毎日、取材であちこち飛び回るSTORYライターたちの密かな楽しみは、気心知れた友人や家族とのお酒時間。 「その店どこ?」「そのお酒、手土産にしたい!」そんな会話が飛び交う、のんべえ集団。それが「#STORYのんべえ部」です。 新たに始まったこの連載では、大人が気分よく酔える“美味しい情報”を本気でお届け。 第1回は、大人の遠足気分で行ける東京都内の酒蔵へ。知っているようで知らない、日本酒の世界を学んできました。
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「澤乃井」のシンボルであるサワガニ。清らかな沢の水に棲むことから、“澤乃井”の名にちなみブランドマークとして親しまれています。
都内に10ある酒蔵のうち、もっとも西にあるのが小澤酒造
日本酒好きなら耳にしたことがある人も多い『澤乃井』という名前。酒蔵の名前と混同されがちですが、『澤乃井』はお酒の名前であり、醸造しているのは『小澤酒造』という酒蔵です。酒銘は、酒蔵がある場所の昔の地名が『沢井村』であったことに由来しています。小澤酒造まで、青梅駅から奥多摩線で13分、都心から少し電車に揺られるだけで、こんなにも空気は澄んで変わるのか…。
多摩川沿いの沢井駅で降りると現れるのは、創業・元禄15年の歴史を誇る『澤乃井』の醸造元「小澤酒造」。
山の澄んだ空気と、日本酒の芳醇な香りに包まれた酒蔵は、どこか神聖で凛とした気持ちに。320年以上受け継がれてきた自然と共に息づく酒造りの世界を、じっくり体感してきました。
小澤酒造の正面入口。軒先の杉玉は、新酒の完成を知らせる酒蔵のシンボル。
まず教えていただいたのが、軒先に吊るされた“杉玉”。
酒造りの御神木とされる杉の葉を使って作られており、お酒の神様を呼び、「酒造りの安全」を祈願する意味が込められているそうです。
さらに、新酒ができると鮮やかな緑色の杉玉に取り替え、「新酒ができました!」と知らせる役割も。時間の経過とともに少しずつ茶色へ変化していくそうで、その移ろいもまた風情があります。次はぜひ、新酒の時期ならではの美しい緑色の杉玉も見てみたいですね。
酒蔵に行くと必ず見かける杉玉に、そんな意味があったとは知らなかった…! こういう“知ると誰かに話したくなる豆知識”も、酒蔵見学の醍醐味です。
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江戸時代から使われている蔵の内部。重厚な梁は何百年もの時を刻んできた酒蔵ならではの風景。
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この日の蔵の室温は18度。外の暑さが嘘のような、ひんやりと心地よい空間。
次に案内していただいた蔵の中は、驚くほどひんやりとしていて心地いい空間。
元禄時代の創業当初から大きな改修なしで現役だなんて驚きです。酒蔵は土蔵造りで天井が高く、熱気が上に行くことに加え日の光が入らないため、夏でもエアコンなしで20度前後の室温を保っているそう。
空調設備などない時代に、外気の影響を受けにくいよう設計されたという蔵には、先人たちの知恵が随所に息づいています。見上げれば、重厚な梁が頭上を支えており、こんな大きな木材を当時どうやってここまで運び、組み上げたのだろう…そんな想像まで膨らみます。木々が静かに呼吸しているような空間の中で、何百年も受け継がれてきた営みの尊さを感じました。
蔵の中のタンク。仕込みにはステンレス製。貯蔵にはホーロー加工されているタンクを使用するそう。
こちらは、お酒を熟成・貯蔵している“貯蔵蔵”。ずらりと並ぶ巨大タンクの光景は、かなりの迫力です。タンクに書かれている数字の下段は容量を表しているそうで、奥に並ぶ大きなタンクは、なんと8,000リットル以上! 「8,000リットルってどれくらい?」と思いますが、毎日1合ずつ飲んでも飲み切るまで約120年かかる量なのだとか。一升瓶に換算すると約4,500本分と聞いて圧倒されました。この巨大なタンクの中で、お酒がじっくり熟成されているそうです。
お酒造りに欠かせないお米の話
日本酒造りに欠かせない酒米「山田錦」。ここまで磨き上げられることで、スッキリ澄んだ味わいが生まれます。
さらに興味深かったのが、“お米”のお話。
澤乃井の大吟醸に使われる「山田錦」は、普段食べているお米とはまるで別物。日本酒造りではお米を丁寧に磨いて使うのですが、磨く前の玄米と精米後のお米を見比べると、その違いは一目瞭然です。
「こんなに小さくなるまで削るんだ!」と驚くほど。しかも、この精米作業、とても繊細。急いで削るとお米が割れてしまうため、精米歩合35%の大吟醸はなんと3〜4日かけてゆっくり磨いていくそうです。普段何気なく飲んでいる日本酒の一杯の裏側には、こんなにも手間と時間がかかっているのか…と、お酒造りの奥深さを改めて実感しました。
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圧搾機で酒を搾ります。
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粕剥きの作業。
次はもろみの圧搾を行う「上槽室」へ。日本酒造りは、原料となる玄米を精米・蒸米するところから始まり、麹造り、酒母造り、仕込み、上槽、濾過、火入れ、貯蔵、瓶詰めという、いくつもの工程を経て、ようやくできあがります。「上槽室」では酒母に麹や蒸米を混ぜる仕込みの後、発酵したもろみを原酒と酒粕に搾って分ける作業を行います。実際の作業を見たい方は12月ごろに訪れると、窓越しに作業を見学できるようです。
熟成酒『蔵守』も人気
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柔らかな灯りに照らされた蔵の一角。長い年月をかけて熟成される酒が、静かに眠っています。
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熟成された古酒『蔵守』は、時を重ねて琥珀色に。
小澤酒造では、『蔵守』という熟成酒も造られています。
棚には、2016年から熟成されているものなど、長年ここで眠り続けているお酒がずらり。長い年月をかけて熟成されたお酒は、ブランデーや紹興酒のような深みのある味わいになるそうで、「日本酒ってこんな表情もあるんだ…」と興味津々。
子どもたちの成人のお祝いに生まれ年のものを・・なんていうのも粋ですね。
酒造りを支える“自然の恵み”
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酒造りの源となる湧水を見学。
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岩肌の奥から静かに湧き出る天然水。約200年前に掘られた横井戸は、今も酒造りを支え続けています。
小澤酒造の酒造りを支えているのが、山から湧き出る豊かな水。蔵の敷地内には、なんと約200年前に手彫りで掘られた“横井戸”が今も残されています。通常の井戸のように縦に掘るのではなく、山の地形を活かして横へと掘り進め、湧き水を確保するという非常に珍しい造り。140mもの長さを持つこの井戸は、まさに“山の恵み”の象徴です。さらに小澤酒造では、中硬水と軟水、異なる水質の井戸を使い分けながら酒造りを行っているのだとか。「いい水があるから酒ができる。だからこそ山(環境)を守っていきたい」…日本酒造りが単なる“ものづくり”ではなく、自然と共にある営みなのだということを感じました。
見学のあとに味わう一杯は格別
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蔵の話を聞いた後だからこそ、味わいもひとしお。
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その時期おすすめの日本酒を気軽に飲み比べできます。
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きき酒のお供は、澤乃井オリジナルのお猪口。帰宅後も“酒蔵遠足”の余韻に浸れそう。
日本酒について学んだ後は、お待ちかねのきき酒タイム。澤乃井の数あるラインナップの中から、その時期おすすめのお酒が2種類用意されています。見学料にはお猪口代も含まれていて、そのままお土産として持ち帰れるのも嬉しいポイント。「さっき見学したあの蔵で、このお酒が造られているんだ…」そんなことを思い返しながらいただく一杯は、いつもより少し特別で、より味わい深く感じます。
多摩川を眺めながらひと息『清流ガーデン澤乃井園』
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緑に包まれた『清流ガーデン澤乃井園』。
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多摩川に架かる「楓橋」。清流と緑に包まれた景色は、東京とは思えない美しさ。
帰りはぜひ、多摩川の清流を見下ろす『清流ガーデン澤乃井園』にも立ち寄っていただきたい。とにかく、気持ちがいい。
川のせせらぎ、山の緑、澄んだ空気。都内とは思えない景色が広がり、時間がゆっくり流れているような感覚になります。
園内には、清流が一望できるテラス席や土産店のほか、自家製豆腐や湯葉料理を楽しめる「ままごと屋」も。
さらに、日本酒だけでなく、仕込み水を使ったコーヒーやスイーツを楽しめるテラスカフェもあり、飲める人も、そうでもない人も居心地抜群です。
空気が澄んでいて自然が本当に豊かなので、酒蔵見学とあわせて川遊びやハイキングを楽しむのもおすすめ。澤乃井の日本酒が、この奥多摩の自然の中で育まれていることを五感で感じることができます。
東京の奥座敷とも呼ばれる青梅の地で、酒造りの伝統と革新を続ける小澤酒造。
酒蔵の空気、湧き水の美味しさ、自然の豊かさ…。その魅力は、実際に足を運んでこそ味わえるものばかりでした。
大人になると、“ただ飲む”だけじゃない時間がなんだか嬉しい。
奥多摩の自然の中で楽しむ“昼から日本酒”、ぜひ一度体験してみてください。
小澤酒造株式会社 住所:東京都青梅市沢井2-770
電話番号:0428-78-8215
Web:
https://www.sawanoi-sake.com/
【見学について】
平日 11:00・13:00(1日2回)
土日祝 11:00・12:30・14:00(1日3回)
【所要時間】約40分
【定休】月曜(祝日の場合は火曜日)
【料金】700円(税込)/1人 (20歳未満の方は無料)
【内容】酒蔵内の見学、テイスティング、オリジナルお猪口付き