じわじわとひそかなブームになっている「写経」。シニア世代だけでなく、最近では、休日や仕事終わりに写経をする人が増えているんだとか。落ち着いて一字一字を丁寧に書く時間は、心に平穏を与えてくれるだけでなく、自律神経にも良い効果があることがわかってきました。この記事では、写経が現代人にいい理由と、STORYライター笹が実際に写経を体験してどうだったかを紹介します。最近、集中力がないな、頭がぼーっとするなという方、必見です!
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★ 「写経」がなぜいいのかを専門家に聞いてきました!
★ STORYライターが薬師寺 東京別院でお写経に挑戦!
★ 1. 【受付】心がまえやお道具の説明をお聞きします
★ 2. 【入堂】体内と体外を清めます
★ 3.【お写経】墨をすすって開始!
★ 4.【納経】書き終わったお写経用紙を仏様にお供えします
★ 心がスッキリし、凛とした気持ちに
★ 他にも東京近郊で気軽に写経ができるスポットはこちら
実は気軽にできる本格写経体験!
「写経に興味はあるけど、字が下手だから」「筆を持つのは苦手だから」と、ためらう人が多いのでは?でも、写経というものは、本来、心をこめて丁寧に書くことが大事で、字の上手い下手ではなく、心の変化を1枚の紙の上で自分で確認することが大事なのだそう。本格的な写経体験は筆や墨汁、紙を用意して、心落ち着ける環境を整えて.‥と、はじめるのには色々準備も必要なのか?と構えてしまうかもしれませんが、実は気軽に写経を体験できるところがあるんです!体験できるところのほとんどが予約や持ち物が不要で、2000円程の費用で楽しめます。また、1時間くらいあればできるので、ちょっとした気分転換に仕事帰りや休日にふらっと訪れる人も多いんだとか。
「写経」がなぜいいのかを専門家に聞いてきました!
ストレスや更年期が原因で自律神経が乱れやすい現代。強いストレスが原因なだけでなく、複数の作業を同時にこなす「マルチタスク」や、携帯電話やソーシャルメディアの普及による「情報過多」も問題です。マルチタスクを行ったり、膨大な量の情報を処理するたびに、脳は莫大なエネルギーを消費し「注意力・集中力」を使います。自律神経の中枢部も脳にありますから、脳疲労によって自律神経が乱れるのはよくあることなのです。まさに情報過多の社会に生きる私たちは、普段、これらの能力をほとんど外部情報の処理に使ってしまっています。これでは脳が疲労するばかりか、注意力が外に向けられている為、自分の心身の状態に心を向ける余裕がありません。脳に疲労が溜まると、心身に不調が現れますが、それに気がつけないのでちゃんとケアできず、自律神経が乱れてしまうのです。心身を健やかに保つには自律神経を整えることが大切ですが、では、どのように整えたら良いのか?「雑念を払い、ここ1点に集中できる写経が効果的」と言われていますが、なぜ「写経」がいいのか。写経では、日頃使わない難しい漢字や、聞き慣れない語句がたくさん出てきます。人は、慣れない行為をしている最中は自然と集中するものです。写経という一つの行為に注意力、集中力が向けられれば脳の負担は軽くなり、自律神経の負荷も小さくなります。さらに、脳内にゆとりが生じるため、内面に関心が向くようになり、物事を客観視する余裕も出てきます。「お手本通り266文字書けば終わり」という明確なゴールがあるのも写経のよさ。達成感は副交感神経の働きをアップするといわれています。
1980年横浜市生まれ。慶應義塾大学医学部医学科卒業。慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターどで精神科医として診療に従事。2011年より建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行。2014年より臨済宗建長寺派林香寺住職となる。近著に『会社では教えてもらえない 集中力がある人のストレス管理のキホン』(すばる舎)など多数。
STORYライターが薬師寺 東京別院でお写経に挑戦!
日々、情報や締め切りに追われて休まる暇もないライター生活。パソコンやスマホ頼みではなく、たまには字を書いたり、邪念にとらわれず無心に何かに集中してみたい‥。
そんな笹が今回訪れたのは‥.
アクセス/JR五反田駅東口より徒歩約7分
お写経/毎日 9時〜17時(現在、第1・第3金曜日は、午後6時~午後9時まで、夜もお写経道場を開放しているそうです。時期により変更もありますので、必ず事前にご確認ください。)ご自宅でお写経ができるセットも用意しているそうです。詳しくはホームページをご覧ください。
http://www.yakushiji.or.jp/syakyo/index.html
1. 【受付】心がまえやお道具の説明をお聞きします
2. 【入堂】体内と体外を清めます
道場入口にある「丁子」を前歯で挟むようにして口に含み、体内を浄め道場に入ります。丁子とは漢方薬の一種(クローヴといえば聞き覚えがある方も多いでしょう)。お写経中は口に含んでおきます。そうすることで、無言になれるという効果もあるそう。
そして、象の形をした「香象」をまたぎ、象の背中から出でいる線香の煙で体外を浄めます。強くやさしい象は仏教と縁のある動物だそうです。
首にかけた輪袈裟と服装を整えたら席につきます。机の上にはスマホなどももちろん、お写経道具の他は何も置かないようにします。教室のようにたくさんの机が並んでいて、正面には薬師如来像が祀られています。みなさん物音も立てず、集中してお写経をしていらっしゃいました。私も体・口・心(三業)を整えてお写経に臨みます。
3.【お写経】墨をすすって開始!
お写経用紙の最後、「為」と書かれた場所に願い事を書き、住所、名前、年齢、今日の日付、何巻目のお写経かを書きます。ここからいきなりなぞれるお手本がなくなり、自分の字で書かなくてはならず、また心の内を聞かれているようで緊張します。
4.【納経】書き終わったお写経用紙を仏様にお供えします
お写経体験を行なってから数日後、奈良にある薬師寺から「納経」したことをお知らせするハガキが届きました。 一字一字心をこめて書き上げたお写経が、あの奈良の薬師寺に奉納して頂けたと思うと、ひとつ徳を積んだような気分にもなり、改めて有意義な時間だったと実感します。
心がスッキリし、凛とした気持ちに
あっという間の一時間半。お香や墨の香りに癒されながら、静かに自分と向き合う時間が過ごせました。集中したからといって疲れるわけではなく、達成感や幸福感を感じていることに気が付きます。字もだんだん上手になってきて。仕上がったお写経を眺めていると、自分を褒めてあげたくなるような満足感もあります。
丁寧に文字を綴る作業を通して集中力を高め、気持ちを穏やかにする写経体験。体験を終えれば、凛とした気持ちになり、心がすっきりとします。日々考え事が多く疲れている人、ストレスがたまっている人には、「ただ今に集中する。無心になることで心をリセットする」時間をお写経という形でもってみるのもいいでは?と思いました。
他にも東京近郊で気軽に写経ができるスポットはこちら
今回は、薬師寺東京別院にてお写経を体験させていただきましたが、他にも東京近郊で写経体験ができる場所をご紹介しておきます。
撮影/BOCO 取材/笹 利恵子