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江口のりこさん(44歳) 2万円を握りしめて東京へ。女優を志したのは中学生から…その半生とは

“江口のりこさんが出るなら絶対面白い!”エキセントリックな役から等身大の役まで、ありとあらゆる役柄をこなし、STORY読者に絶大な人気を誇る江口のりこさん。その半生は、まるでドラマか? 映画か? とすら思わされます。飾らない等身大の江口さんが淡々と語るエピソードは必見。芝居に対する思いも聞きました。(第1回/全3回)

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江口のりこさんprofile 1980年生まれ。兵庫県出身。俳優。2002年、映画『金融破滅ニッポン 桃源郷の人々』で映画デビュー。2020年公開の映画『事故物件 恐い間取り』で第44回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。’22年、エランドール賞新人賞を受賞。最新作は主演作『あまろっく』(’24/中村和宏監督)、『お母さんが一緒』(’24/橋口亮輔監督)、『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(’24/武内英樹監督)など。TVドラマ「時効警察」シリーズ(’06・’07・’19/テレビ朝日)、「半沢直樹」(’20/TBS)、「ソロ活女子のススメ」シリーズ(’21~’24/テレビ東京)、「SUPER RICH」(’21/フジテレビ)などでも個性を発揮し、人気を博している。8月30日に主演映画『愛に乱暴』が公開予定。
【INDEX】 みんなそれぞれ違う性格の5人きょうだい
中学生の時には今の仕事を志していました
日常を感じられる戯曲に惹かれて
芝居は私と社会を繋げる、かけがえのないもの
夢にまで柄本明さんが出てきて叱られたことも
芝居って、難しいからこそ面白い

みんなそれぞれ違う性格の5人きょうだい

兄が2人に、双子の姉、そして妹の5人きょうだいで育ちました。姉とは顔は似てるんですけど、中身は向こうの方が社交的だし、おおらかな性格をしていますね。妹のことは昔から大好きだけれど、なんか小さい時はいじわるをしたりも……。そうすると、一番上の兄が仕返ししてくるんですよね、「いじめるな!」って。2番目のお兄ちゃんは優しかったな〜。まぁ、みんな違う人間ですよね。うちは小さい時から父親の気分転換みたいなもので引越しが多かったのですが、小学校の途中から住み始めた土地が心底好きになれなくて。生まれた場所や、それまで暮らしたところは好きだったけれど、どうしてこの土地なの? と。コレというはっきりした理由はないけれど、雰囲気だったのか? そこから早く脱出したいと思っていました。

中学生の時には今の仕事を志していました

その土地から出たいとは思っていたけれど、不登校になることはなかった。学校は行ったら行ったで、面白い友達とか好きな先生もいたし部活も楽しかったし。陸上部では長距離、顧問の先生は厳しいながら面白かったし、大好きだったな。身長は当時から高い方だったけれど、女子にモテるとかはなかったですよ(笑)。早く自立したいって気持ちは強かったです。中3くらいかな……芝居の世界に入ってみたいと思うようになりました。田舎暮らしでお金もないから映画はもっぱらテレビで観ていましたけれど。学歴うんぬんをうるさく言われる実家ではないので、中学を卒業してすぐに働き始めて、稼いだお金で神戸の映画館によく通っていましたね。仕事が休みの日や早く終わった時に週2回くらい、1人で。どんな映画が好きか? というよりも、劇場で選んでいました。今はもう2箇所ともなくなっちゃったけれど、アサヒシネマと、神戸アートビレッジセンター。この劇場でやる映画は面白かったんですよね。

日常を感じられる戯曲に惹かれて

映画って面白そうだな、どうしたら出られるんだろう? と考え、“劇団”ってところに入るのが近道なのかな、と。図書館で、いろんな人の戯曲を読みました。ただ、どれも日常とかけ離れた表現にオーバーさを感じて、人前でやるのは恥ずかしいなと思っていた中で唯一、岩松了さんの書いた戯曲はテンションが日常のまま。コレだったら恥ずかしくなくできるかな? と。岩松さんが過去に所属していたのが劇団東京乾電池で、その頃日本映画でよくベンガルさんや柄本明さんの姿を見ていたので、ここに入れば何かいいことがあるのかな? と思いました。バイトしてせっかく貯めたお金をお兄ちゃんが持っていってしまうこともあったりして、(あ、もういますぐ東京に出た方がいいや)って。東京乾電池の研究生に応募し受かったのを機に、なけなしの2万円を握りしめて東京へ……18歳の終わり頃でしたね。

芝居は私と社会を繋げる、かけがえのないもの

住み込みの新聞配達をしながら1年が過ぎ、劇団では研究生から劇団員になりました。新聞専売所から奨学金をもらい、初めて借りたアパートは3畳! お風呂もないし、正直(せまっ)って思ったけど、住めば慣れてくるもの。それなりに落ち着くというか……、どんどん家が広くなったとしても、割と隅っこが好きなんです(笑)。長く続いた仕事も、他にやりたいって思うことも特になく、ずーっと続けているのは芝居だけ。芝居は私の生活と密接に結びついているんです。それをひしひし感じたのは、新型コロナのステイホーム期。芝居の仕事をすることで、いろんな人と出会って、関わって……そこが自分の社会のすべてのような。仕事に行くことがなくなると誰にも会わないから、本当に社会生活を送れてないんだって気づきました。私と社会を繋げてくれるものなんですよ。それに、芝居という仕事に面白さも感じます。なんといっても仕事場が現場現場によって変わっていくのが面白い。この間は八丈島でロケをしたのですが、思ってもみないところに連れて行かれるって楽しいです。現場のチームも、いつかは終わるってわかっているから、それもちょっと寂しいけれど、いいことのようにも思えるし、また新しい場所で、新しいチームでって、転々とするのが私は結構好きみたいです。

夢にまで柄本明さんが出てきて叱られたことも

それまで地元で演劇部も経験してこなかった自分が、19歳で劇団に入って、初めて芝居を教えてもらった人が座長の柄本明さん。怖いエピソードはいっぱいあるけれど(笑)ちょっと言えないです。撮影が終わって帰宅して、(あれでよかったのかな?監督からOK出たけど、自分としてはもうちょっと考えてできたんじゃない?)なんて思う日もあって、そんな時に柄本さんが夢に出てきたこともあります。「そんなんじゃダメだよ、バカヤロー」って(笑)。

芝居って、難しいからこそ面白い

芝居では、いろんな人になれるけれど、結局やるのは自分。自分の頭の中で考えて、自分の声と体で演じるから、どうしたって自分が付きまとうんですよ。脚本を読んでて最高に面白い作品だと、自分を忘れて没頭して読むから、すごく面白いんです。じゃ、いざそれを芝居としてやりましょうってなった時は自分自身がすごく邪魔をする。難しいですよね、1人で演っているわけじゃないし、いろんな人の意見や思いもありますからね。難しいからこそ、面白いし。やめられないです。

衣装協力:シャツ¥170,500スカート¥171,600シューズ¥68,200/すべてMame Kurogouchi
SHOPLIST:マメ クロゴウチ オンラインストア www.mqmekurogouchi.com

撮影/河内彩 ヘア・メーク/鈴木彩 スタイリスト/清水奈緒美 取材/竹永久美子

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