東日本大震災を被災して実感した「女性特有の悩みの解決」の必要性
冨川万美さん(44歳・東京都在住) NPO法人ママプラグ 理事、アクティブ防災事業代表
〝防災ゼロをゼロへ〟
家族の個性や日常を尊重した
〝普段通りの防災〟が当たり前になるために
家族の個性や日常を尊重した
〝普段通りの防災〟が当たり前になるために
東日本大震災をきっかけに防災事業を始めたNPO法人ママプラグ。理事を務める冨川万美さんたちは、被災地から関東に避難を余儀なくされている子育て家族を対象とし支援活動を始めました。「ワークショップを開催しミニトートバッグを制作しました。ママプラグがインターネット上で販売し売り上げの一部を参加者に還元するという仕組みです」。
そこで子育てをしながら不便な生活をしている人を目の当たりに。体験談を聞くと、災害後の生活がいかに大変かという話が多かったそう。「災害直後は興奮して気が付かないそうですが、数週間経つと、あるべきもの、あってほしいものがなくなってしまったことに心理的ダメージを受けるそうです。災害時だからといって日常生活をゼロにするわけではなく、自分たちの生活を保てるようにすることが大事だとわかりました」。
そこで主に災害後の生活を守るための啓蒙活動を行うプロジェクトとして発足したのが、“アクティブ防災”です。ネガティブなイメージのある防災を、少しでも積極的にアクティブに取り組めるようにと名付けられたアクティブ防災。普段の生活をしながら子どもや家族を守ること、日常を壊さないでできる備えをテーマに防災活動を行っています。
「防災グッズというと、決められた防災セットを選びがちですが、災害後の生活や心の健康を守るためには、家族の好きな食べ物や趣味など、災害が起きても自分たちの日常を保てるように備えておくことが大事です。旅行のパッキングをするように、自分たちのお気に入りの物を用意しておくのです」。そのためにまずは、自分や家族にとって何が必要か、どんな習慣があるか、好きな物事はなにか、どんな体の特徴があるかなどを書き出すことから始めます。
「災害時にこれはできない、災害時はこうしていなければいけないと決めつけないことが重要です。そんな時だからこそ、心の健康を保てるように自分たちの好きなものを用意しておくのです。また、防災のために美味しくない非常食を用意するのではなく、普段の水や好みの食べ物のストックを切らさないことも防災の重要な一つです」。
ここ数年で防災への取り組みも変わってきた中で、今後は防災をしていることが当たり前、かっこいいという環境を作っていきたいと冨川さんは考えています。「例えばインドネシアでは防災事業が花形の職業ですし、タイでは防災事業のスタートアップが増えているそうです。今後は世界の防災事情にも目を向け発信していきたいです。また、そうした発信をできる人材を育成することも私たちの使命だと考えています」。
撮影/BOCO 取材/星 花絵 ※情報は2022年4月号掲載時のものです。
こちらの記事もおすすめ!
・避難はまだ終わっていない。原発避難者・森松明希子さんの思いが世界へ……
・“第2の語り部”となって伝えたい。被災地で「語り部バス」に乗って感じたこと
・イナトモさんと一緒に見た「福島県・富岡町の3.11から8年目の風景」