連載「私たちのCHALLNGE STORY」を担当している編集Ｒです。９月２０日の自民党総裁選を目前に世論がざわついていますね。いつものように手酌で晩酌しながらぼんやりニュースを観ていたある晩、私の目耳に飛び込んできたのが「緊急事態条項」。この言葉を聞いた瞬間、その内容と自分の無知に対する恐怖心が亡霊のようによみがえってきました。2016年12月号『ＳＴＯＲＹ』で、私は「『お母さん、改憲って何？』に、きちんと答えられるための…」という企画を担当しました。20年以上ぶりの時を経て憲法再履修をせざるを得なかったと同時に、このとき初めて「緊急事態条項」を知ったのです。そのときの衝撃を以下の中で綴っています。

12月号「お母さん、改憲って何？」MAKING OF
https://storyweb.jp/lifestyle/4392/

皆さんにもぜひ再度読んでいただきたい記事なのですが、関係部署に訊いたところ１年前より古いバックナンバーは販売していないとのこと……（涙。電子化して売ろうよ！）。ですので「緊急事態条項」に関するところを再録させていただきたいと思います。この企画は夕飯の支度をする母を演じるモデルのＨＡＲＵＫＯさん＆その娘を演じるＡＫＢ48加藤玲奈さんのＷ主演で構成させていただきました。美しい母娘をイメージしながら読んでください。

――前略――

母「あともうひとつ大きい問題があるの。緊急事態条項って知ってる？」

娘「何それ？ 聞いたことない」

母「緊急事態条項っていうのは、東日本大震災みたいな大災害やテロが起きたとき、総理大臣に特別大きな権限が与えられる、というものなの」

娘「それのどこがいけないの？」

母「これが発令されると、内閣が自由に法律を作ったり、予算を使ったりできるようになるの。そうすると昔のような独裁政治になって、それこそ国民の意見が全く尊重されなくなっちゃう可能性があるんだよ」

娘「それヤバくない!? 全然知らなかった！」

母「改憲っていうと、ニュースでは９条についてはよく取り上げられるけど、大事なところはほかにもいろいろあるのよ」

娘「知っといてよかったー！ だけど実際には今の憲法は変えにくいようにできてるんだよね？」

母「96条には衆参両議院それぞれ３分の２以上の議員が賛成したら改憲発議ができて、その後、国民の過半数の賛成が得られればＯＫ！と書かれてるの。問題は『改憲のための国民投票に、最低何％以上の投票が必要』という定めがないこと。’16年の日本の有権者は約１億400万人で、この前の参院選の投票率は約55％。この数字でシミュレーションしてみると、国民の約22％が賛成すれば改憲できるということね」

娘「それだけで改憲できちゃうの!?」

母「あくまで仮定の話だけどね。だから『政治なんてわかんないし関係ない』『私の１票なんて意味ない』なんて言ってると、この間の英国のＥＵ離脱みたいに、いつの間にか日本の憲法も変わっちゃうかもしれない」

娘「そっかぁ。憲法は変えたほうがいいのかな？ 変えないほうがいいのかな？」

母「時代に合わせて憲法は変えるべきという意見もあって、それなら何のためにどこをどう変えるかはみんなでじっくり議論しないとね。憲法は国家権力を縛るもので、国民を縛るものじゃない。この考え方は時代とともに変わるものではないよね」

「より詳しく知りたい、だけど簡単に教えて欲しい！」、そんな方には『未来ダイアリー』（金曜日）がオススメです。物語仕立てなので、わかりやすく「緊急事態条項」を理解できます。

今回、「緊急事態条項」のお陰でいろいろな情報、知識を復習し、新たに得ることもできました。そして記事中の「私の１票なんて意味ない」という一文。９月号「私たちのCHALLNGE STORY」で美輪明宏さんが仰っていた、「日本の未来を良くするも悪くするも、私達大人の１票にかかっていることを肝に銘じて」というメッセージとリンクします。この回のテーマは「『今』『この国で』母親力が子どもを戦争から守る！」。こちらのバックナンバーは健在ですので、まだお読みでない方はぜひ！
https://www.kobunsha.com/shelf/magazine/past?magazinenumberid=3699