2024年8月13日、乳がん(浸潤性小葉がん・ステージ3A)を公表した梅宮アンナさん。手術、抗がん剤、放射線治療という三大治療を乗り越えた今も、月に一度の通院と分子標的薬とホルモン剤による服薬治療を続けています。そんなアンナさんが今、新たに向き合っているのは「残った片方の胸」のこと。乳房再建という選択肢が広く知られるなか、アンナさんは当初から再建のリスクを語ってきました。今回は「再建だけが答えではない」と感じるようになった理由、そして”もう一つの選択”について、率直な思いを語ってくれました。
※本記事は、梅宮アンナさんご自身の体験と考えをもとに構成しています。治療や手術の選択は、病状や価値観によって一人ひとり異なります。
「再建だけが答えじゃない」そう思うようになった理由
治療って、一つ乗り越えると、また一つ新しい悩みが出てくるんですよね。今の私がまさにそうで、悩んでいるのは残った片方の胸なんです。一般的には、「再建して、また昔みたいなおっぱいを作りましょう」という流れになるのだけど、私は最初から違う考えがありました。私が考えてしまうのは、「この先、残ったもう片方の胸にまたがんができたらどうするの?」ということ。もし再発して、リンパにも転移して、またあの苦しい治療をやるの?って思うと、本当につらいんですよ。あれをもう一度経験するかもしれないと思うだけで、怖くなってしまうんです。それももちろん大きな理由です。でも実際に片胸で生活してみると、もう一つ大きな問題がありました。
それは、左右のバランスなんです。私はもともと胸にボリュームがあるので、片方だけになると服を着てもどうしても洋服が引っ張られてしまう。パッドを入れても動くとズレてしまうし、思ったようにはいきません。
だったら、もういっそのこと取ってしまったほうが安心なんじゃないかなって。これが今の正直な気持ちです。乳房再建という選択肢は広く知られるようになりました。でも、再建ではない選択を考えている人の気持ちは、これまであまり語られてこなかった気がします。だから、このことをSNSでちょっとつぶやいたり、インタビューで話したりすると、「私もです」「私も同じことを考えていました」ってDMが結構届くんですよ。やっぱり、同じことを思っていても、表ではなかなか言えない人が多いんだなって感じました。
私自身も、再建については主治医から詳しく説明を受けています。再建は保険が適用になるので、「できますよ」という話にはなるんだけど、私からすると相当大変な手術なんです。胸が小さい人なら比較的シンプルな方法もあるそうですが、私みたいにもともと胸にボリュームがある人は、同じ大きさを再現すること自体が難しいんです。肉が足りないんですよ。
だから、お腹の肉を持ってきて、23センチ切ったところをもう一度開いて再建する方法とか、残った左胸を小さくして左右のバランスを合わせる方法とか、いろいろ説明を受けました。でも、その話を聞いて「相当大変なことだ……」って思っちゃって。しかも、再建は一度の手術で終わるとは限りません。半年くらいかけて皮膚を伸ばして、それから手術をして、ちゃんとくっつくかどうかも分からない。癒着したり、膿んだりして、私が知っている方の中には「7回目の手術です」という人もいました。Aカップの人とDカップ以上ある人では、手術の方法も術後の負担もまったく違います。胸にボリュームがある人ほど、再建は想像以上に大変なんです。
でも、そういう現実って、まだあまり知られていない気がするんですよね。特に胸が大きい人は、再建するとどんな手術になるのか、どんな大変さがあるのか。私自身、参考になるような話や経験談になかなか出合えませんでした。ただ、その頃の私はまだ知りませんでした。「取りたい」という思いだけでは、その希望は叶わないという現実を。
「胸がなくても私は悲しくなかった」誰にも言えなかった本音
意外に思われるかもしれないけど、私は胸がなくなって、すごく気持ちが楽になったんです。あの時も、そして今も、その気持ちは変わっていません。乳がんで乳房を失うことは、多くの女性にとって大きな喪失として語られることが少なくありません。でも、その受け止め方は、本当に人それぞれだと思います。私はもともと胸が大きかったから、そのことで悩むことが本当に多かったんです。ブラジャーも大変だし、胸があることで着られない洋服もたくさんあった。着てみたい水着があっても、胸があることでセクシーに見えすぎちゃうのが嫌で諦めたり、大きいとどうしても垂れてきちゃうし(笑)。
だから、胸がなくなったらなくなったで、すごく楽だったんですよ。そして今の率直な気持ちは、できることなら、この先もう片方の胸も取りたい、ということです。そんな思いを発信したとき、思いがけない反応もありました。「なんで、いらないなんて言えるんですか」「胸がなくて泣いている人を何だと思ってるんですか」って、すごく怒ったDMをくださった方がいたんです。たぶん、その方は胸を失ったことが本当につらくて、悲しくて、そういう気持ちだったんだと思います。もちろん、その気持ちを否定するつもりはありません。でもね、本当にいろんな人がいるんですよ。胸を失って悲しい人もいるし、再建したいと思う人もいる。それはもちろん、その人にとって大切な選択です。
一方で、私は「胸がないこと=不幸」という考え方には違和感がありました。インタビューでも、「胸は女性の象徴ですよね」という前提で聞かれることが結構あるんです。だから、「胸がなくなって悲しいですよね」という流れになるんだけど、私は全然そうじゃなかった。むしろ、「なくても私は大丈夫」という気持ちだったんです。その思いを口にするようになってから、「私も同じです」という声が少しずつ届くようになりました。「いらなくてもいいんだ」「そういう考え方もあるんだ」って思える人が、きっといると思うんです。みんなが「再建したほうがいいよ」「元に戻したほうがいいよ」って言うから、余計につらくなってしまう人もいるんじゃないかなって。
だから私は、再建する人もしない人も、どちらが正しいという話ではなく、「私はこう思う」という一人の経験として伝えたいんです。そういう声が一つくらいあってもいいんじゃないかなって思っています。けれど、「もう片方も取りたい」という私の希望は、思っていたよりずっと簡単な話ではありませんでした。実際に病院へ相談して初めて知ったのは、治療とはまた別の、大きな壁の存在でした。
取りたいのに、取れない。今、私が向き合っている現実
私が通っているのは、がんセンターです。だから、がんではない胸を「取りたい」という理由だけでは手術はできません。実際に先生にも相談しました。左右のバランスのこともあるし、この先また乳がんになるかもしれないという不安を考えたら、私としては精神的にもそのほうが安心なんです。「残った胸の方も取りたいです」と伝えたんですが、「がんではない胸を取ることはできません」というお返事でした。何も異常がない胸を取ることは、倫理的な問題もあるということなんですよね。
私はBRCA遺伝子検査も受けました。もし陽性だったら、予防的に両方の乳房を切除するという選択肢もありました。でも結果は陰性でした。もちろん、安心もしました。ただ、「陽性だったら両方取れたのに」と思ってしまった自分も正直いたんですよね。日常生活でも、片胸だけという状態には不便さがあります。何も入れていないブラジャーを着けると、Tシャツやタンクトップでは片方だけ引っ張られてしまう。パッドを入れたり、本物みたいな人工乳房を作ることもできますが、それはそれで動いてしまうんです。だから私にとっては、何も気にしなくていい状態が一番自然なんですよね。病院では再建も一つの選択肢として説明を受けます。
でも実際には、再建を選ぶ人は3割くらいだと聞きました。やっぱり、そこまでして……と思う人も少なくないんだと思います。
再建することも、再建しないことも、どちらが正しいという話ではありません。私はただ「こういう考え方をする人もいる」ということを知ってもらえたらいいなと思っています。
そういう声が一つくらいあってもいい。同じことで悩んでいる人が、「私だけじゃなかった」と思えたら、それだけで十分なんです。
ジャケット¥305,547(by HANA WRIGLEY) デニムパンツ¥27,500(ヤヌーク/カイタックインターナショナル) パールネックレス¥61,600 「あ」 リング¥390,500 「クロス」リング¥389,400(すべてビジュードエム/ビジュードエム六本木ヒルズ) パンプス¥113,300(セルジオ ロッシ/セルジオ ロッシ ジャパン カスタマーサービス) タンクトップ・その他リング/アンナさん私物
撮影/古水 良(cheek one) ヘア・メーク/森 ユキオ(ROI) スタイリスト/乾 千恵 取材・文/日野 珠希 構成/玉榮日菜子
SHOP LIST
〇カイタックインターナショナル 03-5722-3684
〇セルジオ ロッシ ジャパン カスタマーサービス 0570-016600
〇by HANA WRIGLEY hello@hana-wrigley.com
〇ビジュードエム六本木ヒルズ 03-6271-5353

















