今日は、子供をダンナに預け、雑誌「STORY」でライターをする真由美と夜遊びを決行！
真由美が予約してくれた美味しいと評判のカウンタービストロで、今日は久しぶりに女同士の本音トークを、とことん楽しむつもり。
久しぶりの夜のお出かけだから、オシャレにも気合を入れて、鏡に向かいピアスを付けるうち、ママから「女」としての自分が蘇ってきた感じ。

待ち合わせ時間の19時。
カウンタービストロなんて初めてだから、ちょっぴりワクワクしてドアを開ける。
真由美はまだ来てないみたい……。

「いらっしゃいませ」
ちょっと素敵な男性が声をかけてくれた。

「友達と待ち合わせなんです」

「田中様、２名のご予約ですね。こちらへどうぞ」

居心地悪そうに時計を見つめる私に、先ほどの男性が水を置いてくれる。

「ごゆっくりお待ちくださいね」

優しい笑顔にちょっとキュンと来たりして。そういえば、こんな甘酸っぱい気持ち、しばらく忘れていた気がするな。

ジリリリ、ジリリリ……。
時計が19時15分を過ぎた時、私の携帯電話が鳴った。

「麗子、ゴメーン！　息子、翔太がサッカーの練習で仲間の子と激突して。
病院に連れて行って、おでこを３針ほど縫ったの。だから、今日はゴメンね……」

「えっ！　大変だったね。翔太君大丈夫？　お大事にね。私は大丈夫だから。
また、落ち着いたら。うん、じゃあね」

席を立とうとすると、キッチンで料理をする先ほどの男性と目が合った

「友人が急に来られなくなっちゃって……」

「残念ですね。お客様だけでも、召し上がっていきませんか？　うちのパスタ美味しいんですよ！」

「あっ！　こんばんは」

「この間食べたパスタが美味しくて、また来ちゃいました」

先日の男性、小林さんはこの店のシェフで、そして彼の作るパスタはなかなかの絶品。
思わぬハプニングで得たカウンタービストロでの一人時間だったけど、たまにはこんなのも悪くないなって。
でも、カウンタービストロに女一人なんて勇気が持てたのも、彼の優しい笑顔のおかげ。

「へーっ、たまにはそんな一人時間もいいじゃん。仕事が早く終わりそうな日は、僕が子守りするからさ。たまには息抜きしなよ」

そんな理解あるダンナの言葉に甘え、今日は思い切って夜の一人時間を楽しむためにドアを開けてみる。

「あっ、こんばんは」

キュン！　やっぱり、あの笑顔は癒される……。
子育てと家事の疲れが一気に吹っ飛んだ。ゴメンね、ふとダンナの顔が浮かぶ。
シェフの小林さんのことだけは、ダンナには内緒だ。心だけの浮気だから、たまにはいいよね！

「今日は、子羊の煮込みがおススメですよ。ワインは店長が詳しいので……」

「こんばんは」

えっ！？　何？　店長もイケメン！　キュン×２なんですけどー！

「こんばんは！」

「今日はワイン何にする？」

一人で訪れるのも今日で５回め。２週間に一度、子育てと家事に追われる私のガス抜き。
そして、シェフの小林さんに加え、店長の渡辺さん、Ｗイケメンに会えることが、一夜のパックより女としての最大の美容液。
今日も、「何着ようかな……？」なんて、30分悩んだもの。

家で子守りをするダンナへのちょっとの罪悪感を抱えながらのとっておきの時間が、女をキレイにするのです。

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