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Lifestyle小島慶子の「ハラゴエ!」

「私の卵巣たち。よく頑張ったね。引退おめでとう」小島慶子さんの【更年期】への向き合い方

エッセイスト、メディアパーソナリティの小島慶子さんによる揺らぐ40代たちへ「腹声(はらごえ)」出して送るエール。今回は「更年期」について。

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目次 ★ 小島慶子さん
★ 『未知のときには恐怖だった更年期。だけど…』


小島慶子さん

1972年生まれ。エッセイスト、メディアパーソナリティ。2014〜23年は息子2人と夫はオーストラリア居住、自身は日本で働く日豪往復生活を送る。息子たちが海外の大学に進学し、一昨年から10年ぶりの日本定住生活に。

『未知のときには恐怖だった更年期。だけど…』

それは30代も終わりに近いある日のこと。髪を切りに行ったサロンで、新入りの店員さんが私の前に置いてくれた雑誌が、いつもと全然違っていました。そう、40代向けのラインナップになっていたのです。密かに感慨に浸りながら、お姉様方のおしゃれな雑誌を拝読。見慣れない言葉がたくさん載っています。「頰のそげ、こけ」「まぶたのたるみ」「首のしわ」……そして巻末に近づくと必ず「更年期」の記事がありました。ホットフラッシュ、頭痛、めまい、疲れがとれない、起き上がれない……なんだか、みんなつらそう。未知の世界です。私もいつかこうなるんだ! とすっかり怖くなってしまいました。

早速、かかりつけの婦人科の先生に相談しました。「更年期が怖いんです」「慶子さんはまだ先の話ですよ」「でも、40代向けの雑誌にはどれも恐ろしい話が!」「大丈夫。今はいろんな対処法があるから、軟着陸できますよ」。先生の話を聞いて、ちょっと安心しました。人生の先輩である先生ご自身も、ホルモン療法などを上手に使って乗り切ったとのこと。

それからあっという間に数年が経ち、気づけば47歳になったある日のことでした。突如、体の奥深いところで異変が発生。これまで味わったことのない感覚です。じっと座っていられない。痒いのとも痛いのとも違う、これはどう考えても、子宮が帯電している……。子宮口のあたりに静電気が溜まっているような猛烈な不快感です。ムズムズ、イライラして全く集中できません。腹から背骨へと蟻が駆け上がるような感じがどんどん強くなって、スタジオで番組を収録していても、椅子の上でモゾモゾしたり足を組み替えたり。なんとか表面は取り繕っても、心の中では「誰か私の腰にアースをつけて!!!」と叫んでいました。アースを引きずりながら歩いたらお腹の電気が抜けてどれほど楽になるだろうかと。場所が場所だけに気軽に人にも相談できず、孤独でした。

でも、こんな時こそかかりつけ医です。婦人科に駆け込み「先生、私、お腹に帯電してるみたいなんです。助けてください」と相談。「見たところ炎症などの異常はないですね。ホルモンの検査をしてみましょう」と血液を採取して、結果は「更年期の始まりかも」とのことでした。いよいよ来たか。更年期の症状は人それぞれで、ほとんど問題なく過ごせる人もいれば仕事を辞めざるを得なくなる人も。体調に波があり、次から次へといろんな症状が出ることもあります。私の子宮の帯電は、どうやら更年期症状の「膣の灼熱感」というやつに該当するのではないかと思われました。灼熱感! そんなワードは思いつかなかったけど、不調は千差万別なので、帯電感で悩んでいる人もどこかにいるかも知れません。

それからは女性ホルモンのジェルを毎日お腹か太ももに塗り、うんとしんどい時には先生の判断で女性ホルモンを注射したこともありました。乾燥による不快感を軽減できるかも知れないと聞いて膣レーザーも体験。帯電感がおさまってきてほっとしたものの、次々と不調が現れました。膀胱炎が頻発して内科へ、眩暈がして耳鼻科へ、手指が痺れて脳神経内科へ、動悸がするので循環器内科へと駆け込んでは、結果は毎度「特に悪いところはないので更年期の影響かも知れませんね」。

もう勘弁してくれよ、ホルモン許せねえと思いながら暮らしていたある日。かかりつけの婦人科で、子宮内に入れているミレーナという器具の定期検査をしました。いつも通り超音波で卵巣もチェックすると、なんだか様子が違います。卵巣が、ちっちゃくなっていたのです。それまでは杏のようにぷっくりと丸かったマイ卵巣が、二つともぼんやりとした小梅ちゃんくらいになっていました。その頃には私の女性ホルモンの値はぐんと下がり、めでたく閉経を迎えつつあったのです。

長年の排卵のお役目を終え、シュッと萎んだ卵巣たち。画面を見ながら、なんとも言えず愛おしい気持ちになりました。「これまでお疲れ様、ありがとね」と手を合わせると、不思議と変わりゆく体への慈愛と労りの気持ちが湧き上がりました。ああ本当に、可愛い私の卵巣たち。よく頑張ったね。引退おめでとう。

考えてみれば、閉経こそ赤飯を炊くべきめでたい節目です。長年苦しんだ生理とおさらばできるのですから。更年期だって、いつかは必ず終わります。そう考えたら、体と折り合いをつけながら無理せずやるか、と思えるようになりました。

今も片頭痛や集中力の低下などいろんな不調はあるけど、ホルモンジェルとサプリで大波小波をやり過ごしています。何より心強いのは、かかりつけのお医者さんがいること。そして更年期あるあるを披露し合える仲間たち。これを読んでいるゆらぎ世代の皆さんもきっとホルモンに振り回されているはず。自分を労って、励ましあいながら乗り切りましょう!

文/小島慶子 撮影/河内 彩 ※情報は2026年8月号掲載時のものです。

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