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“第2の語り部”となって伝えたい。被災地で「語り部バス」に乗って感じたこと

「私たちのCHALLENG STORY」の取材で南三陸に行きました。南三陸町といえば真っ先に思い出されるのが防災対策庁舎。3階建ての防災対策庁舎の屋上よりさらに2ⅿも上回る津波が町を飲み込みました。ニュースで聞いた「高台へ避難してください」と防災無線で繰り返し避難を呼びかけていた女性職員の声を、私は未だに忘れられません。今は赤い鉄骨だけが残り、近寄ることはできません。町全体を10ⅿ嵩上げする工事の真っ最中で、防災対策庁舎は見下ろすように見えています。

取材をさせていただいた南三陸ホテル観洋ではホテルのスタッフが語り部となり、「震災を風化させないための語り部バス」を毎日運行しています。約1時間のコースの中で語り部の伊藤さんがこんなことを言っていました。「現地に来て五感で感じたこと、考えたことを、大切な人を守るために“第2の語り部”として伝えてほしい」。現地に行かないとわからない、気づけないことがたくさんある中で、私が感じたことを“第2の語り部”として少しお伝えしたいと思います。まずバスから見える景色に驚きました。見渡す限り工事現場で、シーンとして時が止まったかのような更地が、かつて普通に穏やかな生活があった場所だったということは説明を聞かないとわかりませんでした。

坂の上に建つ戸倉中学校の校舎の時計は2時48分を差したまま。ここは海抜20ⅿ以上で避難場所だったにもかかわらず、津波が到達して人が亡くなりました。「まさかこんな高さまで津波が来るなんて……」と遠くに見える穏やかな海を見て思いました。坂を下る途中、戸倉小学校の児童を含む約150名が避難したという山の上にある神社が見えました。卒業式を翌日に控えた児童たちが卒業式のために練習を重ねた歌を歌い、その歌声に励まされながら肌を寄せ合って寒い一夜を明かしたといいます。震災から一夜明けて見えた、海から昇る朝日の写真も見せてもらいました。すごくきれいなオレンジ色の堂々とした太陽でした。私がその朝日をそのときその場で見ていたら、きっと涙が止まらなかっただろうと思います。「大人だって予期せぬ災害は怖くて辛い。でも人は強く、そして人の優しさが人を支えるんだな」と感じました。

特に心に残ったのは「津波てんでんこ」の話。それはチリ地震を過去に経験した先祖から伝えられた「津波が起きたらてんでばらばらになっていいから高台に逃げなさい」という教えです。災害発生時には家族で集まる場所を決めているという話もよく耳にしますが、何よりも「自分の命を守る」ということを優先し、咄嗟の判断で高台へ逃げることを子どもや大切な人には伝えないといけないと思いました。

そして先週、語り部の伊藤さんとホテルの女将・阿部憲子さんも出演している映画『一陽来復』を観てきました。被災地の岩手、宮城、福島の人々の今に密着したドキュメンタリー映画です。その人達の発する言葉、声が心に響いて、何度も泣きました。「一陽来復」とは冬が去り春が来ること。悪いことが続いた後、ようやく物事がよい方向に向かうという意味です。被災地に行けない方にも、この映画はおすすめです。たくさんの人に被災地の今を感じてほしいです。http://lifegoeson-movie.com/

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