子供のために離婚を我慢している40代は思いのほか沢山います。ただ、一歩踏み出さないとその先の幸せは手に入らないことも今回の40代が教えてくれます。
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離婚から7年後、元夫と復縁。切れても再び結ばれた赤い糸
離婚したから再婚できた
息子の嫁、孫たちの前でウェディングドレスを着たんです。こっぱずかしかった!
◯ 話してくれたのは...原 節美さん(仮名)
もとともと白黒はっきりさせたい性格の私が先のことは何も考えずに、離婚したのは45歳のとき。23年間連れ添った夫と大学生の2人の息子を置いて、家を出ました。母や友人からは「生活に困ってるわけじゃないんだから」と反対されましたが、自分らしく生きるために離婚して、茨の道を歩こうと思っちゃった。
友人の紹介で出会った国家公務員で8歳年上の夫と結婚したのは22歳。すぐに妊娠し、年子で息子たちを出産。恋人時代は、蝶よ花よと大切にしてくれましたが結婚すると厳しい人。家事に煩く、身だしなみもチェック。子育ても家事も手伝いませんが、コーヒーだけは自分で淹れるような人でした。
ところが子育てでいっぱいいっぱいの次男妊娠中に、浮気をされたんです。相手の女性からのプレゼントが平気で部屋に置いてあり、発覚。夫は詳しいことは言わず、私もそれ以上の追及ができず、あやふやなまま。浮気は、その後もほかの女性と続いていたようですが、何も責めずに心の中に押し込めて我慢し、私の中ではとても根深い出来事になって行きました。
でも、生活費は十分に入れてくれ経済的には安泰、誕生日にはプレゼントも。好きでも、嫌いでもない、寝室は別で喧嘩もしない。でも許せない気持ちを抱えながら何となく家族として過ごして行ったんです。きっと周囲から見ると、幸せな夫婦、家族に見えたことでしょう。でも気持ちはずっと曇り空。まさしく仮面夫婦でした。
私が事を起こさなかったのは子供たちを不幸にさせたくない一心から。でも30代後半、ラジオ番組の主婦DJに合格し、期間限定でしたが働くようになって、違う人生があるんじゃないかと考え方が変わってきたんです。その頃、夫は温泉に誘ってくれたりもしましたが、私の気持ちが受け入れられず、一緒にいたら自分が腐ってきそうに思えました。
次男が大学入学後留学が決まったとき、今しかない、と離婚したい気持ちを息子に伝えたら、いいんじゃない? と意外にあっさり。当時働く当てもお金もありませんでしたが、人生後悔したくない、ダメでもともと、と離婚を決断。1週間後に夫に離婚届を差し出しました。夫は青天の霹靂だったようですが、応じてくれ、1年間暮らしていける軍資金をくれました。
私、全てを失い、将来の当ても何もなく一人暮らしをスタートしたのです。不安で一杯だったけど、心は晴れ晴れ。友人の紹介で事務のアルバイトも始めました。少しずつ理想形に近づき始めた頃、バツ一の男性とお付き合いが始まりました。ところが2年後に肝臓がんで亡くなり、悪いことは続くもので、実父ががんで入院。介護も始まり、心も体も本当に大変な時期でした。
その頃です。父の主治医から飲み会に誘われ、行った席で今の夫と出会いました。お医者さんで研究ばかりしてきた独身。私は構えることもなく、離婚のこと、亡くなった彼のことなど、ぶちまけて話しました。何も気を使わなかったせいか、後に夫から、「話しやすい人だと思った」と言われました。
そのうちご飯や映画を観に行くようになり、恋人に発展。無口な人という触れ込みでしたが、意外に積極的。一緒にいると気持ちがラクでした。そして9カ月目に、突然、マンションにやってきて、玄関で私の好きな蘭の鉢を渡され、「結婚してください」とプロポーズ。全く結婚は意識してなかったのですが、すんなり「はい」と受け入れていました。まさにタイミングです。
47歳にして再婚。相手は初婚。結婚式は船上パーティで、私は息子、息子の嫁、そして孫の前でウェディングドレスを着ました。こっぱずかしかった!
最初の結婚とは環境も状況も全く違うけど同じことにならないよう、すごく努力しています。前の結婚では、子育て中心で夫にかまってあげられなかった、夫婦と言うより父と母の関係になってしまったことが失敗の原因だったと今になってわかります。
夫婦は家族になっても、男と女であることを意識して努力することが大事。だからなるべく外で食事をしたり、夫が50歳になってからは「夫婦50割」を利用して映画に行ったり。料理もすごく頑張っています。夫は私のことを「みーちゃん」と呼んでいますが、〝みーカフェ〟と称して、カフェ風にランチを出したり、〝みーレストラン〟としてお品書きを作ってみたり。すごく喜んでくれます。
最初の結婚では私にそんな余裕がなかった。浮気して、厳しくて、夫ばかり悪いと思っていたけど、私も夫に厳しかったのだと思えます。
私は体裁よく家族を守り立てて生きる道より、最終的に自分の幸せを選びました。利益よりも、失うことを覚悟したから、今があるんです。後悔は微塵もありません。
撮影・取材/安田真里 刺繍/みずうちさとみ ※情報は2014年掲載時のものです。