自分が 「Tomy の相談室」のドアを開けて話を聞いてもらえたような気持ちに
私はもともと自己啓発系の本が苦手。30代半ばの頃、やたらと「結婚するためにやるべき◯カ条」とか「◯日で幸せになるコツ」などの本が事務所へ送られてきたのもあって、逆ギレ気味に「自分の人生は自分でなんとかするから」と。でも、この本の作者 Tomy先生とは、以前ラジオでご一緒したことがあり、気さくで話しやすく押し付けがましさが一切なかったのもあってすんなり読み始めました。
先生は精神科医でTwitter『ゲイの精神科医Tomyのつ・ぶ・や・き♡』のフォロワー数が27万人超えと人気の方。まず表紙をめくると出てくる「たいていのことはね、気にしすぎなの。」という言葉から始まり、期待、不安、選択、好意、悪意、女王、迷い、決意というつのテーマが軽いストーリーの中で展開されます。受験や家族、仕事や結婚、家の購入など身近な悩みを持つ人々が「Tomyの相談室」を訪れ先生から絶妙な「言葉の処方箋」をもらいます。先生自身の体験談も含まれていたりするので信頼できます。
まず私に刺さったのは悪意の話。「他人が許せないときは、自分に大きなストレスがある。相手に怒りの目を向けるより、自分自身の機嫌をとることが先決」と。確かに、疲れていたり何かしらの不安を抱えている時ほど人の小さなミスにイライラしてしまう。遠い記憶だけど、仕事も恋愛も充実していた時は、もっと優しい人間だったような気がするし。
とはいえ、生きていれば不安はつきもの。Tomy先生、不安がテーマの話では「不安になりやすい人ほど、より先のことを考える。(中略)振り返ってみると、なるようになって、今まで生きてきたはず。これからもなるようになるから、大丈夫」と。
今までの50年間、確かに辛いことや後悔することもあったけど、なるようになってきたわけで、考えても仕方のないことを考えすぎても不安が増すだけ。あと不安を人にぶつけるのって、周りの人からしたら非常に迷惑な話。ぶつけた本人は多少すっきりはするかもしれないけど。不安を人にぶつけがちな自分自身のクセを見直そうと思った次第。
そして最後の決意の話は、今現在の私にグッと響きまくり。「ストレスを減らすたった1つの方法、それは『手放す』こと。執着を手放す、『こうならなきゃならない』を手放す。(中略)そして、最後にどうしても手放せないものが残る。それが生きる理由」と。
この仕事を始めて約30年。当たり前だけど年齢を重ね体力は衰えるし、求められる仕事の役割も変わってくる。昔と同じようにと思うけどそんなはずもなく、世代交代という言葉がちらつきながらも完全に譲りたくはなくて。ちょうどそんな過渡期、瀬戸際でもがいている自分は、まさに何を手放して何を残したらいいのかを考える時期なんだろうと思います。
コロナ禍が長引き、また世界情勢が予想だにしなかった不穏さに揺れていることもあって、心に鬱屈や不安・迷いを抱えている人も多いと思います。Tomy先生に話を聞いてもらい言葉の処方箋をもらうと、心のモヤモヤが全てとは言わないですが、少なからず消えて楽になります。最近、なんだか不安になっている方、軽い気持ちで「Tomyの相談室」を訪れてみてはいかがでしょうか。
おおくぼかよこ/’71年、愛知県生まれ。千葉大学文学部文学科卒。’92年、幼なじみの光浦靖子と大学のお笑いサークルでコンビ「オアシズ」を結成。現在は「ゴゴスマ」(TBS系)をはじめ、数多くのバラエティ番組、情報番組などで活躍中。女性の本音や赤裸々トークで、女性たちから絶大な支持を得ている。
撮影/田頭拓人 取材/柏崎恵理 ※情報は2022年5月号掲載時のものです。
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