高齢化に伴って介護を必要とする人の数は急速に増え、家族介護者数は、2001年の470万人から、2016年には 699万人に増加しています。そこで、介護にあたるうえでの心構えや、上手に負担を軽減する方法を体験者の方に語っていただきました。
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にしおかすみこさん
SMの女王キャラで大ブレイク。現在は執筆にも力を入れ、FRaU WEBにて母の介護の様子をつづった『ポンコツ一家』を連載中。
“自分ファースト”な介護を
心がけています
心がけています
--今はこの時間が大切な気がするんです。 だから介護を受ける人も「ごめんね」とは思わないで
にしおかすみこさんがお母さんの異変に気付いたのは,20年6月のことでした。引越し準備をしていたときに、実家でちょっと休もうと帰ってみると「昼間なのにカーテンが閉まっていて、家はまるでゴミ屋敷。床は砂埃でジャリッとする。その中で、母が座椅子に座っていました」。
そんな状況が気になり、引越し先を新居から実家に変更することに。そうして、2週間程かけて、掃除をしました。
「最初は何をしても反対ばかり。エアコンが壊れていたので、買い直そうとすると、母はそれにも反対する。今思えば、娘にお金を使わせるのは心苦しかったのかもしれません。そのうえ、口癖のように『頭かち割って死んでやる』と言うし。母は鬱傾向があるので、万が一自殺でもしたら、と怖くなりましたが、ふと見ると、寝ている。『寝るんかい?』って感じでした」。
実家住まいのお姉さんはダウン症。お父さんは元来無頓着で、お酒好きでよく酔っぱらっているので、お母さんが徐々に変わっていくことに気付かなかったと言います。友人に、介護認定を受けるため、検査を受けたほうがいいと勧められましたが、
「本人は大丈夫だと思っているので、病院に連れていくのもひと苦労。地域包括支援センターの方が来てくださったときも、ちゃんとしているアピールをすごくするので、びっくりしました。今思えば、お客さんに見栄を張れるというのは、良いことなのに、そのときは、なんだか疲れて悲しくなりました。私はよかれと思ってしたことでしたが、検査など、母の日常と違うことがあるたびに、認知症が進む気がします」。
そこで、家事をにしおかさんが担うだけにして、今は、介護サービスの手続きは保留にしていると言います。
「火の扱いが心配なので、3食分を作り置きしています。ただ、今母ができることを奪いたくはないので、料理をやっちゃダメとは言っていないんです。以前、母が肉なしの肉じゃがを作ってくれたのですが、母の味がして美味しかった。また、姉の世話は自分がしなきゃと踏ん張ってくれているので、母に任せ、私はフォローに回っています」。
にしおかさんは、そんな家族との暮らしぶりをエッセーとして発信しています。
「情報を提供しようとか何かを伝えようとかではないんです。ただ、ドタバタぶりを笑ってもらって“箸休め”のようになったらいいなと。私は“自分ファースト”と決めています。今は、家族との暮らしが私にとって大切な時間だという気がしています。しんどくなったら一人暮らしに戻るかもしれないし、いずれは施設のお世話になるかも。でもそんなお金もないかも。全部未定のポンコツな娘です。だから、母には私に迷惑をかけていると思ってほしくない。頭にくることもありますが、病気になった人が気に病む必要はない。お互いに自分を責めてもいいことないですもの」。
撮影/BOCO ヘア・メーク/原田なおみ 取材/秋元恵美 ※情報は2022年10月号掲載時のものです。