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【アートで共創教育 連載vol.6】チームラボ・松本明耐さんに聞く 「年齢が違うお子さんたちは、ここでそれぞれどのように楽しんでいますか?」

行ったことはあるけれど、ただ「きれい!」で終わってませんか? チームラボボーダレス――この新感覚ミュージアムが目指す「共創社会」について、子どもたちと一緒に考えてみます。

【アートで共創教育 連載vol.5】チームラボ・松本明耐さんに聞く「ミュージアム内で個人的にお勧めの場所はどこですか?」

年齢が違うことで体験の仕方が変わる! だから子どもたちの楽しみ方もさまざまです

大規模ミュージアムの「チームラボボーダレス」。
3人のお子さんをお持ちのチームラボ松本さん。
13歳の中1男子、11歳の小5男子、5歳の女子と年齢も性別も全く違う3人は作品の楽しみ方もそれぞれ違うといいます。
今回は、松本さん自身の3人の子どもたちの、楽しみ方をお聞きしました。

チームラボ 松本明耐さん チームラボの教育的プロジェクト、「チームラボ 学ぶ!未来の遊園地」を世界に拡げている。13歳、11歳、5歳の3児の父としての顔も持つ。

5歳だと「あ~、楽しい!」だけで終わるものが、中学生になると「裏の世界」が気になってくる

Q. 松本さんのお子さんもよく遊びに来るということですが、年齢や成長の度合いで楽しみ方は違いますか?

13歳で中学1年生の長男は、親だけでなく、友達も誘って来場し、会場では親とは別行動で友達と一緒に鑑賞をするようになりました。
鑑賞の仕方は、初めて「チームラボ 学ぶ!未来の遊園地」で遊んでいた頃とはかなり変わってきています。作品の色や音が変わる部分だけでなく、チームラボボーダレスのコンセプトや作品同士の関係性について考えはじめていますね。

「世界は暗闇から生まれるが、それでもやさしくうつくしい」という作品では、文字に触れると、それぞれの文字がもつ世界が現れるのですが、「土」の字が出ている時に「雨」が降ると「芽」が出たり、「鳥」が「木」にとまるという作品内の相互作用にも気づき、鑑賞者が1つの世界を創っていく作品であることを理解しています。

5歳の長女は、「マルチジャンピング宇宙」という作品でトランポリンのように跳ねて楽しんでいますが、11歳の次男は、そこに塵が集まってきて、ブラックホールが作られて全部飲み込んでゆくことを理解し始めています。

Q.え~! 私はそこまで気づきませんでした。

僕の長男は、7〜8年前から「チームラボ 学ぶ!未来の遊園地」の作品を体験してきていますからね(笑)。
チームラボボーダレスの展示されている作品は、互いに影響を与えあっている作品が多いので、作品を鑑賞しているとすべてのものに繋がりが見えてきます。
チームラボボーダレスにはアプリで作品のキャプションが読めるようになっているのですが、それを見ながら長男は「なるほど〜」と言っています。

成長してくると、作品と会話をし始める

Q. 11歳の私の娘と息子は「蝶」の字を触ると蝶になったり、「火」の字を触ると火に変化したりするのはわかったのですが……。それぞれの関係性は、もう少し大きくなってきてからの楽しみ方ですね。

そうです。まだ、うちの長男もたどり着いていないのですが、
「なぜチームラボは、このボーダレスの展示をやりたかったのだろう?」というところまでいったらいいな、と思っています。
「この作品めちゃくちゃいい!」というのもアート鑑賞ですが、「作家はなぜこの展示をしようと思ったのか」と考えながら帰るのもアート鑑賞ではないでしょうか。
チームラボボーダレス内には、未来の遊園地の「作品の背景について」のキャプションを掲示しています。作品を通して、自分の見方とは別の見方で、世の中を見られるようになったり、世の中への興味につながっていけばいいと考えてます。

型どおりの美術鑑賞ではなく、子どもが大はしゃぎでわいわいと集まるような台湾での美術展示を見て、
「なるほど! これでいいのか。こんなふうに子どもを連れてきてもいいんだ!」と思いました。知識ゼロでわからないまま終わっちゃうアート鑑賞ではなく、小さい頃からの接点のようなものがあれば楽しめるのだと思ってます。
うちの長男は、そういうところまできてますね。友達と一緒に「これは、どうなってるんだろう?」みたいな感じで回ってますよ。

Q. アートの背景のことが、どんどん気になってきているんですか?

はい。そうですね。
大切なのは、子どもたちがそのアートをどう考え、世界をどう捉えるかということだと思うんです。
チームラボボーダレス内の作品では、蝶は触ったら落ちて死んでしまいます。花も触り続けると散っちゃうし、動物もいなくなってしまう……。そこで、〈何で死んじゃったんだろう〉〈どうしてなくなったんだろう〉〈それって、どういうことなんだろう〉と考え始める。
それが、本当の意味でのアート鑑賞につながる。
今の時代、答えのないものが多いですよね。自分なりにどう解決するかという力を養うことにつながるのかもしれません。

Q. 一方で、5歳の娘さんや、小学5年生の息子さんはどのような見方なのですか?

5歳の娘はまだ「あ~、楽しい!」と純粋に感動しています。
5年生の次男は、ここで起きていることを理解し始め、自分が行ったことに対して、何が起きるのか、と関係性を理解し始めました。
「運動の森」のエリアに‟ケン・ケン・パ”をすると床にさまざまな色やモチーフが描かれる作品があるのですが、そこでただ“ケン・ケン・パ、ケン・ケン・パ”と進むのではなく、なるべく同じ色と形が出るような進み方を考えて工夫しています。そうすると色も音もさらに美しく変化したりするのですが、その作品の意図に本人が気づき、それを試すような行動をしています。
子どもの年齢によって作品見方も変わりますね。

「問い」を立てて「自分なりの答え」を見つけるということ

Q. 私も本誌(2021年10月号)で、「答えのない時代、『アート』が子どもを強くする!」という企画に取り組んだのですが、社会に出ると答えはひとつじゃないものばかりですし、そのためには「共創」の価値観が大事だと感じます。アートに触れて、自分で考え、友達と話し合う――そういう過程が大事ですよね。

はい。「問い」を立てることが大事だと思います。
アート鑑賞しながら「問いを立てる」。これも、アートの楽しみ方のひとつだと思います。学校の勉強では、「問い」が先に決まっていて、最適な解答をすることが多いですね。
それも重要なことですが、自分で「問いを立てる」ということも、社会に出ていくうえでとても大事なことです。
そして、答えはひとつじゃない。
たとえば、「いい本屋さんとは?」という問いに対する答えは、カフェが併設されて店長と楽しいコミュニケーションができる本屋なのか、それとも、たくさんの本が揃ってすぐに届けてくれるインターネットの本屋なのか。
軸と見方が違うだけで、どちらもいい本屋さんです。優劣をつける話じゃありません。

Q. 問題は、自分でどう対応していくかということですものね。

そうです。〈人間にとって本屋ってどういうことなんだろう〉という問いがあって、それに対して、〈自分だったらこういうものがいいと思う〉とそれぞれが解答できる力がこれからを生きる子ども達には求められているんじゃないかと。

Q.  アートはそういう力を養ってくれる?

そうなるかはわかりませんが、子ども達が「未来の遊園地」で共同で創造的な体験をすることや、「運動の森」で身体で世界を捉えることが、これからの未来を生きる上で、いい影響があるものになればと思っています。

私自身も子どもの頃、家族旅行でトリックアートの美術館によく行き、そこで鏡を間に挟んで脚を上げて「変な顔~、空中遊泳!」と楽しむのが好きでした。おそらく私のアート体験、アート好きはそこから来ているのでは……。
目の錯覚で摩訶不思議な世界に紛れ込み、「なぜ、こうなるんだろう?」「これを作った人は何をしてほしいんだろう」と疑問を持ちました。
チームラボボーダレス内の「花動物」では、娘も息子もカンガルーを見つけて触って「散ってバラバラになる~」と楽しんでいました。
まだ深い意味までは考えていませんでしたが、「しっぽから触っても頭から触っても一緒なのかな?」と言いながら、触る場所で何か違いがあるのか、自分たちなりに考えていました。
「ここは、どう?」
私も触り方を変えながら、2人に話しかけてみる。
おそらくこういう一歩から、アート鑑賞が始まっていくのですね……。

松本さん、ありがとうございました!

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撮影/西 あかり 取材/東 理恵

森ビル デジタルアート ミュージアム : エプソン チームラボボーダレス 森ビル株式会社とアート集団・チームラボが共同で2018年6月から東京・お台場のパレットタウンで展開する「地図のないミュージアム」。10,000平方メートルの中に520台のコンピューターと470台のプロジェクターを駆使して、圧倒的なデジタルアートを繰り広げる。

https://borderless.teamlab.art/jp/
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