「好き」を仕事にできる人は、特別な才能を持った人ではなくて、まっすぐに「好き」を貫いてきた人なのかもしれません。「ダンスで誰にも負けたくない」「ワクワクすることが一番大事」。そんな純粋な思いを胸に、日本発のプロダンスリーグ・D.LEAGUEで今シーズン王者に輝いた「FULLCAST RAISERZ」を率いるディレクター・KTRさん。その言葉には、夢を追う子どもたちや、その背中を支える親、そして仕事や家庭にと、日々奮闘する40代の私たちの心を前向きにしてくれるヒントが詰まっていました。今回は、そんなKTRさんがダンスとともに歩んだここまでの道のりや、私生活など等身大の言葉を伺いました。
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★ 「好き」を否定しない親だったから、子どもには「自分が好きなことで輝いてほしい」
★ ダンスは言葉が通じなくても伝わる“身体言語” 身につくのはリズム感だけじゃない。
★ 「ワクワク」は最強の原動力。悔しさを味わえる環境ってすごくいいなと思う
★ 35歳で変わった。夫婦で「今日あったこと」を話す時間が、一番幸せ。
「ダンスで誰にも負けたくない、最強になりたい」その一心だけで続けたダンス。「ダンスで食べていきたい」なんてこと考えてなかった。
僕は、愛媛県宇和島市のコンビニまで車で20分くらいかかるような場所で育ったこともあり、子どもの頃は缶蹴りをしたり、秘密基地を作ったりして、自然の中でのびのびと育ったと思います。
小学校から高校まではずっと野球をやっていました。僕が通っていた高校は小規模校で、同学年の野球部員が自分一人しかいなかったんです。下級生として先輩の荷物をひとりで運んだり、全部自分で動かなければいけなかったりして、当時はかなり大変でした。辞めたいと思うこともあったけれど、どこかに「辞めたら負け」という気持ちがあって、ひたすら練習に打ち込む毎日。毎日汗を流していたから、高校で野球を引退しても、体を動かさないという選択肢が自分の中になくて、とにかく何かを始めようと思ったんです。当時、友達がダンスとキックボクシングをやっていて、最初はキックボクシングを選ぼうとしたんですけど、親に「それはやめてくれ」と言われて(笑)。それで「じゃあ、ダンスにするわ」という、そのくらい軽いきっかけでダンスを始めました。
社会人になってからも、ダンスは続けていました。でも、ダンスを仕事にしたいとか、食べていきたいとか、そういうことはまったく考えていなくて、ただ、「誰にも負けたくない」「最強になりたい」。その気持ちだけで、ひたすらダンスバトルに挑んでいました。
その気持ちは今も変わらず、ずっと「最強になりたい!」という気持ちだけで動いていたから、先日ラジオに出演したときも、「真っすぐすぎて、逆に異才なのかもしれない」「悟空みたいだね」と言われました(笑)。でも今思えば、それくらいピュアにダンスが楽しいと思えていたのは間違いないですね。野球もそうですが、一度始めたら辞めるという選択肢が自分の中にないんですよ。
「好き」を否定しない親だったから、子どもには「自分が好きなことで輝いてほしい」
「もし子どもがいたらダンスをやってほしいですか?」と聞かれることがあるんですけど、僕は「絶対にダンスじゃなきゃ」とは思っていないです。僕自身、小さい頃から「やりたい」と思ったことは、親が否定せずにやらせてくれたんですよ。たぶん「慶太郎は言っても聞かないだろう」って思われていたのもあるんでしょうけど(笑)。でも、その環境があったからこそ、自分は好きなことを信じて突き進むことができました。
だから僕も、子どもたちには「自分が好きなことで輝いてほしい」と思っています。もちろん、D.LEAGUEに出場している立場としてはダンスを好きになってくれたら嬉しいし、Dリーガーを目指してくれたらもっと嬉しい。でも、一番大事なのは、音楽でもスポーツでも、絵でも何でもいいから、その子が本当に夢中になれるものを見つけて、それを思い切り楽しんでくれることなのかなって。「これが好きだ」と思えるものに出会えたら、その背中を押してあげたいですね。そして、もし続けていく中で「辞めたい」と言い出したら、無理に「続けなさい」と言う必要もないと思います。やってみてダメだったり、好きじゃないことを続けさせるのは、親のエゴになってしまう気がするので。
ダンスは言葉が通じなくても伝わる“身体言語” 身につくのはリズム感だけじゃない。
ダンスって、リズム感や体の使い方が身につくのはもちろんなんですけど、一番大きいのはコミュニケーションだと思っています。たとえ言葉が通じなくても、一緒に踊れば「やばいね!」「クールじゃん!」って伝わって、気づいたら仲良くなっているというか。ダンスは、ある意味”身体言語”なんですよね。ただ踊れるようになるだけじゃなくて、人とつながる力だったり、自分の感情を表現する力だったり、言葉では学べないことを自然と教えてくれるものじゃないかなと思っています。
特に僕がやっているKRUMP(クランプ)というダンスジャンルは、喧嘩しないために生まれたというか、悪い道に行かないように生まれたダンスだと思うので、反抗期とかにもすごくいいと思います。HIP HOPとかは音楽に乗るダンスだけど、KRUMPは感情を表現するために生まれたカルチャーでもあるので、子どもたちにもすごくいい影響があるんじゃないかなって。学校の授業にあっても面白いと思いますよ。
「ワクワク」は最強の原動力。悔しさを味わえる環境ってすごくいいなと思う
年齢を重ねると、悔しい思いをする機会って少なくなるじゃないですか。周りから厳しいことを言われることも減るし、新しいことに挑戦する機会も少なくなる。昨シーズンは僕たちはどん底を味わったんですけど、あの悔しさがあったからそれがバネになって、今シーズンの優勝につながったんだと思っています。悔しいって、すごくエネルギーになるんですよ。だからこそ、あえて悔しさを味わえる環境に身を置くのもときには大事なのかもしれないですね。
僕は何か壁にぶつかったとき、まず「自分がワクワクする未来」を想像するんですよ。ステージに立っている自分だったり、みんなに見てもらっている景色だったり。そして、その未来を実現するために今何をやるべきかを考えるようにしています。
もし仕事や子育てで思うようにいかないことがあっても、ワクワクする未来の目標を立ててみるのはどうでしょう? 仕事で課長になりたいでも、社長になりたいでもいいし、旅行に行きたいでも、美味しいお寿司を食べたいでもいい(笑)。自分が「これを叶えたい」と思えるものがあれば、人って自然と頑張れるじゃないですか。ワクワクってマジで最強の原動力です!
35歳で変わった。夫婦で「今日あったこと」を話す時間が、一番幸せ。
最近は、仕事のことも奥さんによく話すようになりました。昔の僕は、自分の中で全部完結するタイプで、例えば映画を観ても「面白かったね」で終わり(笑)。誰かと「なんであの人はああいう行動をしたんだろう」とか、「自分はこう感じた」とか、そういう話をすることがなかったんですよ。でも、奥さんはそういう会話がすごく好きなんです。「私はこう思う」「その考え方は面白いね」って、お互いの感じたことを話し合う。その時間を重ねるうちに、僕も「今日こんなことがあって、こう感じたんだよね」って自然と話せるようになりました。
外では別々の時間を過ごしていても、一日の終わりにお互いの出来事や感じたことを話すことで、「この人はこういう考え方をするんだ」と、毎日新しい発見があるんです。最近は、その時間がすごく楽しいし、幸せだなって思います。
昔は、仕事が終われば仲間と海賊みたいに飲んで、「勝った!」「負けた!」って騒いで発散するのが当たり前でした(笑)。もちろん、それも大事な時間だけど、35歳になって「限られた時間を、ただ発散するだけで終わらせるのはもったいないんじゃないか」と思うようにもなりましたね。誰かとちゃんと向き合って話をすることで、自分では気づけなかった考え方にも出会えるし、「あのとき、こうすればよかったのかもしれない」と自分を見つめ直すこともできる。そういう時間を積み重ねることのほうが、これからの人生では大切なんじゃないかなって。
最近よく「やっと中身が年齢に追いついてきたね」って言われるんですけど(笑)、本当にそうなのかもしれません。35歳になって、少しずつ大人になれている気がします。
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撮影/山根 悠太郎[TRON] 取材/齊藤美穂子 構成/福吉由紀子
















