日々、私たちが子どものことで悩んだり、迷ったり、もがいたりしている一方で、パパたちはどんなことを考えているのでしょう?
子育ての父親参画が増えてきたと言われる今、パパは子どもと、どうやって絆を深めていくのか。
元ラグビー日本代表キャプテン・廣瀬俊朗さんに、毎日の子育ての様子を語っていただきます。一男一女のパパとして、家庭の中でのキャプテンシーの発揮の仕方とは?
スポーツ一辺倒ではなく、お菓子作りも好きな娘
読者のみなさん、こんにちは。
新しく【Junior STORY】のコーナーで連載を始めることになった廣瀬俊朗です。STORY9月号で、「良きパパ」は子どもとどう接しているかという取材を受けました。そのときにも答えましたが、僕は「良きパパでありたい」と意識しているわけではありません。娘と一緒に「オモロいこと」をしたいだけですね!(笑)。
「オモロいこと」――この夏は、北海道の定山渓温泉で娘とカヌーや乗馬をして遊びました。自然を間近に感じられるとても素敵な場所でした。
定山渓にはニュージーランドのラグビー精神に基づいたスポーツクラブ「北海道バーバリアンズ」があるので、その場所にも行ってみました。先日北海道マラソンで会った仲間もここで練習していたことを思い出して、嬉しくなりました。
娘も僕もカヌーは初体験でしたが、普段、湘南で2人でSUPをしていることもあって、パドル捌きは難しくなかったです。娘も上手でした。
娘は、他の場所でも2~3回したことはあるのですが、とにかく今は乗馬にハマっているようです。住んでいる湘南でも、月曜日に今度はひとりで乗馬ができるところに行って習いたいと考えているようです。
費用や時間の拘束など、いろいろなことを考えてしまいますが、やりたいことは、できるだけやらせてあげたいとは思っています。
娘がいろんなことに興味を持ってくれるのは嬉しいですね。新体操や体操にも取り組んでいます。アクティブで行動的ですが、実は、家では、よくネットでレシピを調べながらお菓子を作ってくれます。最近も、友達からもらったサツマイモでロールケーキを作ってくれましたよ。甘さ控えめで美味しかったです。
たまに僕も「今度は甘酒入れて」「糀みつ入れて」「ヴィーガンでお願いします」などと注文しています(笑)。
いろんな親がいますが、僕は一歩引いて客観的に見ていたい
教育方針というほど大げさなものではないのですが、今の段階では、とりあえず何か興味があるものや好きなものを子どもにやらせてみて、その中で本当に好きなものが見つかればいいと思っています。
僕自身も、子どもの頃はいろいろなスポーツをやらせてもらっていました。実は小4ぐらいの頃は、平日はずっとサッカーでした。ラグビーは週1回でした。
息子は今、ラグビースクールに通っています。
他の人たちからは「やっぱりパパが具体的に指導してるんですか?」と聞かれますが、息子はあんまり細かいことを言われるのはイヤなんじゃないかな、と思っています。実際、僕自身、とやかく言われるのがイヤだったので。
周りのお父さんたちにも、子どもに向かっていろいろと指図する方はいらっしゃいますが、人それぞれですからね。
“世の中には、いろんな親がいるんだなぁ”と、なんとなく子どもには知ってもらえたら良いなとも思っています。
ラグビーのキャプテンをしていた時は、チームを俯瞰的・客観的に見渡してチームを作ってきました。子どももスポーツを通して、複合的にいろいろと視野を広げることを学んでくれると、嬉しいですね。スポーツからたくさん学ぶことができるので。
僕としては、子どもが取り組んでいるラグビーに対して、暖かく見守っていきたいですね。
息子は水泳と体操もやっているのですが、メチャクチャ運動神経がいいですね。
鬼ごっこをしても、僕は追いつけないぐらい(笑)。「速いなぁ~!!」と感心しますね。
ただ、息子は遊びの中では本気を出すんですけど、ラグビースクールではなかなか本気を出さない。
性格が少しシャイなこともあるのかもしれません。
本人も少し歯がゆいのかもしれません。
ラグビーを通じて「人の痛み」がわかる人間になってほしい
「将来、息子にもラグビー選手になってほしいですか?」という質問もよくいただきますが、
本人が〈ラグビーが好きで選手になりたい!〉と思ってくれればいいのですが、もしかしたら違うスポーツが好きなのかもしれないし、スポーツではないことを選ぶかもしれません。
今、息子に対しては、「これが好きだ!」というものがちゃんと見つかってくれるかどうかということが気になっています。
ラグビー自体は“教育的価値”があると思うので、小学校6年間だけでもやり続けてくれたらいいな、と思っています。
ラグビーをやっておくと、チームワークの大切さを考えたり、相手をリスペクトする心が養われる。あと、人の「痛み」を知ることができます。また、自分の「痛み」を感じることで、他人の「痛み」に思いを巡らせることができる。
ラグビーで、そういうことをなんとなく感じ取ってもらえると嬉しいです。
ラグビーの場合、小学校低学年では「タグラグビー」(腰のタグを取られると立ち止まるルール、タックルがない)が多いのですが、僕はやっぱり体のコンタクトがあるところまでやってほしいと思います。<“バーン”とぶつかると、こんなに痛いんや!>と思うと、当たり前ですけど、人に対して優しくなれると思います。人の痛みを実感できて、その人に寄り添える。自分自身としても、いろいろな痛みを感じる時があるかもしれませんが、そこの乗り越え方を知っているように成長していって欲しいですね。
取材/東 理恵