母の最期は、人それぞれ違います。そばで見送れた人もいれば、会えないまま別れを迎えた人もいる。時間の重さも、受け止め方も、同じものはひとつとしてありません。それでも胸に残るのは、確かに過ごした時間と、その人の記憶。それぞれのかたちで抱えながら、いまを生きている人の物語です。
大和田美帆さん 42歳 俳優
母の死は一生悲しいもの。
無駄にしない生き方をしたい
無駄にしない生き方をしたい
母が亡くなったのは’20年、コロナ禍のはじまりでした。入院したら会えませんと言われ「そうですか」と受け入れるしかなかった。結局、一度も会えないまま亡くなり、お葬式もできず、最後に見たのは、テレビでお骨が家に運ばれてくる様子。現実をどう受け止めていいのか分かりませんでした。
最後に会ったのは亡くなる1カ月前。娘のシッターをしてくれて「またね」と、いつも通りに別れたのが最後になるなんて思ってもいなかった。そのあと体調を崩し、父と病院に連れて行ったときには、すでに酸素濃度が低くて、そのまま入院。コロナと診断されてからは、一切やり取りもできず、状態が悪くなっていく報告だけが届く日々でした。車ですぐの距離にいるのに会えない、その近さが余計に残酷に感じました。
最初は「亡くなるわけがない」と思っていましたが、入院してからは悪化するばかりで、祈ることしかできなくて…。ロックダウンの中、幼い娘と過ごす時間は、経験したことのない孤独でした。入院から20日後の朝「亡くなった」と連絡を受けたとき、浮かんだのは悲しみではなく「こんなことってあるの?」という戸惑いでした。
本当は、どんな形でも会いに行きたかった。でもそれも許されず、顔を見ることもなく、遺骨だけが家に届いたときも「これが本当に母なの?」と実感が持てませんでした。触れても、声をかけても、確かめようがないことが苦しかった。区切りのない別れは、受け止めることを難しくします。
亡くなった当日も、キッチンに立って娘の朝ごはんを用意していました。その〝いつも通り〟の時間の中で「母の死にも意味があるはず」とふと思ったんです。母は「どんなことにも意味がある」と言っていた人。だからこそこの出来事も無駄にしたくない、ただ悲しむだけで終わらせたくないと思いました。
悲しみは6年経った今でも消えません。でも一生このままでいいとも思っています。ただ、それだけだと立ち止まってしまうから、大切なものを見つけながら生きていきたい。母の死から、人は何を「得た」かではなく「与えた」かが残るんだと学びました。大切なのは物ではなく心だということも。今はそれを意識して生活しています。
日常の中で、ふと母を思い出します。何気ない瞬間ほどその存在の大きさに気付かされます。「母だったらどうするかな」と考える時間が今も続いて〝いないけどいる〟存在なんです。
母に「これから美帆は、どう生きる?」と問いかけられている気がしています。いつかまた会えたときに「よく頑張ったね」と言ってもらえるように、父と娘とともに前向きに、生きていきたいと思っています。
想像を超える別れのかたちと、それでも前を向こうとする強さに心を揺さぶられ、スタッフ一同、深く胸を打たれました。(ライター小出真梨子)
シャツ¥28,600(ランバン オン ブルー)スカート¥59,400(HERALBONY)リング¥149,600(ヴァンドーム青山 プルミエール 伊勢丹新宿店)ピアス¥40,700 リング¥29,700(ともにケンゴ クマ プラス マユ/ヴァンドームヤマダ)
撮影/須藤敬一 ヘア・メーク/長田博文 スタイリスト/大石桃代 取材/小出真梨子 ※情報は2026年7月号掲載時のものです。

















