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【更年期のリスク】プラセンタ注射は更年期症状には効きません 〈対談〉産婦人科医・高尾美穂先生×STORYライター柏崎恵理 vol.2

ぼんやり知っているつもりだけれど「実はよくわからない」更年期のあれこれについて、柏崎が初心に帰って高尾先生に直球質問。何となくモヤモヤしているココロとカラダが、読めばスッと軽くなるはず!

【更年期のリスク】〈対談〉vol.1 50を過ぎたらほとんど使命を終えてしまう。そんな臓器は卵巣だけです

イーク表参道副院長 高尾美穂先生 医学博士。産婦人科医。またヨガ指導者としても活躍。stand.fmで毎日更新される番組『高尾美穂からのリアルボイス』の気さくな語り口も大人気。
STORYライター 柏崎恵理 本誌STORYの連載ページ【更年期のクスリ】担当歴8年。この対談で高尾先生から睡眠不足を指摘され、生活改善を断行し6キロのダイエットに成功。

更年期に限らず、ストレスは自律神経の大敵! 解決策は早めの就寝時間

柏崎 「卵巣が50歳で機能しなくなる。それに従ってエストロゲンは分泌されなくなり、閉経を迎える。でもそれまでが女性にとってのボーナス期で、これからが人としてのデフォルト」というお話は、女性として知ってて当然だったのに、これまで知らずに来てしまって……。
今考えると冷や汗が出ます。
でも先生、私のように子どもを3人産んでいて、一定期間生理がなかったような人は更年期がズレたりしないのでしょうか?

高尾 変わりませんね。卵巣の寿命がだいたい50歳と決まっているので、更年期が来る時期も全く変わりません。出産回数、生理痛の重さ、PMSなども全く関係ないです。

柏崎 では、関係があるとすれば?

高尾 卵巣機能に影響があるのはタバコ、極端な食生活、例えば、脂質が少な過ぎるようなベジタリアンに近いような食生活、逆に動物性油脂が多すぎる食生活によって、卵巣の血管にも動脈硬化が起きて卵巣機能が落ちるというケースかな。それ以外は断然ストレスですね。視床下部にかかるストレスで卵巣への命令がうまくいかない、みたいな感じです。

柏崎 ストレスって、ホントに体に多大な影響を及ぼすんですね。

高尾 そうですよ。ストレスは怖いのよ(笑)。ホルモンの変動によって起こる不調が更年期の自律神経失調状態ですが、更年期を過ぎたら完全にホルモンは低めに安定するから、50代後半で同じような症状があれば完全にストレスによるものですね。逆に30代では「プレ更年期」「プチ更年期」というような状況に見舞われる人がいます。卵巣機能は維持されているけれど、もう更年期みたいな症状、つまり自律神経失調症のような症状がある。これもストレスが原因。たとえば昼夜逆転の生活や寝不足が原因で、そういった症状が出ることがありますね。

柏崎 では、その前後に擬似更年期のようなものが?

高尾 疑似更年期という言葉は妙ですね(笑)。それはホルモンには関係ないです。ただの自律神経失調です。どの世代にもホルモンとは関係なく、生活習慣などによって不調が出ることはありますから。

柏崎 ちなみに、寝不足とはどの程度のことをいうんでしょうか? 先生は何時に寝ていらっしゃるんですか?

高尾 私は夜11時には寝ますね。

柏崎 早い! 私は海外ドラマを観たりして、なんだかんだで夜中の2時になることもしばしばです。

高尾 遅い! ありえない。

柏崎 だってドラマを観ていないと友だちとの会話に乗り遅れますし……。

高尾 そんなの「私は観てないけど、どういうドラマ?」って言っておけばいいじゃない。

柏崎 え~、でも……。早く寝ると何か損した気分になって。

高尾 損? 夜ふかしするほうが体にとって、よほど損ですよ。

柏崎 はい、すみません。

高尾 その日のうちに寝ることは、自律神経を健やかに保つために本当に大事なんですよ。これは更年期でも、そうじゃなくても、すごく大事!

ホルモン補充療法はパッチやジェル、飲み薬、腟座薬(腟剤)の3タイプ

柏崎 更年期不調に関わる自律神経にとって、睡眠がすごく大事だというのはわかりました。
ところで、50歳になった友だちが「検査の結果、まだエストロゲンは十分出てるから『ホルモン補充の治療は必要ない』と言われたけど、自分は補充療法を受けたい」と言っています。彼女の場合、どうしたら良いでしょうか?

高尾 他の手立てを試してみるのがいいかな。例えば漢方とかね。
漢方は6カ月くらい続けると結構ホルモンの状況は変わるので、半年後に血液検査をしてみて、その結果次第でホルモン補充療法(HRT)がスタートするケースがあります。

柏崎 なるほど。漢方から始めてみるというのはいいですね。

高尾 更年期に対してみんなが言うのは「何が起こるのか、わからなくて漠然と不安」だということ。起こりうる症状は多く見積もれば200くらいありますが、誰にどう出てくるかは、正直言って全くわからないんです。遺伝や生理痛もまず関係ないしね。
何か不安や困ったことがあったら、まずは1回、婦人科に来てくださいねということ。
ただ、婦人科でできることって、いっぱいあるように見えて、実は限られています。
まずは、漢方。実際に7割弱程度の有効性が報告されているので、ちゃんと飲めば効くんです。そもそも更年期の自律神経失調状態、何か大きな問題があって起こっている症状じゃないから、ほどほどに効くものでも改善が見込めるとも言えるわけです。
次に、ホルモン補充療法。シールや塗り薬などの肌から吸収させる方法だと血栓症も乳がんのリスクも低いですから導入としてはいいですね。さらに、飲み薬。

柏崎 私が取り組んだジェルと低用量ピルですね。

高尾 低用量ピルはHRTではないですね。

柏崎 えっ? そうなんですか? 婦人科で処方されたのでてっきり……。

高尾 飲み薬は、子宮のある人とない人では異なるんですが、子宮のある人はエストロゲンと黄体ホルモンの併用療法になりますね。そして腟の中に入れるタイプもあります。これが性交痛には効く。
ほかには、食品からのエクオール。大豆のイソフラボンにはダイゼインという成分が含まれているんですが、ダイゼインは腸内菌が手助けすることでエクオールに変換され、エストロゲンに近い働きをしてくれる。だからエクオールでエストロゲンの代わりをしてもらおうというもの。漢方、HRT、エクオール、ざっくりこの3つしかないんですよ

柏崎 保険範囲内で、更年期障害の改善にプラセンタ注射をする方もよくいらっしゃるんですが。

高尾 ああ、あれは更年期症状に期待はできないです。

柏崎 えっ!!??(絶句)

高尾 プラセンタ注射については、日本と韓国とロシアでしか使われていません。1950年代に発売された製剤に保険適用がありますが、1981年以降、有効とする論文がひとつも出ていない。いずれにしても、プラセンタの注射製剤はHRTの代用とはならないと、ガイドラインに明記されています。

柏崎 ちょっとかなりショックが……。

高尾 プラセンタ注射は高濃度のアミノ酸なので、お肌や髪には効果が期待できるのかもしれないですけどね。
プラセンタとは胎盤です。そもそも胎盤の中にはエストロゲンがいっぱいあるのではないかという期待で始まっているんでしょうけれど、プラセンタの中にエストラジオールに相当するものは検出されないため、期待薄、ですね。

柏崎 ちょっとめまいが(笑)。かつて私も、一週間にプラセンタをマックス4本打てるところがあると聞けば、頑張って通ってたのに……。

高尾 でもSTORY世代の方たちが好むのはわかります。そういう人たちの需要があるから病院で提供してるところは結構あるんでしょうね。病院にしてみたら保険適用もあるし、患者さんの負担が少ないしね。でも今は、私たち医者が自分の好き嫌いで治療する時代ではなく、ガイドラインに沿って治療する時代。更年期障害の治療法としては、いずれ選ばれなくなっていくのではないでしょうか。
いずれにしても、世界的にはプラセンタ注射の効果の話は聞かないです。だって海外の人からプラセンタのことは聞かなくないですか?

柏崎 確かに聞きません。あれ? じゃあ、なんで思い込んでたんだろう。

高尾 更年期症状への対策としては、まずは生活習慣の改善、運動習慣、睡眠時間の確保。これに尽きますね。

次回は「ホルモン補充療法とがんリスク」「具体的な生活習慣の改善」についてです。

撮影/西あかり 取材/柏崎恵理

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