どんな職種にも女性が半数というのが理想ですが、日本ではまだまだ。特に、命を預かる船長や機長などは圧倒的に男性が多数です。そんななか、今回登場する女性たちは、「やりたい」意志を貫き、ガラスの天井を打ち壊して進んでいます。そして、そのあとを若い世代がどんどんと追いかけています。どんな職場にも女性がいる日常は、すぐそこまで来ているのです。
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野口枝里さん 45歳・東京都在住
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島国日本のライフラインを支える海運。国内大手海運会社で初の女性外航船船長になった野口さんは、海の近くで育ち、自然と海上の仕事に憧れるように。「近所に船関係の方がいて、商船大学に入学すれば日本丸や海王丸で訓練して航海士になれると聞き、夢が広がりました」。
東京商船大学(現東京海洋大学)に入学。航海学コース生徒45人の中で女性は5人。「海王丸の出航時の登檣礼を見た時の感動、夏の練習船での航海でこの世界に魅せられました。台風時のひどい揺れでマグロのように皆がトイレに横たわったり…数えきれない思い出も。きつい、辛いに男女差はなかったものの、就職時に初めて壁にぶつかりました。女子学生が船会社に就職するのは狭き門だと」。
苦労の末、新卒で近海と内航の船の運航会社に入社。「乗船中に日本丸とすれ違った時、最後の帆船実習のキラキラした時間を思い出し胸がチクリ。数年後、同級生の乗船する大型外航船に出合って気持ちが溢れ…もう一度チャレンジしようと」。
川崎汽船では初の女性航海士に。「長期間の乗船中に女性が1人、ルール作りも大切でしたが、実際船の上では1つの職務に1人という体制なので対等に仕事はできたかもしれません。体力差は道具や工夫でカバーできることも。3等から2等航海士へ、自動車運搬船からLNG船へ。ある時厳しい船長から『荷役全体、本質の理解不足だ』と指摘を受け全長330m級の大型タンカーで原理原則を学び直したことは良い経験になりました。船長は、船の最高責任者として、危険物含む貨物への責任は勿論、安全な運航、そして乗組員の成長を促しチームのパフォーマンスを上げることも重要な任務なんです」。
その後、同業他社の男性と結婚、出産へ。
「妊娠が判明した時は、乗船直前で、会社や周りに迷惑をかけると申し訳ない気持ちに。これで乗船の夢は途絶えるのかとも思いましたが、会社は気にしなくて良いと産後の環境を整えてくれました。息子が2歳半で乗船復帰。一度外航船に乗ると半年は帰れないこともあり、出産前から夫や家族、周りの方との連携を強めて、読み聞かせの録音やテレビ電話などで息子への思いを伝えました。『大大大好きだよ』という言葉は頻繁に伝えています。’24年大型船の船長として大海に出て…息子は私の仕事を誇りに思い応援してくれる、こんな未来は想像もしていなかったです。今の自分は黎明期に活躍された先輩女性の苦労や悔しさの上に成り立つもの。男女差なく子どもがなりたいと思うもの全てになれる未来へ、私も一つのロールモデルになれたら嬉しいです」。
撮影/吉澤健太 取材/竹永久美子 ※情報は2026年6月号掲載時のものです。















