすることなく打ってしまった! それから弥勒のゴルフ人生がスタート。プラスチックのおもちゃゴルフから始め、3歳で大会初出場、6歳以下の国際大会に5歳で優勝しました。
ただ、夫は熱血指導だったので、私は裏でよく泣きましたね。パットが入らなかった時には、『クラブの気持ちがわからないからだ! クラブを抱いて寝ろ!』と練習室で寝させたり……。その厳しさについていけず、兄のほうは小1でゴルフをやめました。一方の弥勒は、ゴルフが好き、世界を獲りたい! と言い続けています」。
――みゆきさんは、去年暮れに乳がんの手術をされたとか、大変でしたね……。
「そうなんです。乳がんを経験したからこそ、娘には限られた時間の大切さを伝えていきたいと強く思うようになりました。私も好きなことをする! と決意して髪の色もピンクにしました。
弥勒は今年13歳で、日本女子プロゴルフツアーに出場する予定です。キャディーとして晴れ舞台に立つ娘を支え、弥勒を優勝させたい。でも『本当にやめたいと思った時にはやめてもいいよ』と伝えています。他の人生を歩む選択もある。少しでも弥勒の経験の手助けができればと感じています」。
撮影/BOCO 取材/東 理恵 ※情報は2024年4月号掲載時のものです。